地上に降りる
「それじゃあ、気をつけてね」
ブロックが、ストラエレベーターに乗り込んだ三人に向けて言った。
ブロックが見ている間は、黙っていた三人だったが、ブロックの姿が見えなくなると、ラタリはグレッグに聞いた。
「ねえ、メイド服って、男の子にとっては最高のものじゃないの?」
グレッグは、それを聞いて苦笑した。
「ブロックには、そんな回りくどい方法は効かないと思うぞ……」
ニムタンスと同居をしていても、手出しなど、まったくしようとしないブロック。彼に、そんな感情を起こすのを、期待するのが無理な話だ。
「あいつに、ほれたはれたの話なんて、意識させるのが、まず、至難の技たと思うね」
グレッグが言う。
「道のりは長いわね……」
ラタリが言うのに、ニムタンスも言う。
「ブロックがあまりにも意識しないものだから、着替えだってブロックの前でするようになっちゃったし……」
ニムタンスが言うのに、ラタリが言う。
「何! 着替えをブロックの前でしているの!」
ラタリは驚いた様子だったが、ニムタンスは、平然としていた。
「何か意識をしている様子でもなく、私がいつ着替え出しても、平然として、後ろを向くだけなのよ……」
どうも、着替えを見せられて恥ずかしがっている様子でもなく、『見ちゃうのは悪いから……』と言って、後ろを向くだけのように見える。
ニムタンスは着替えをしながらブロックの事を見ていても、一行にニムタンスの事を気にするような様子は見えなかったのだ。
「なんか、今となっては、ブロックがいる前でも平気で着替えをするようになっちゃって……」
特に、自分の事を気にもしないブロックに、感化をされて、今ではニムタンスも慣れてしまっている。
「思い出したら、いきなり恥ずかしくなってきた……」
恥ずかしさで顔を押さえるニムタンスを、グレッグは苦笑をしながら見つめた。
ゴム手袋と、ゴム長靴を履いた二人は、真っ黒な土の上に足を降ろした。
ゴムの長靴を使っていても、足から力を吸い取られていっている感覚を感じた。
「これは、長居はできないわね」
「土害って、こんなにすごいんだ……」
ニムタンスとラタリは、急いで赤いマーカーの所に走っていった。
「お前たちの様子だと、五分くらいが限界そうだ! 急いで行ってこい!」
グレッグは、ストラエレベーターのスイッチを押しながら言う。
遠く、百メートルくらの距離にあるマーカーの場所に向けて、ラタリとニムタンスは走っていった。
少しずつ、体から生気を吸われているのが、感じられる二人は、急いでいく。
マーカーの所にまでやってくると、ニムタンスとラタリはタイムカプセルの蓋を開けた。
「おい! それは後にしろ! 早く戻ってこい!」
エレベーターのスイッチに手を置きながらのグレッグも、土害でストラを吸い取られているのである。ストラを削られて辛いのはグレッグも同じだ。
「どうしても、これだけはやらないといけないの!」
「少しだけでいいから待って!」
ニムタンスとラタリは、血眼になって、自分の書いた手紙を探した。手紙の詰まっている小箱を取り出し、それを開けて、自分の名前を探したのだ。
「これだ!」
そう言い、ニムタンスは小箱から手紙を一枚抜き出した。
「私も、もう見つけた!」
そう言い、ニムタンスとラタリはその手紙をポケットに仕舞った。
「早く来い!」
グレッグがニムタンスとラタリに向けて言った。
そろそろ、グレッグも辛くなっているのだろう。
タイムカプセルを二人で担いだニムタンスとラタリは急いでグレッグのいるストラエレベーターにまで走っていった。
「うおおおおおおぉぉぉおお!」
二人してそう言いながら、エレベーターに戻っていく。
その気迫に、グロッグも身を引いたが、それよりも早く、ニムタンスとラタリは思いっきりエレベーターに突っ込んでいった。
「グレッグ! お待たせ!」
ラタリが言うと、グレッグは、ストラエレベーターを起動させ、フロウにまで戻っていった。




