とんだ結婚式
ここは、ブロックのアパートだ。
「へー……それなら、上手くいきそうだね」
ニムタンスはブロックからの話を聞いて、興味深そうにしてそう言った。
「明日は、ニムタンスは仕事だよね? 結婚式は、君の分まで見てきてあげよう」
明日に行われるという結婚式。ニムタンスは仕事の都合で、参加をできないのだ。だが、ニムタンスはそれでも諦めていないらしい。
「結婚式が始まるのは、午後なんでしょう? 午後までに終わらせれば行けるよ」
「そして、ヘロヘロになるんでしょう?」
体の中のストラを吸われるニムタンスは、仕事が終わる頃には、ヘロヘロになっている。
「いや! 今日は全力でストラを溜め込む! 肉をガンガン食べてストラを補給しておくの!」
食卓に出されたものは、今日買った牛肉や豚肉をふんだんに使っている。
「ソーセージやハムの備蓄だってあるんでしょう? 肉をケチらないで、ガンガン食べていくよ」
「なけなしの僕の給料で買ったんだよ。燻製食品は、少しずつ食べるんだ!」
「それで、明日の仕事が乗り切れるかぁ!」
「明日の仕事は、気力で乗り切ってよ!」
ブロックはニムタンスにそう言うが、ニムタンスの食欲は、それで抑えられそうもなかった。
「ニムタンス。ほら、ボクの後ろに乗って……」
足取りがおぼつかないニムタンスを、ブロックは抱えていた。
結婚式が始まる前に仕事を切り上げていたブロックは、ニムタンスの仕事が終わるまで待っていた。
それで、生気のない目をして、フラフラになりながら、ニムタンスが出てくるのを見つけたのだ。
「どうよー……いままでで最新記録でしょうー」
「こんなにヘロヘロになるまで頑張らなくても!」
ニムタンスを後部座席に乗せ、自分はその前に座るブロック。
「それじゃあ行くよ!」
そう言い、ブロックはハバタキ飛行機を空に飛ばし、結婚式の会場にまで飛んでいった。
結婚式があるという話は、すでにフロウに知れ渡っていたらしく、二つのフロウをつなぐ橋には、人がいっぱいになって溢れていた。
二人の事を祝福する声が、投げかけられる。祝福の言葉を聞き、ディラは感極まっているといった様子だ。
「ディラさんも、ああなると、泣いちゃうよね……」
今は、ケーキを入刀しているところだ。ディラは、泣き顔になりながら、ケーキにナイフを入れていく。そこで拍手が起こっていた。
パチパチと拍手が鳴り、それを受けるディラは、涙ぐんでいるようにして、顔を伏せていた。
「いーや、あのタイプはこんな事じゃ泣かないよ。私のカンがそう言っている」
「また、ニムのカンかい……」
ブロックはうんざりしたようにして言う。
だが、ニムタンスのカンは驚くべき形で当たった。
「止めだ止めだ! こんなの私じゃない!」
ケーキに入刀をした後のディラの言葉に、その場にいた全員が、唖然とした。
「私はこれで結婚をするが、いいお嫁さんになろうとか、旦那のために働こうとか! 一切考えていない!」
周りに向けて言うディラ。
何を言うのか? と思い、続きの言葉を静聴する人達に向けて、ディラは言い出した。
「私はこいつを尻にしく! こいつに文句は言わせない!」
それを聞いて苦笑をするロクサス。最初から、こういう事になるんじゃないか? っていうのは、薄々感じていたような感じだ。
「こいつの物は私の物だ。私の物は、当然私のものだ! 文句は言わせない!」
そう言うと、その場にいた男は、その言葉に引いていった。逆に、その場にいた女は、みんな、殺気立っていった。
「そうだそうだ!」
ディラの言葉に、感化されたニムタンスが言う。
「こらこら……」と言って、たしなめるブロックだが、そんな事はお構いなしに、ニムタンスは、ディラの言葉に、答えていく。
「女は正義! 女は男よりも偉い! 女は世界で一番強い!」
そう言うディラ。ニムタンスもそれに合わせて叫びだした。
「おしとやかにしない子は嫌いです」
ブロックがそう言うと、ニムタンスはピクリと反応をして、おとなしくした。




