その日のうちに公園で
ニムタンスは、それから、いつもどおりに公園にまで遊びに行った。
「ニムタンスさんは、来ると思ってました」
ニムタンスは、子供達と遊んでいたフレアを見つけた。
「こんなところにいていいんですか? ローイ=メドンさんとは一緒にいなくていいんですか?」
ニムタンスがそう言うと、「うふふ……」と笑ったフレアは、後ろを向いた。
「もちろん来てもらっていますよ」
ギターの調整でもしているのだろう。ギターをいじっているローイ=メドンの姿がそこにあった。
「ローイさんはこのフレアを立つんでしょう? こんなとこに来ている暇はないんではないですか?」
ニムタンスがそう聞くと、ローイ=メドンとフレア=ゼナンの二人はそろって、「ふふふ……」といった感じの含み笑いをした。
「二人で話し合って決めたんだ。僕ら二人は、このフロウに残って、二人で活動をする事にしたんだ」
「そうです。ここも音楽家は多いですし、立派な劇場だってあります。ついでに言いますと、二人の望みはすでに叶っているので、『ブラギ』に、戻る必要がないんです」
二人の望みとは何か? そう考えて、ニムタンスが首をひねらすと、二人は笑って答える。
「僕は、ブラギに行って、フレア=ゼナンさんに会いたいと思っていたんだ。憧れている歌手さんだし、僕の歌を歌って欲しいと思っていたんだ」
ローイ=メドンはそう言う。それに合わせて、フレア=ゼナンも言い出した。
「私は、ローイ=メドンさんの歌を歌わせていただきたくて、このフロウ『フレア』までやってきました。ローイ=メドンさんの新作の歌だってすぐに手に入るし、歌を歌う劇場にも困りませんから」
お互いは、お互いの事を想っていたのだ。
それを、さっきの事で確認し合った二人は、一緒にこのフロウで生きていく事を確かめ合ったのだという。
「君たちのおかげだよ。君たちが教えてくれなきゃ、僕らは、行き違いになっていたんだからね」
「私達よりも、ザック=レイターさんにお礼を言ってあげてください」
今回、自分たちは何もしていない。ザック=レイターが、フレア=ゼナンに、電話をして、ローイ=メドンのアパートまで誘導をしたのだ。
「ザック=レイターさんが、言っていましたよ、『僕が何もしなくても、二人はめぐり会う事はできていたんじゃないか。こんな事をする必要あったのかい?』って……」
ザック=レイターからしたら、そう思うだろう。確かに、ザック=レイターが、フレアをローイ=メドンのアパートまで誘導しなくても、二人は、めぐり合う事が出来ていたはずなのだ。
ブロック達が、ローイ=メドンに、フレア=ゼナンの居場所を教え、ふたりを引き合わせていただろう。
「雑談ついでに、フレア=ゼナンさんの泊まっているホテルを聞き出すことができたのは、運がよかったね……」
ニムタンスが言う。




