ザック=レイターの能力
「そうだ。僕が手配をしたのさ……」
ブロックがレイネンの後ろを見ると、そこに、ザック=レイターがいた。
「こんな面白い話、僕が首を突っ込まないわけがないじゃないか……」
ザック=レイターは。いつもの面白そうな顔をして言う。
「いつもいつも、僕らの話に、いきなり割って入ってきますね……しかも、ザック=レイターさんが僕らのところに近づいてくるのには、まったく気付けなかったし……」
ザック=レイターは、そう言うと、面白そうにして笑った。
「君らが、それだけ話に熱中していたって事だろう?」
笑いながらそう言うザック=レイター。だが、ブロックはザック=レイターの事をジッ……と見た。
「何か能力でも使って、僕らの中に割って入っているんじゃないか? って、意味で言ったんですが? あなたの能力って、何なんです?」
ブロックは、手紙に触れただけで大体の内容が分かる能力を持っている。ラタリは、ストラの流れで、相手の機嫌の善し悪しが分かる。ニムタンスは、能力らしい能力は無いが、莫大なストラを溜め込む事のできる体を持っている。
この世界に生きている人は、よく、何かの能力を持っている人が少なくない。
「まったく、君は本当にムダで、どうでもいい事には鼻が利くんだね……もっと気づかなきゃいけない事とか、しなきゃならない決断とかも、いろいろあると思うけどね」
ザック=レイターはそこまで言う。
そして、ザック=レイターの姿が消えていった。
「透明化する事ができるんだ。いつも、こうやって抜き足、差し足、忍び足をして近づいて、こっそり話を聞いたりしてるんだ」
ザック=レイターの声のする方を向いたブロックは頭を掻いた。
「そんな能力、男の夢じゃないですか……」
「そうだねぇ……たまにラタリ君の着替えを覗いたりしてるよ。この能力に目覚めて良かったなぁ……って思えるしゅんか……」
「って! ええええぇぇぇええええ!」
ラタリは、ザックーレイターの言葉を最後まで聞かずに、大声を上げた。
「くっくっく……」と笑うザック=レイターを睨んで見るラタリ。ザック=レイターは楽しそうにして笑った。
「嘘だって。この能力は制限がキツいんだ。大体二十秒くらいしか透明になる事ができないんだよ。とてもではないが、ラタリの残念な胸や……」
その二十秒の時間が経ってしまったようでザック=レイターの姿が見えるようになった。
ザック=レイターが言いかけたところで、ラタリがザック=レイターに向けて飛びかかっていった。
「いくら旦那様でも、これ以上言うのは許しません!」
ザック=レイターの首を思いっきりつかみ、ザック=レイターが続きをしゃべれないようにしたラタリ、
「悪かったって……」と、言いながらザック=レイターはラタリを引き剥がした。
ラタリは肩で息をして、ザック=レイターに飛びかかろうとしている。
「まあ、落ち着きなって……ザック=レイターさんは、このフロウでは、名士なんだから」
「悪かったって……調子に乗りすぎたのは謝るから……」
ブロックとザック=レイターの二人から、それぞれ言われ、ラタリは、とりあえず落ち着きを取り戻した。
「とにかく、ザック=レイターさんのおかげで、二人はめぐり合う事になったんだし、お礼を言っておかないと」
ブロックは言う。ラタリもニムタンスもレイネンも、ザック=レイターにペコリと頭を下げた。




