フレア=ゼナンの歌
「ごめんねー、つい夢中になっちゃってー」
子供と一緒に遊び、砂だらけになったニムタンスが言った。
「子供たちとあんなに仲良しなんですね。羨ましいです」
フレア=ゼナンは、ニムタンスに向けて言う。
「だけどそのおかげで、『あなたの頭の中は子供と同レベル』なんて言われたりもするけどねー」
そう言うが、その事はまったく、気にもしていないらしく、元気な様子でそう言った。
「ローイ=メドンさんの事は、あのバカにもう一度聞いてみます。明日は仕事なんで会えないですけど……」
ニムタンスがそう言う。フレア=ゼナンは、ポケットの中からハンカチを取り出し、ニムタンスの額に付いた砂を払った。
「ああ……どうも、砂ぐらい払っておけって感じですよね……」
「ははは……」と、ちょっと悔しそうな顔をして言うニムタンス。
「いいじゃないですか。子供たちに好かれる優しいお姉さんなんて、かっこいいと思いますよ。私も、あの子達と一緒に遊んだりしたいですね」
そう言い、フレア=ゼナンは、子供達に中に入っていった。
「私はこんな事しかできませんけど……」
そう言い、フレア=ゼナンは、大きく息を吸い込んだ。
何をやるのだろうか? と思い、ニムタンスがフレア=ゼナンの事を見ていると、彼女は歌を歌いだした。
それは、この国の子供達なら、誰でも知っている童謡であった。
「もしかして、フレア=ゼナンさんって歌手なの?」
ニムタンスがフレア=ゼナンに聞くが、フレア=ゼナンは歌い続けた。周囲の子供達は、彼女の声に聞き惚れている。
フレア=ゼナンが歌い終わると、周囲の子供たちから、拍手があがった。
小さな手で叩かれる拍手の音を受けながら、まるで、舞台の上に立っているようなしぐさで、頭を下げた。
ニムタンスが、フレアに向けて駆け寄っていこうとすると、子供達が、走り寄っていき、すぐに大きな輪ができた。
「私よりも人気者かも……」
フレア=ゼナンは、今の歌で子供達の心をつかみ、この公園の人気者になったのだ。




