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ストラスレター  作者: 岩戸 勇太
絵葉書の大賞
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絵のモデルを再開

 それから、ブロックはザック=レイターの屋敷に戻り、レイネンが描く、絵のモデルの仕事を再開する事にした。

 レイネンは屋敷に戻ると、いつも絵を描くときに使っている汚れてもいい服に着替えていった。

「ブロックさんに買ってもらった、あの服を汚すわけにいきません」

 レイネンがそう言うと、ところどころが絵の具で汚れた服を着て言った。

「ブロック君。君は本当に罪作りな男だ」

 ブロックが絵のモデルとして立っているところ、ザック=レイターの声がドアの向こうから聞こえてきた、

「どういう事ですか?」

 ブロックがそう言うと、レイネンが、筆を使ってブロックを指差しながら言う。

「動かないでください」

 そう、レイネンにピシャリと言われ、ブロックはまた黙った。

「レイネンはこの話を聞いても何も言わないよ。僕が何かを言っても、気にしないからね。前にも言ったろ。僕らの会話を聞いてはいるが、まったく反応はしないって……」

 ドア越しにそう言うザック=レイター。レイネンはその言葉が聞こえているのだろうが、全く反応はしなかった。

「レイネンにプレゼントをあげたんだって? その事をラタリに話したら、すっごい反応をしていたよ。なんでもこの世の終わりでも見たような表情だった」

 ザック=レイターがそう言ってくるのに、ブロックは返事をしようとしたが、レイネンから、「動かないでください」などと言われるのが関の山であるので、黙っていた。

「それに、君達の事を、監視していた子もいるらしい。変装をして気づかれないようにしていたらしいね。気付かなかったかい? なんか、不信な格好をした人とか……」

 ブロックには心当たりがあった。あのコートとマスクの人だ。

 いったい誰が、自分達の事を監視していたのだろうか? 考えてみるが、ブロックの頭では答えが出ない。自分に恨みがある人間なんて、いくら考えても出てこないのだ。

 実際は、自分に好意を持ってて、レイネンといい感じになるのが気に入らない人を考えなければならないのであるが、そんな事には考えが及ばないブロックだった。


「ただいまー……今日も疲れたよ……」

 ブロックはそう言って、アパートの敷居をまたぐ。

 そのブロックを待っていたかのように、ニムタンスは部屋のドアの前で待っていた。

「今日は何をしたの?」

 ニムタンスは、ブロックに向けて聞いた。

「な……なんだい……?」

 ブロックは今の状況が、何かヤバイものであるのを感じ取る。

「ザック=レイターさんの屋敷まで行って、絵のモデルをしてきたんだけど……?」

 ブロックがビクビクしながらそう言う。ニムタンスは、「ふーん……」と言いながら、笑っていた。だが、ただの笑顔ではなく、その裏に何かの感情を隠しているようであった。

 当然、それを感じる事ができたブロックだが、その感情の大元は何か? となれば、心当たり一つ、見つける事ができないのだ。

「絵のモデルだけ? 女の子と一緒にデートとかには行かなかったの?」

「はい……?」

 ブロックは素っ頓狂な声をあげた。

「デートなんてものに行ってないよ?」

 ブロックはとぼけている訳ではない。レイネンと一緒に喫茶店に行ったり、服を買ってあげた事を、デートとは認識していないのだ。

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