ブロックだけが気づかない修羅場
「ブロックさん!」
そこから、更に後ろから声をかけられる。
ブロックがその声を聞いて振り返ると、そこには、メイネがいた。
その声色から感じるに、ブロックに聞こえるようにして、ブロックに向けて大声で呼びかけたような感じで言っていた。
「また知らない女性と一緒にいますね」
何か敵意でも篭っているような顔で、ブロックの事を見るメイネ。
その意味が分かっていないブロックは訳も分からずに後ろにたじろいだ。
「ニムお姉ちゃんだ」
ブロックと、メイネの状態など、お構いなしに、ニムタンスの所に走り寄っていくメルム。
そのメルムは、ニムタンスに飛び込んでいく。
メルムを抱きかかえたニムタンスは、「おおー、よしよし……」と言って、メルムの頭をなで始める。
「ブロックさんって、いつもほかの女性と一緒になっているのですか?」
「なんだい? その質問は……?」
ブロックにはメイネの質問の意味が、全く分かっていないのだろう。自分に歩き寄ってくるメイネがなぜこんな行動をしているのか? 全く分かっていない。
「おー、相変わらず女の子に囲まれてて、羨ましいことですねぇ」
さらにそのに声がかけられる。
ブロックが、声のした方を向くと、そこにはラタリがいる。
「ラタリ……助けては……くれない様子だよね」
新たに、ラタリが来たのを見て、ブロックは更に焦りだした。
「ラタリ……君もかい……?」
ラタリは、巨大な肉の塊を、引き台車に乗せていた。
これからこれを屋敷に持ち帰って、ベーコンやハムを作らねばならないのだ。
「何の事を言っているか、分からないけど、私はこれから屋敷に帰って、この肉を燻製にしなければならないの」
そして、煙で肉を燻すために、材木屋に行って、木材のチップを手に入れねばならない。
「そうですか、早く行ってください。お仕事ならしょうがないですよね」
メイネがトゲのある言い方で言う。ラタリも、刺のある言い方で答える。
「まあ、年上の男を好きになるなんて、若い子がよくかかる病気みたいなものよ。早く目を覚まして、あなたに合った年齢の相手を見つける事ね」
「なんだい……? その会話……?」
ブロックは、二人の会話の意図を全く把握していない感じで言う。
それを聞いて、鼻を鳴らしたラタリは、台車を引きながら、自分たちのフロウに戻っていった。
「やっぱり君の事を観察するのは面白いね。水面下で行われる女の戦いか……」
「今度は誰ですか……?」
またも、後ろから声をかけられたブロックは、うんざりしながら振り向いた。




