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ストラスレター  作者: 岩戸 勇太
幸せの手紙
37/84

とんだ結婚式

 ここは、ブロックのアパートだ。

「へー……それなら、上手くいきそうだね」

 ニムタンスはブロックからの話を聞いて、興味深そうにしてそう言った。

「明日は、ニムタンスは仕事だよね? 結婚式は、君の分まで見てきてあげよう」

 明日に行われるという結婚式。ニムタンスは仕事の都合で、参加をできないのだ。だが、ニムタンスはそれでも諦めていないらしい。

「結婚式が始まるのは、午後なんでしょう? 午後までに終わらせれば行けるよ」

「そして、ヘロヘロになるんでしょう?」

 体の中のストラを吸われるニムタンスは、仕事が終わる頃には、ヘロヘロになっている。

「いや! 今日は全力でストラを溜め込む! 肉をガンガン食べてストラを補給しておくの!」

 食卓に出されたものは、今日買った牛肉や豚肉をふんだんに使っている。

「ソーセージやハムの備蓄だってあるんでしょう? 肉をケチらないで、ガンガン食べていくよ」

「なけなしの僕の給料で買ったんだよ。燻製食品は、少しずつ食べるんだ!」

「それで、明日の仕事が乗り切れるかぁ!」

「明日の仕事は、気力で乗り切ってよ!」

 ブロックはニムタンスにそう言うが、ニムタンスの食欲は、それで抑えられそうもなかった。


「ニムタンス。ほら、ボクの後ろに乗って……」

 足取りがおぼつかないニムタンスを、ブロックは抱えていた。

 結婚式が始まる前に仕事を切り上げていたブロックは、ニムタンスの仕事が終わるまで待っていた。

 それで、生気のない目をして、フラフラになりながら、ニムタンスが出てくるのを見つけたのだ。

「どうよー……いままでで最新記録でしょうー」

「こんなにヘロヘロになるまで頑張らなくても!」

 ニムタンスを後部座席に乗せ、自分はその前に座るブロック。

「それじゃあ行くよ!」

そう言い、ブロックはハバタキ飛行機を空に飛ばし、結婚式の会場にまで飛んでいった。


 結婚式があるという話は、すでにフロウに知れ渡っていたらしく、二つのフロウをつなぐ橋には、人がいっぱいになって溢れていた。

 二人の事を祝福する声が、投げかけられる。祝福の言葉を聞き、ディラは感極まっているといった様子だ。

「ディラさんも、ああなると、泣いちゃうよね……」

 今は、ケーキを入刀しているところだ。ディラは、泣き顔になりながら、ケーキにナイフを入れていく。そこで拍手が起こっていた。

 パチパチと拍手が鳴り、それを受けるディラは、涙ぐんでいるようにして、顔を伏せていた。

「いーや、あのタイプはこんな事じゃ泣かないよ。私のカンがそう言っている」

「また、ニムのカンかい……」

 ブロックはうんざりしたようにして言う。

 だが、ニムタンスのカンは驚くべき形で当たった。

「止めだ止めだ! こんなの私じゃない!」

 ケーキに入刀をした後のディラの言葉に、その場にいた全員が、唖然とした。

「私はこれで結婚をするが、いいお嫁さんになろうとか、旦那のために働こうとか! 一切考えていない!」

 周りに向けて言うディラ。

 何を言うのか? と思い、続きの言葉を静聴する人達に向けて、ディラは言い出した。

「私はこいつを尻にしく! こいつに文句は言わせない!」

 それを聞いて苦笑をするロクサス。最初から、こういう事になるんじゃないか? っていうのは、薄々感じていたような感じだ。

「こいつの物は私の物だ。私の物は、当然私のものだ! 文句は言わせない!」

 そう言うと、その場にいた男は、その言葉に引いていった。逆に、その場にいた女は、みんな、殺気立っていった。

「そうだそうだ!」

 ディラの言葉に、感化されたニムタンスが言う。

「こらこら……」と言って、たしなめるブロックだが、そんな事はお構いなしに、ニムタンスは、ディラの言葉に、答えていく。

「女は正義! 女は男よりも偉い! 女は世界で一番強い!」

 そう言うディラ。ニムタンスもそれに合わせて叫びだした。

「おしとやかにしない子は嫌いです」

 ブロックがそう言うと、ニムタンスはピクリと反応をして、おとなしくした。

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