運命の出会いだったらしい
「運命で結ばれる事を運命づけられている二人ですからね。それくらいの事なんて、奇跡でも何でもないですよ」
そう言い、フレア=ゼナンはニコリと笑った。
「そりゃぁ……ご苦労な事です……」
自分から、自分達の出会いは運命であると言ったフレア=ゼナン。『そんな恥ずかしいことをよく言えるな』とニムタンスは思ったが、同時に、こうとも思う。
『二人共、この出会いが運命の出会いであるって事を言えるなんて……なんか、羨ましいな』
自分は、ブロックとの出会いを、『運命の出会いであった』などと、言う事はできるだろうか? ニムタンスは、ブロックと自分の事を思い返し、ため息を吐いた。
「私達の関係なんて、そんなにたいそうな物ではないね……まるで喜劇で、お笑いの神に見守られながら喜劇を披露しているようなもんでしかないわ……」
ふと、ニムタンスの口から漏れる言葉。
それを聞いたフレア=ゼナンと、ローイ=メドンは、揃って笑った。
「まあまあ……喜劇だったとしても、楽しんでいけるならいいじゃないか。みんなに笑われて、祝福をされるような状態も、あながち間違いではないと思うよ」
「このフロウでは有名らしいですね。ブロック君を中心としたドタバタラブコメディー」
「有名になっているんだ……」
ニムタンスは、ガックリと肩を落としながら言う。
「ザック=レイターさんが、そこらで吹聴をしているみたいですよ。あの人が言うんだから、有名にもなるはずです」
「原因は、あの絵を描かない絵描きですか……そんなところだろうとは思っていましたが……」
ニムタンスは諦めたような感じで言う。
「僕らの事を楽しませてくれたんだし、今度は、僕らが君たちを楽しませる番だね」
ローイ=メドンは言う。それに合わせてフレア=ゼナンは荷物の中から楽器を取り出し、ローイ=メドンに渡した。
「聞いてください。曲名はブロック・ライフ」
ライフを訳すと、『人生』あたりの言葉になるのだろう。ブロックのいままでの人生を表現した曲を書いたわけである。
ニムタンスはそう思いながら、ローイ=メドンの曲が始まるのを待った。
フレア=ゼナンがそれに合わせて歌う。曲は軽快で、歌詞は面白い歌だった。
このフロウの人たちに、コメディーを披露して、みんなを楽しませているブロックの周囲の事を歌にしたのだと聞いた後だと、妙に納得してしまう感じの曲調だ。
終わる頃には、そこらで遊んでいた子供たちが、ローイ=メドンとフレア=ゼナンの周りを取り囲み、曲を清聴していたのだった。
最後にフレア=ゼナンとローイ=メドンは言う。
「素晴らしきフロウ。文化フロウ『フレア』!」
そう言い、子供たちにペコリと頭を下げた。
そうすると、子供たちから、拙い拍手が送られてきたのだ。




