床のシミもとられる
「こちらにありますこの装置は、何に使うのか、分かりますか?」
レイネンがそう言ったのは、雨水などを溜めておく事のできる巨大なタンクである。
ラタリにとっては、何のために設置をしてあるのか分からないこの施設。
レイネンの様子を見ると、この装置の使い方を知っているようだ。
「少し失礼します……」
そう言うと、その装置に取り付けられているハシゴを登った。そして、そのタンクには綺麗な水が溜まっている。ラタリは、この施設が何のためのものか分から似ながら、ザック=レイターの言いつけ通り、こまめに掃除をしているのだ。
「危ないですよ。そういう事は私がやりますから」
ラタリがそう言うのにも関わらず、ハシゴを登って中に貯められている水の量を確認した。
「タンクの掃除はこまめにやられているようですね。ですが、水がに溜まりっぱなしですね。普段はこのタンクを使われていないのですか?」
ラタリは、その言葉に首をひねった。そもそも、何に使うのか? が全くわからないタンクである。
その様子を見ると、レイネンは、ハシゴから降りてきた。
「これはですね……」
レイネンが言うのを、ラタリは聞く。
レイネンはそのタンクのバルブを開き、その水を洗濯用の桶に貯めた。
「この水は、洗濯をするのにいいんですよ」
そう言い、レイネンは洗濯板を使って洗濯を始めた。
ラタリはその様子を黙って見つめる。「そもそも、あのタンクはこういうふうにつかうものだったのか……」初めてそれを知ったラタリは、興味深そうにしてレイネンがシーツを洗濯するのを見ていた。
「ほら、綺麗になったでしょう?」
そう言い洗濯を終えたシーツを広げるレイネン。
ラタリは、いつもよりも綺麗になったシーツをマジマジと見つめる。
次は、掃除だった。
ラタリがモップを使って床の掃除をしているところ、またもレイネンがやってきた。そこに、ラタリは体を引きつらせた。
『これは……今度は負けられない……」
ラタリは、こめかみの所に脂汗を流しながら、レイネンに向けてお辞儀をした。
「あの、シャンプーってこちらに置いてありますか?」
そう言い、お辞儀をしてきたレイネン。
「シャンプーですか?」
その言葉に疑問を持ちながらも、言われたとおりに、シャンプーを取り出し、レイネンに渡した。
「それでは失礼しますね」
そう言い、レイネンはシャンプーを持って客間に向かって行った。
『何に使うんだろう?』
疑問に思ったラタリは、レイネンについていった。
レイネンは桶に、あのタンクの水をいれ、それで雑巾を絞った。そして、あろう事か、絨毯にシャンプーを垂らしたのだ。
「何を!」
ラタリが止めようとするが、レイネンは言う。
「絨毯を、洗っているんです」
そして、絞った雑巾を使ってシャンプーを伸ばしていく。
絨毯から泡がたってきた。その泡を、雑巾で拭きとり、雑巾を水につけて絞る。そして、絨毯に押し付けて、水気を取る。
それを数回繰り返し、絨毯についていたシミが無くなっていった。
『いままで諦めていたシミが……こんなに綺麗に……』
ラタリは、悔しくなってそう心の中で驚いた。
「おや、レイネン君に、そんな事までやってもらわなくてもいいのに……とは言うけど」
シミが無くなった絨毯を見ると、「うーん……」と、唸って言う。
「ここまでできるなんてすごいね。こんなんだったら、ラタリは、もう用済みかもね」
笑いながら言う、ザック=レイター。
ラタリはその言葉で、ザック=レイターから引いていった。
「わ……私は……」
ラタリは、後ろにたじろぎながら言う。
「いらないメイドでした!」
そう言って、屋敷から駆け出してきたのだ。
「それは、居場所がなくなっちゃうねー」
ラタリの言葉に、同情をしたニムタンスが言う。




