メイネとブロック
次の日、ブロックは、いつもどおりに仕事をしていた。目当てのメイネのいる家に近づくと、手紙が届くのを待っているメイネを見つけた。
「メーイーネーちゃーん」
そう声をかけながら、ブロックはメイネの所に向かっていった。
いつものように、手紙を受け取るためにベランダにやってきているメイネに、ブロックは声をかけた。
「ブロックさん。おはようございます」
「うん、おはよう」
そう挨拶をし合ってから、ブロックはメイネに向けて聞いてみた。
「昨日の手紙って見せてもらえない? もしかしたら書いた人が分かるかも」
ブロックが言うと、メイネは家の中に戻って、その手紙を探しに行った。
「これです。やっぱり、マックスが以外の人が送ってきたものなんですね?」
「そうそう……」と、言ったブロックは、その手紙を持ち、中身を取り出して見た。
「この送り主の名前のマックス君って、弟とかいるの?」
ブロックが、メイネにそう聞くと、「そういえば、いましたね」と、思い出したようにして言う。
「この手紙の送り主は、マルシェっていう、マックス君の弟みたいだよ」
「マルシェ君? 何で、あの子がこんな手紙を送ってくるの?」
「まあ、どうしてそんな手紙を送ったのか? ってのは、まだ分からないけどね」
ブロックは手紙を見て言う。
「これは、間違いないな。これを書いたのは小さな男の子だ」
そう言うと、メイネに手紙を返す。
「メルムちゃんに言っていないかい? 『マルシェ君と、一緒に遊ぶな』とか……」
「そういえば、言いました。何でそんな事を知っているんですか?」
「ニムタンスに調べてもらったんだ。昼間に暇な時間があるのは、ニムタンスくらいだからね」
ブロックがそう言うと、メイネの顔は、なぜか険しくなった。
「ニムタンスって誰なんですか? 女の人の名前ですよね?」
ブロックには、なぜメイネの顔が険しくなったのか? が、全くわからない。ブロックは、そのまま答えた。
「一緒に住んている女の子なんだ。反重力装置にストラを注入する仕事をやっていて、昼間に体が空いているのは、彼女くらいだからね」
「一緒に住んでいる……?」
そう言いながら、メイネの顔が険しくなっていくのを感じたブロックだが、いつもどおり、その原因が自分にある事には気づかない。
「と……とにかくだ! ニムタンスがなんでこんな手紙を送ったのか? を、調べてくれるし、この手紙の事は、また今度続きを教えるよ」
そう言いながら、ブロックはハバタキ飛行機に乗って、空へと飛んでいった。
ニムタンスは、多くの子供たちが遊ぶ、昼間の公園にやってきた。
ブランコに、一人で座っているマルシェに向けて、歩いて行った。
「マルシェ君。こんにちは」
子供の目線に合わせ、しゃがんで話しかけるニムタンス。
「お兄さん達の事って大変だよね?」
ニコリと笑って言ったニムタンス。ニムタンスが笑いかけるのに、マルシェも反応をする。
「どうにかしたいんだけど……」
そうマルシェが言う。ニムタンスは、マルシェの隣りのブランコに座った。
「だけど、手紙を送るくらいじゃ、どうにもならないよ。メイネのお姉さんも、なんでそんな手紙が送られてきたのか? チンプンカンプンだったし」
それを聞くと、マルシェは膝を抱いてうずくまった。
「あの手紙を送ったら、マックスお兄ちゃんも、仲直りしてくれるかなぁ? って思って……でも、ダメだったの?」
「そうだよ。マルシェ君が書いたものだっていうのはバレバレだもん」
ブロックの推理としてはこうだ。
文面を見るに、マックスとメイネの仲を取り持とうとして書いたのではないか? と、思われる。
マックスの方から、謝罪の手紙を送ればメイネも機嫌を直してくれると思ったのだ。
ごめんなさい、これからもなかよくしてください。
と、これだけを書いた手紙を送ったのは、これを見たメイネがマックスの事を許し、マルシェ自身もメルムと一緒に遊べるようになるのではないか? と考えたのだ。
「そういう事は、自分で言わないと」
ニムタンスは、マルシェの手を取った。
「どこにいくの?」
自分の手を引っ張るニムタンスに疑問の声を投げたマルシェ。
「そりゃ、メイネお姉ちゃんのところだよ。『これからも、マックスのお兄ちゃんと仲良くして』って、言いに行くのよ」
マルシェは、それを聞き、ニムタンスの手を握り返した。




