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ストラスレター  作者: 岩戸 勇太
絵葉書の大賞
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他の絵描き

 まずはニムタンスである。

 いつものように、郵便局に出勤していくブロックを見送ったあと、ニムタンスは決意を固めて外に出て行った。

 今日はニムタンスの休日。本来ならば、近くにある公園に行って子供達の相手をするのだが、今日は違う場所に向かって行った。

「絵の得意な人とかは……」

 絵を描く人の中で、知り合いらしい、知り合いではないが、いつも公園に向かう道に一人の絵描きの見習いが似顔絵を描いてそれを売る露天をしているのだ。

 普段はそれの前を通り過ぎるのだが、今日は、彼に挨拶をしようと考えていた。

 両側に木製の家が並ぶ道を、ニムタンスは歩いている。周囲の家屋は、しっかりとニス塗りをされ、太陽の光を浴びて光沢を放っている家もある。

 この通りに建っている建物は、すべてが木造であるというのを忘れてしまうくらいに、綺麗だったり、華やかだったりする家が並んでいる。

 いつもの場所を見ると、ニムタンスは、絵描きを見つけた。帽子を深くかぶり、長袖の服を着ている。いつも、顔を伺う事ができない彼。いままでに一度も彼の素顔を見たことは無かった。ニムタンスは、彼に話しかけてみる。

「おはようございます。いつもこの場所で描いていますね」

 絵描きに、そう声をかけるニムタンス。

「そうだな……仕事のない日は、いつもここで似顔絵を描いているからな」

 あまり上品とは言えない話し方で言う絵描きの人間。少し彼の印象は悪かったが、それでもニムタンスは、今彼に用がある。

 不快な顔をしているのを隠しながら、絵描きに話しかけていく。

「あなたって、郵便局が今絵を募集しているのは知っている?」

「ああ、知っている。絵が採用されるとそれが絵葉書になるんだよな」

 やはり知っていたようだ。ニムタンスは思う。

『このまま押していったら、彼は絵を投稿してくれるのではないか?』

「ブロックから聞いてある。面白そうな企画だから、参加しようと思ってる」

「ブロック? あなたはブロックの事を知っているの?」

 ニムタンスは、不思議に思って聞いた。

『まあ、ブロックも顔が広いからね……いろんな人と交友があるのなんて、今更驚くことじゃないか……』

 そう考えたニムタンス。その絵描きの言葉の続きを待った。

「ニムタンス……もしかして俺の事が分からないのか?」

 その絵描きがそう言うのを聞いて、ニムタンスは目を丸くした。

「え……あなた誰?」

 ニムタンスがそう言うと、絵描きは舌打ちをした。

 帽子をはずし、ジトリとした目でニムタンスの事を睨んだ絵描きは、ニムタンスも知っている相手であった。

「グレッグ……こんな所で何をしているの?」

 グレッグはそれを聞くと、さらに難しい顔を作った。

「見ての通りの似顔絵描きだ。今まで、俺に気づいていなかったのか?」

 グレッグの言うとおり、ニムタンスは彼の事には気付かなかった。

「まあ、話があるんだろう? 近くのカフェにでも行こうか……」

 そうグレッグは言う。ニムタンスは、グレッグに促されて近くのカフェに入って行った。

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