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ストラスレター  作者: 岩戸 勇太
幸せの手紙
33/84

次に出てきたのは、ザック=レイター

 そこには、ザック=レイターがいた。

「ザックさん? 買い物はラタリにやらせているんじゃなかったんですか?」

 ブロックは、うんざりしながら言う。

 画家で、ラタリを雇っている立場のザック=レイターは、こんな所に、買い物に来なくてはならないような身分ではない。

「見物だよ。二日後にはこの街道で、大きな結婚式があがるんだ。その下見だね」

「ほう、それは面白そうな話ですね。どっかの偉い人の結婚ですか?」

 ニムタンスは、子供二人を抱えながら言う。

「どっちかにしたら?」

 ブロックは、ニムタンスに向けてそう言う。

 そうすると、ニムタンスは、子供を下ろしてからザック=レイターににじり寄っていった。

「それで、誰と誰の結婚式なんですか?」

 ニムタンスが言うと、ザック=レイターは、話しだした。

「金持ち同士の結婚ってわけじゃない。その二人は、ただの農業フロウとうちのフロウの住人たちなんだ」

 長い事、二人は離れ離れになって生活をしており、手紙だけのやりとりをしていた。

 だが、そんな付き合いを数年間も続けているので、そろそろ、二人を結婚させようという話になったのだ。

「農業フロウは、大抵嫁不足が悩みの種らしいからね」

 農業フロウの人口は百人程度。しかも高年齢化が進んでおり、もしかしたら、この先フロウの廃棄がされて、廃墟フロウ化しまうのではないか? という恐れもある。

 廃墟フロウになると、魔力の供給源は無くなり、空に浮いている事もできず、地上に落下をしてしまうのだという。

「そこで、煮え切らない二人を、なんとか無理やりくっつけようとしているんだ」

 なんか、含みでもあるような言い方で言うザック=レイター。

 彼は、いつもこんな感じで、皮肉っぽくしゃべるクセがあるだけで、この結婚の事を心から祝福している一人なのだろう。

「もしかして、そのお嫁さんっていうのは……」

 ブロックは、心当たりの名前を言う。そう言うと、ザック=レイターは驚いた顔をした後、正解であると言って頷いた。

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