追い出されたブロック
「何で、ボクが追い出されなきゃ……?」
あれから、ニムタンスとラタリに、『あんたが出て行きなさい!』と言われ、自分が家賃を払っている部屋から追い出された。
なんでこうなったのか分からないブロック。
彼が考えたところで、答えなんていつになっても見つからないのでは? と、思われる。
今だになって、ブロックは、ニムタンスとラタリの機嫌が悪くなった理由は何か? そんな事を考えているブロックに声がかけられた。
「どんな面白い事になっているのか? と、思ってやってきたのだが……これは予想外だよ」
そう言い、くつくつ……といった感じで笑う、ザック=レイターがいた。
「面白くないですよ……」
ブロックがそう言いながら、ザック=レイターの方を向くと、初めて見るメイドが、ザック=レイターの隣にいるのが見えた。
「新しいメイドさんを雇ったんですか……」
ブロックは、ラタリが、自分が用無しになっただのと、言った事を思い出した。
「初めまして。レイネンと言います」
『よく、躾けられたメイド』と、いった感じで、深々と礼をするレイネン。
なるほど、この子に仕事を取られたのか……そう考えたブロックは、レイネンの事を見る。
「この子が気になるかい? なかなか可愛い子だろう?」
「可愛いか、どうかは別としまして……」
この子のせいで、ブロックは家を追い出されたのだ。それを言うと、ザック=レイターはさらに面白そうな、顔をして言う。
「おいおい……それは流石に逆恨みってもんだよ。レイネンはまったく悪くないじゃないか」
ザック=レイターが言った言葉に、それはそうだが……と、思ったブロック。
「だけど、ラタリをクビにするのは、やりすぎでしょう? そのせいで、あんな事になったし……」
ブロックがそう言うと、ザック=レイターは笑いながら言う。
「僕はラタリの事をクビになんてしてないよ。ちょっと『レイネンがいたら、ラタリはいらないね』とは言ったけど」
「まあ、どうにせよ、ラタリの仕事は、このレイネンにとって代わられたという事でしょう?」
そう言ったブロックだが、それに、ザック=レイターは首を横に振った。
「レイネンは……なんというか……臨時だ。そう、臨時のメイドなんだ」
「臨時ねぇ……」
ブロックはそう言って、レイネンの事を見た。
そうすると、レイネンはブロックにペコリと頭を下げる。
「旦那様のお言いつけです、今晩は屋敷に泊まってもよいですよ」
レイネンが言う。ブロックはレイネンを見て、キョトンとした顔をした。
「本当は、ラタリの事を迎えに来たんだよ。いきなり押しかけても、迷惑がられるだけだし、追い出されると思ってね」
「まさか、君が追い出されているってのは、予想外だったけど……」そう言い、ニヤリと笑った、ザック=レイター。
「お世話になります……」
ブロックは腑に落ちないものを感じながら、ザック=レイターに頭を下げた。




