女たちの作戦
メイネの意識は、画用紙に向かっていた。
三人の中で一番マシな絵を描けるはずのメイネは、自分で絵を描いてみる事にしたのだ。
カンバスに向けて、手を伸ばし、手に持っている筆を使って、郵便局の高さを図っていく。おおよその縮尺が分かったメイネは、鉛筆を使って画用紙にラフを描き始めた。
「お姉ちゃん。遊んでー」
そこに、メイネの妹のメルムが話しかけてきた。服の袖を引っ張るメルムに、メイネは優しく諭した。
「お姉ちゃんは今忙しいの、お絵かきでもしていなさい」
そう言い、画用紙を一枚メルムに渡したメイネ。
その画用紙を手に持って、じっ……と、見つめたメルムは、にぱっ……と、笑ってメイネの描いている絵を見つめた。
「お姉ちゃんがお絵かきをしているならメルムも描く」
そう言い、メルムはメイネの隣に座って、クレヨンで絵を描き始めた。
「やれやれ……」
メルムが大人しく絵を描き始めたのを見て、メイネも自分の絵に集中を始めた。
またも、メイネの家に集まったニムタンスとラタリ。
メイネも合わせて、三人で、今後について、会議をしていた。
「レイネン様が、ブロックの事を呼び出して絵を描いているらしいの……」
明らかに、今回の大賞に出すための絵を描いているのだ。ラタリがそれを言うのに、ニムタンスと、メイネは腕を組んで唸り始めた。
「とにかく、レイネン様が大賞を取らないようにするには、どうすればいいか? って事なんだけど……」
ニムタンスは、グレッグから聞いた事を思い出しながら言った。
「いっその事、レイネンさんと仲良くなって、遊びに連れて行ったりすればいいと思うの」
そうすれば、レイネンは絵を描くどころではなくなり、上手くいけば、期日までに完成をさせる事ができないかもしれないのだ。
「ラタリはあのお屋敷の使用人で、レイネンの邪魔なんてしたら怒られるでしょうし、メイネちゃんは、自分の絵がある……って、事は、私しかいなくなるわけなんだけど」
ラタリはそれを聞いて言う。
「だったら、いつもレイネン様は散歩に行く時間が決まっているの。その時間に門の前で待っていれば、レイネン様に会えるはずよ」
ニムタンスはニヤリと笑う。
「でかしたラタリ。その情報は有効に使わせてもらうわ」
ニムタンスとラタリは、お互いの事を見て頷きあった。
「レイネン様、今からお出かけですか?」
この屋敷の庭でシーツを干していたラタリは、屋敷から出てくるレイネンに声をかけた。
「少し、風に当たってきます」
ラタリに向けて、ペコリと頭を下げながら言ったレイネン。
レイネンは、日傘を持ち、外行きのドレスを着ていた。
頭を下げ、レイネンが屋敷から出て行く事を見送ったラタリは、さっそく通信機を使って、外に待機しているニムタンスに連絡を送った。
「レイネン様が今から外出します。そちらの準備はオーケーですか?」




