選考会の開始
「これより、絵葉書用の絵の選考会を始める」
多くの、郵便局の重鎮達が集まった部屋。ここで、送られてきた絵の選考会を始めるのだ。
普段は会議室として使われており、郵便局の人間を、全員収容する事のできる広さがある部屋の中心に、数個の机が並べられ、七名の人間が机の上に積まれた絵達を審査していた。
その中で、ザック=レイターが一つの絵を持ってこの絵の素晴らしたを説いている。
「この絵はすばらしい。まず色使いがいい。暖かく、優しい彼の人柄を、この絵から感じることができる」
レイネンの絵を見て、そう言うザック=レイター。彼は、レイネンの絵を、なんとかこの大賞で一位にしたかった。
周囲の選考会に出ている郵便局の幹部の面々は、苦い顔をしながらそれを聞いていた。
「しかしですね……ザック=レイターさん……」
何かを言って、ザックレイターの言葉を止めようとした郵便局の局長だが、それに被せて言葉を続けたザック=レイターは、たたみかけるようにして言った。
「この絵のいいところは、画家がこの少年を見たときに感じているもの全てを描き込んでいるところです。絵描きの彼に対する愛を十二分に感じる事ができます」
まだも続けたザック=レイター。
それを見て、局長は、「コホン……」と咳払いをした。
「ザック=レイター殿!」
大きな声で、ザック=レイターの言葉を遮る声が聞こえた。これは郵便局の局長の声である。他にも、テーブルに並ぶ郵便局の幹部たちの様子は、この絵を大賞にする事に対しては否定的であると言ったような表情をしている。
「この絵が、素晴らしいものであるというのは、十分分かった。ですが、この絵は大賞に選ぶことはまかりなりません」
はっきりと言った局長。ザック=レイターはその言葉を聞いたとき、顔をこわばらせた。
「理由を聞いてもよろしいですか……?」
疑問を呈する言葉を言ったザック=レイターだが、返答は大体想像がついているといった感じである。
「我々が募集したのは風景画であって人物画ではないのです」
この大賞は、この文化フロウ『フレア』の『風景画』を募集した大賞なのである。
人物画は、完全に選考の対象外である。それは分かっているザック=レイターは、小さくため息を吐いた。
「ほかの作品を見ましょう。次のやつを持ってきてくれ」
局長がそう言うと、次の絵が会議室に運び込まれてきた。




