レイネンの興味
「朝ごはんを食べていっても良かったんですのに……」
レイネンはそう言いながら、屋敷の門の前で姿が小さくなっていくブロックを見送っていった。
レイネンにとってはブロックは好印象だったようだ。
優しく、いろんなものを知っている郵便配達の青年。しかも、手紙にまつわるエピソードの数も多い。彼は、普通の人が一生をかけて一つ二つしか出会う事ができないだろうと思うようなするような経験を、いくつもしている。
「彼に興味が出てきました……」
レイネンは、そう言い、ブロックの姿が見えなくなった後、屋敷の掃除を初めていった。
「そういえば、ブロックは昨日は、どこの家に泊まったんだろう?」
ラタリが朝食を作り、ニムタンスができあがるのを待つ形だ。
「そういえば……また誰か女の所で泊まったのかも……」
ラタリが言うと、ニムタンスは視線を合わせた。
「これ以上、変な虫が付かないようにしないとね……」
「そうね。私達の戦いだってまだ決着がついていないし……」
ラタリとニムタンスは、ラタリの作った朝食を、胃に流し込むようにして一気に食べた。
水を飲み、喉に詰まったものも、胃の中に流し込む。
「それじゃあ探しましょう……心当たりをあたってみるわ」
ニムタンスが言う。ニムタンスはドアにまで進んでいった。
そうすると、ドアの前にブロックがいた。
「タイミングピッタリだね」
そう言いながら、ブロックは部屋の中に入っていった。
「ラタリ。お屋敷に戻って。ザック=レイターさんに会って、話を聞いてくるんだ」
ブロックはそう言い、ラタリの手を取って、屋敷までラタリを連れて行った。
屋敷に戻ると、ラタリは膝を落とした。
「ここまで綺麗に……」
あれからレイネンは、家中の掃除を始めたのだという。
ワックスを塗ったり、普段には使わない場所の雑巾がけをしたりして、屋敷をピカピカにしたのだという。
「まったく、完璧なメイドだよ。本当なら、うちのメイドに取りたいくらいだけど……」
そう言い、ザック=レイターは客間の扉を開けた。
「はい……」
そうレイネンの声が聞こえてくる。ザック=レイターはその声を聞くと、ドアノブに手をかけた。
「入るよ」
そう言って、客間の中に入っていった。
そこでは、絵を描いているレイネンがいた。レイネンはいつもの落ち着いた表情などは想像もできないような、真剣な顔をして、絵を描いている。
「彼女は、集中を始めると、周りが見えなくなるんだよ。多少のことでは筆をはなさないね。この集中力に、筆の速さ。『天才』ってやつなんだろうな……」
ラタリや、ザック=レイターの事など、まったく意に介さずに、黙々と絵を描いているレイネン。
「話には聞いていたけど、私に教えられる事があるようには思えないね……」
「話……ですか……?」
ラタリが疑問に思って聞くと、ザック=レイターは楽しそうにしてそれに答えた。




