レイネンが初めて見るパフェ
「ここのパフェって、この辺りでも有名なんですよ」
ニムタンスは、レイネンを喫茶店に連れ込んでいた。
『毎日、創作ばっかりだろうし、こういう物も知らないでしょう? こういう所に連れて行くと意外とハマったしちゃうのよね』
絵描きなどの芸術家は、絵にしか興味を見せないような、天才型の人間が多い。
そういう人間は、普段に起こる些細な出来事などには、まったく興味を見せない。
だが、だからこそ、とてつもない衝撃を受けるような事や、好きな物であれば、軒並みならない興味を示すものであるのだ。
店の中に入って、パフェを注文する。
ニムタンス達は、向かい合わせになって、一つのテーブルを囲んでいた。
今のレイネンは、興味津々になってパフェを見つめていた。
スプーンを使って中身を食べ始めるニムタンスの事を見ると「あ……」と言って、それを止めようとした。
「もったいないです。こんなに綺麗なものを食べてしまうなんて……」
「食べないほうがもったいないでしょう?」
どうやら、レイネンは綺麗な盛りつけをされたパフェを気に入ったようだ。
レイネンはニムタンスから言われると、スプーンをパフェの中に突っ込んでいった。
そして、自分がすくい上げたパフェを、見つめているレイネン。レイネンは、それをパクリと口の中に入れた。
「これはすごいです。冷たいのに、口の中で溶けて……こんなものを食べたのは初めてです」
「そうなんですか……」
ニムタンスはそれに合わせて頷く。
「こういうのを食べたことってないの?」
ニムタンスが聞くと、レイネンは大きく首を振って頷いた。
「今まで地上に居たんです。メイドもいて、快適な生活をしていたけど、こういう物を食べた事が無いのです」
そう言いながら、次々とパフェを口に運んでいく。
「そんなに早く食べると……」
ニムタンスが言うが、遅かった。レイネンは頭を押さえ出す。
「なんですか……これ……」
「かき氷とか、食べた事ないの?」
頭がキーン……としているレイネンは言う。
「はい……私はこちらに来てから日も浅いものです。少し前には地上にいました」
「地上……」
今でも、フロウに乗らずに地上で生活を人もいる。大抵は金持ちである。フロウの上では空気が薄く、基本的に寒いし、何かの事故が起これば、フロウが墜落をする事もある。
それで、しっかりとした大地の上で生活をしようとする人もいるのである。
「あなたの家って、けっこういいとこなんですか?」
ニムタンスが聞く。レイネンは臆面もなくその質問に答える。




