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ストラスレター  作者: 岩戸 勇太
兄弟と、姉妹の手紙
22/84

市場でラタリが

 市場に行って、今夜の食材を集めるラタリ。

「今日は何を作ろうかな……?」

 家の主人の、ザック=レイターと奥さんのために、今日の夕飯を作らなければならないラタリは、市場を見回りながら、今日の献立を考えていた。

「ラタリちゃん、こんにちは」

 市場で商品を見ているラタリは、そういう声を聞いて、声のした方を見た。

「レノアさんですか。今夜の材料を探しているのですか?」

「そうなのよ。あなたは何にするの?」

「まだ決めてなくて……」

 ばったりと会った二人は、そう話し合った。

「そういえば聞きましたか? ブロックがまた素敵な手紙を見つけたとか」

「そうね。あの子の話は、私も楽しみにしてるの」

 そう世間話を始めた二人。

 そこに、話題の女の子も現れる。市場で売られているものを見て、今夜の献立でも考えているといった感じであった。

「メイネちゃん、こんにちは」

 やってきたその少女に、二人して声をかけた。

 ラタリは、メイネの事を観察してみる。メイネからは、特に落ち込んだり沈んだりした時に発せられるストラは確認ができなかった。

「今二人であなたの事を話し合っていたんですよ」

 レノアが言うと、メイネはキョトンとした。

「素敵な手紙が、あなたの所に届いたんだって?」

 ラタリが言うと、メイネは、合点がいったといった顔をした。

「ですが、どういう意味の手紙なのか? よく分からなくって……」

 それは、レノアもラタリも聞いた通りの事であった。

「うーん、だけど、そのマックスって子と何かあったの?」

「それは……大したことではないんですが……」

 メイネは言い始めた。

「マックスが、私に告白をして来たんです。「ずっと前から好きでした」って言って……」

 レノアとラタリは、それを聞きながら、二人で頷いた。

 それをメイネは断ったらしい、マックスとは幼なじみの関係である。だが、自分達の仲は、それ以上でもそれ以下でもない。彼とそういう関係になるのなんて、考えられなかったし、メイネには気になる人がいたのだ。

「いつも、手紙を届けてくれるブロックさん。なんか、優しくていい人だなって、思って」

 メイネが言うのに、ラタリとレノアは別々の反応をした。

「そうよね、あの子はいいわね。私も、あと十年若かったら、あの子の事を狙っていたかもしれないわね」

 と、言い、ブロックの事を狙うメイネを見て、面白がっているような様子である。

「やめといたほうがいいわ。あいつは、朴念仁のクセにいらない所だけカンが良くて、あいつの事を狙おうとしても、疲れるだけよ」

 二人の様子を見たメイネは、ラタリの事を見て鼻で笑う。

 ラタリも、メイネから発生している嫌なストラを感じている。

「あなたこそ、ブロックさんに近づくのはやめたほうがいいんじゃないですか? そんなあざとい格好までして、ブロックさんの気を引こうとするほど必死なのは分かりますけど」

「ブロックのためにこんな格好しているわけじゃないわ! これは私の仕事着よ!」

「そうですか? タイムカプセルの回収の時でしたっけ? わざわざメイド服を着て回収にいったらしいですね?」

「ブロックの奴……いらない事ばっかり言って……」

 ここに居ないブロックに向けて、そう言い出すラタリ。レノアは、その二人の様子を楽しそうにしながら見つめていた。

「本当、若いっていいわね」

 クスクス笑いながら言うレノア。二人のいがみ合いを見世物か何かのようにして見物をするレノアに、苛立ちを感じたメイネとラタリの二人だったが、それでも、二人は口喧嘩を続けた。

「若いってのは確かにいい事ですよ。私なんて、あなたよりも四つも若いですし、ブロックさんも、若い人のほうが、いいんじゃないでしょうかね?」

 そう言うメイネに対し、両手を腰に当てたラタリは言い返す。

「あいつの好みはまったくの未知数よ。何が好きか? なんて事を話すのは、まだ早いんじゃないかな? もしかしたら、年上の人の方が好きなのかもしれないし」

「あら? それなら、私にもチャンスがあるのかしら?」

 レノアがラタリの言葉を聞いて、嬉しそうにしてそう言った。

 朴念仁で、女性に興味を示すような事を、まったく口にしないブロック。

 彼の好みのタイプはどうか? なんて聞いてみても、頭を抱えるだけで、どんなタイプなのか? 聞き出す事はできなかったのだ。

「その手の事に関しては、あいつは興味ないのかも……簡単に言って、子供なのよ」

 レノアとメイネはラタリの言葉を聞いて、唸った。

「ブロックさんってそんな感じですからね……」

 メイネが言うのに、レノアも、それに合わせた。

「あの子は女の子と仲良くしている所なんて、想像できないものだからね」

 全員がブロックが女の子と一緒にいるところを想像した。

 だが、どうにも上手く想像ができない。

 三人とも、首をひねりながら、イメージを出そうとしていた。

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