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ストラスレター  作者: 岩戸 勇太
兄弟と、姉妹の手紙
25/84

メイネの家に入って

「助かったよ……」

 ニムタンスは、メイネの家の中に案内をされた。そこで、出されたお茶をすすりながら、周囲を見回してみた。

「いままでもらった手紙って、全部部屋に貼ってあるんだ……」

 壁には、いくつもの手紙が貼ってあった。

「まあ、思い出ですからね」

 ぶっきらぼうな言い方で答えるメイネ。

「マルシェ君が、メルムちゃんに会いたいって……」

 いきなり本題を話し始めたニムタンスに、メイネは、答えた。

「別に会っちゃいけないわけじゃ……」

「なら、マルシェ君に、会うわせてあげて。いま、メルムちゃんは、この家にいるの?」

 コクンと頷いたメイネは、部屋の外に出て行った。

「メルム! 来なさい! マルシェ君が来ているよ!」

 メイネがそう言うと、小さな女の子が部屋に入ってきた。

「でも、マルシェとは、会っちゃいけないって……」

 メルムが、おずおず……と、いった感じで言い出すと、メイネは言う。

「もうそれは解除。これから、好きにマルシェ君と、遊んでいいよ」

 そう言うと、メルムは、明るい顔をして、マルシェのところに行った。

 マルシェの手を取ると、引っ張って、家の外にまで連れて行った。

 この部屋の窓にまで歩いて行ったメイネが二人が家の庭で一緒になって遊ぶのを、二階の窓から見下ろした。

「あの手紙を書いたのは、マルシェ君だったんだよ……」

「そんな話、どこで聞いたんですか?」

 いきなり、あの手紙の話をされた、メイネは聞く。ブロックから教えられた事であると、ニムタンスは答えた。そして、ブロックが、その手紙の事が気になって、色々調べている事も話すと、メイネは納得をしたようにして頷いた。

「そうだったんですか」

 メイネも言う。

 メルムに、マルシェと合わないように、釘を刺した理由は、マックスがいきなり自分に告白をしてきたからなのだという。

 ただの友達だと思っていた、マックスからの告白を受け止める事ができず、あれから、マックスと会う事ができなくなってしまったというのだ。

 だから、メルムにも、マルシェと会う事を止めさせた。メルムが、マックスの弟であるマルシェに会うという事は、今になっても、マックスと自分とのつながりが残ると思ったのである。

 メイネ本人としては、自分にそんな感情を持っているマックスとは、できる限り離れたいのだと思ったのだ。

「いきなりあんな事を言い出すなんて……」

「いきなりでもないんだろうけどね、本人にとっては……」

 ニムタンスは、メイネの言葉を聞いてそう返した。

 自分にも、ずっと想っている人がいる。だがその人は、いくらアプローチをしても、自分の気持ちに気づいてくれないのだ。

「今、そいつと同居しているんだけど、びっくりするくらいに何もないのよ。まるで、私が兄弟のように、すぐそこにいるのが当たり前みたいな感じなのよ」

 メイネは、言う

『この二人って何も無いんだ……』

 すでに、ニムタンスがブロックと同居をしている事を知っていたメイネはその話を聞いて、胸をなでおろした。

「本当に何も無いんですか?」

 メイネが聞いてくる。ニムタンスは、うんざりとしたような顔で答えた。

「うん、本当にね……」

 すこしくらいは自分にちょっかいをだそうとしてもいいではないか? そう思うくらいに同居人は何もしてこない。

「同居をしているって言っても、別に仲が進展していたりはいないんですね」

 さらに、そう聞いてくるメイネ。

「ん? なんでそんなに気になるの?」

 何度も聞いてくるメイネ。その態度が気になったニムタンスは、メイネに向けてそう聞いた。

「いえ……なんでも……」

 メイネは、顔を赤くしてそう答えた。

「他に好きな人がいるとしたらどうです? 告白をされたら付き合いますか?」

「ああ……そういう事ならしょうがないね……だけど、マックス君から逃げているだけじゃダメじゃない。可愛い妹達がかわいそうでしょう?」

 家の庭でボール遊びをしている二人の事を、ニムタンスは見下ろした。

「あれくらいの子っていいよね。好きとか、嫌いとか、そういう事なんて関係なしで仲良く遊べるんだからね」

「私達くらいになってしまったら、そういうワケにもいきませんから」

 メイネはそう言う。

 ただの友達から、異性として意識を始める。それに、共通の遊びなども無くなってきて、一緒になって遊ぶような機会も無くなっていく。

「あの子達もそうなっていくのかな?」

 ニムタンスは二人を見下ろしながら言う。

 日がかなり低くなってしまっているのを見ながら、ニムタンスはメイネに言う。

「そろそろ、マルシェ君をおうちに返してあげないとね」

 そう言い、ニムタンスはこの家の玄関にまで行った。

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