幸せの手紙
ブロックは仕事が終わり、仕事から帰ってくるニムタンスを待っていた。
彼女は、いつも、ヘトヘトに疲れて帰ってくる。そして、決まって『肉が食べたい』などと言い出すのだ。
今日も、鶏肉を買ってニムタンスのために用意をしていた。
台所の台の上に、鶏肉を置く。
そこに、家のドアが空く音が聞こえてきた。ニムタンスが帰ってきたのだ。
「主夫をしているブロック君に、嬉しいお知らせです」
ニムタンスは、ブロックの事を見つけると、話し始めた。
「どうやら、このフロウは臨時で農業フロウに乗り付けるらしいです」
このフロウは、ほとんどが市街地になっており、畑を耕す土地などは無い。食料は、農業フロウから輸入をするのだ。
それを、専用の氷室に入れ、長期保存をしながら、千人いるこのフロウの人々の食料をまかなっている。
農業フロウとのドッキングは、新鮮な食べ物を手に入れるためのチャンスであったり、足の速い食べ物を食べる絶好の機会である。
「久しぶりに卵とか牛乳とかが食べられるんだね」
ブロックは言う。
このフロウにも、牛を育てている場所があるが、それだけではフロウの全員分の牛乳をまかないきれない。
「フロウでは、水は貴重だから、牛に水を飲ませるのにも、高い水を買わなきゃいけないしね」
牛飲馬食という言葉もあるくらいであり、牛を育てるのに、水が必要になる。水の確保も難しいフロウでは、牛乳は高くなるのだ。
「激安の、新鮮な牛乳とかで作った、アイスクリームは最高なんだし……」
口の端から、ヨダレを出しながら言うニムタンス。
「いつから、乗り付けるんだい?」
ニムタンスは、指を三本立てた。
「なんと、明日から三日間の間、ドッキングをするらしいよ」
「おー……三日間も……」
ニムタンスが、『どうだすごいだろ』と、でも言いたげに胸を反らしながら言うのに、ブロックも拍手をした。
農業フロウは、常に赤道直下を飛んでいる。
暑い場所の方が、作物の育ちが良い。その暑い気候の中で米や小麦の、二毛作や三毛作をやっているのだ。
農業フロウが近づくという事は、このフロウの住人達にとっては、一大イベントなのだ。




