手紙の送り主は誰か?
ブロックが家に帰ると、床でぐでっとなっているニムタンスがいた。
「今日は……本気で死ぬかと思った……」
ブロックは、ニムタンスがバテているところに出くわし、彼女の事を跨いでキッチンへと向かっていく。
「昨日、地上に降りて、ストラを吸われたのが響いているのかい?」
ブロックがニムタンスに向けて言うと、ニムタンスは力なく「うん……」と答える。
「ほかの誰かに任せておけばよかったじゃないか」
「誰に任せればよかった、って言っているの?」
そう言うと同時に、ニムタンスがブロックの事を、寝そべったままの状態で見上げた。
威圧感を感じるような様子でブロックの事を見上げる。
「ラタリとグレッグの二人なんて良かったんじゃない? 二人共、ストラを使う仕事をしているわけでもないんだし……」
「ラタリとグレッグは、二人して手紙の中身を読みそうだったし、グレッグなんて、内容を『どっかの朴念仁』に教えて楽しそうにしてそうだし」
ニムタンスはそう言う。
「『どっかの朴念仁』ってのは一体誰なんだい? 一体、どんな内容の手紙だった事やら」
そこまで言うと、ブロックはコンロの穴に指を入れた。
その穴の先には赤い石が内蔵されており、それにストラを吸わせると、コンロが熱を帯びてくる。
その上にフライパンを乗せたブロックは言い出した。
「やっぱり買ってきておいて良かったよ。今日の夕飯は、お肉三昧にするからね」
買い物カゴの中から紙で巻かれた肉を取り出したブロックは、それをフライパンの上に乗せていく。
「おーにーくー! 肉が食べたい、肉が食べたい、肉が食べたい!」
ニムタンスが大声で言い出すのに、ブロックは笑って言った。
「僕の財布が許す限りしか用意できなかったけどね」
肉に、塩を振りかけ、それを熱したフライパンで焼いていく。
「うあー……お肉のいい匂いー」
クンクンと鼻を鳴らすニムタンスを、苦笑しながら見たブロックは、箸を使って、肉を炒めだした。
「今日、こんな事があってさー……」
「そりゃ、不思議な手紙だねー」
ニムタンスは、メイネに届いた手紙の話を聞いて、首をかしげた。
皿に盛った肉を、口の中にほうばるニムタンスは言う。
「その子って、メルムって子のお姉さんじゃない」
メルムという名を出したニムタンス。
「その子のお姉さんの名前って、メイネっていうの?」
ブロックがそう聞くと、口の中を肉でいっぱいにしたニムタンスは頷いた。
「なら、マックスって名前に聞き覚えは?」
ブロックが言った、マックスという名は、手紙の送り主の名前である。
それを聞くと、ニムタンスはウームと言って首をひねった。
「聞いた事はないかな……」
ニムタンスは言う。
「このフロウには千人しか人口がいないんだ。顔見知りの人間は多いし、人探しをしようとしたら、結構簡単に見つかると思うけど」
ニムタンスがそう言うのを聞いて、ブロックは、『フフフ……』と笑った。
「ニムタンスもその手紙の事が気になるんだね?」
「そりゃ、そうでしょう?」
二人で、ニヤリと笑いあったブロックとニムタンス。
「明日、メルムを捕まえて、聞いてみますか」
ニムタンスが言うと、ブロックは言う。
「任せた! 名探偵ニムタンスさん!」
「はーい!」
そう言うニムタンスは言った。
「それでは! 腹が減っては戦はできぬ! お肉のおかわりを要求する!」
「もう食べきったのかい……」
そうブロックが言うと、両手を挙げた。
「もう、ありません」
ブロックがそう言うと、ニムタンスはバタンと背中から倒れていった。
「まあ、いいや。おやすみー」
そう言ったニムタンスは、すぐに眠り始めた。




