キャラ作りは最初は楽しいが何度もしていると面倒になってくる。
「さて、登録も完了。始めるとしますか」
軽く気合を入れてパソコンのデスクトップに新たに追加されたアイコンをダブルクリックすると、画面に新たなウィンドウが浮かび上がり、社名とロゴが映っていくがそれをすぐにマウスクリックで
とばしていく。
「こういうの飛ばせるっていうのは便利だよなー。ゆっくり映ってフェードアウトとか
起動の度にやられると鬱陶しいし、何かちょっとイラッとくる」
そんな事を言っている内に画面には草原と大きな白、そしてやたら煌びやかな鎧を着込んだイケメンと、それ防具として機能するの?と言いたくなるほど露出度の高い戦士風の
美女が映っており、その上にはゲームのタイトル
『リベロファンタジア/ONLINE』という文字が書かれていた。
その中央にIDとPASSと書かれ、横に空欄のあるウィンドウが表示されている。
「えーと、IDとパスワード。あれ、これIDは記憶できるけどパスは手動かよ。
メモ近くに張っておかなくちゃ。こういうの、絶対に1回はどこか紛失するからなー
気をつけなくちゃ」
独り言をぼやきながらも前もって控えておいたメモに記入してあるIDとパスワードを入れていく。
そして、打ち終えクリックすると今度はキャラ作成画面と思われるものへと移行した。
「名前は、何かふざけたっぽいのはヤダな。世界観とかやっぱり大事にしたいし。
かといってアニメキャラとかの名前もなー。
そのアニメに飽きたと同時にキャラへの愛着も薄れそうだし、なんとなくだけど」
そんなくだらない事を考えながらも名前の欄を睨み考えること十数分。
「エイトでいいか。俺8月生まれだし…ってこれ既に使われているのかい!
じゃあどうしようかなー。記号入れるのもなぁ。最初のキャラだしビシっと名前単体でいきたい」
無駄にこだわりを持ち、再び考えること数分。
「リュウゴ…と、それっぽい名前ならいいか。どうせ名前なんて遊んでいるうちに
気にならなくなる」
最初と言っていることが違う気もするが、そんなことは気にせずに残りのパラメーター
を埋めていく。
「種族は人間、でジョブはソルジャー…と」
このゲームは5つの種族と8つのジョブから好きに選びキャラを作ることができる。
それぞれの種族とジョブには長所と短所があり、組み合わせることで短所によるデメリットを減らす、または長所をさらに伸ばす事で一分野に特化するといった特徴をつけることが可能だ。
その中でも人間、いわゆるヒューマンは種族中で最も標準的な種族だ。
ステータスにプラス補正もマイナス補正もなく、特に目立つスキルを覚えるわけではない。
だが、全てのステータスが満遍なく成長する上、スキルも便利なものは一通り覚える。
癖がなく、操作やプレイもしやすいので初心者にはおすすめの種族として公式ホームページでも紹介している。
次にジョブのソルジャー、これは戦士職と呼ばれるカテゴリに属しており
その中でも安定してどのような状況でも戦えるジョブだ。
通常、ジョブによって扱う武器には得手不得手がある。
例えば、剣や槍を扱う事に長けるジョブは銃や魔法といった飛び道具や攻撃魔法は
苦手であり、その逆に飛び道具や魔法が得意なジョブは近接戦闘が苦手である。
そして、苦手な武器にはマイナス補正がつき武器の命中率や攻撃力の数値が減ることになる。魔法でも同じこと、与えるダメージなどが少なくなり消費MPも高くなる。
しかし、ソルジャーの場合はどの武器もバランスよく扱える為マイナス補正の心配が無い。
反面、どの武器を使ってもプラス補正がなく、魔法を使えないという欠点もあるが
魔法は類似するものをいくつかスキルとして覚えるので初心者でも戦いやすいジョブとしてヒューマンと同じく公式ホームページにおいて初心者おすすめのジョブとなっている。
上記の理由から、ヒューマンとソルジャーの組み合わせは1番オードックスで安定しており、大抵の初心者はこの組み合わせでキャラを作る。
「始めにクセが強いのを選ぶとキツイだろうし、まぁこれでいいか。
さて、次はアバターの容姿か。何気にこういうキャラメイクのあるゲームってここを作っている時が一番楽しい気がする」
このゲームではアバターの容姿決めの際、その自由度の高さがウリの1つとなっている。
髪型や色、服装や顔立ちは勿論のこと身長から腕や脚、胴などそれぞれの筋肉の付きかたまで指定可能なのだ。また、身長も140cmから2m以上の巨体まで作ることがかのであり、筋肉もグラップラーばりの超絶マッスルから出汁が取れそうなほど細身な貧弱ボーヤまで作成できるという自由さがウリというわけだ。
ただし、あまりに広範囲を作成可能なので全ての項目を弄る程凝る人は少なく、大抵は
髪型や目の色や形、身長などを弄るだけのプレイヤーが多いらしい。
こちらも例に漏れず
「髪型は普通に短髪でちょい跳ねている感じで色は茶色、身長はデフォルトよりちょい高め、他は顔をちょっと弄って後は全部デフォでいいかな」
そして、キャラが作成されアバターとステータスが画面に映し出される。
「よし、これでOK。ふぅー、前段階なのに結構時間かかったな」
気づけば起動した時から1時間ほど経っていた。
「殆ど名前きめとアバターの容姿作成で終わったけどね。
さて、んじゃいよいよ―」
全ての項目を埋め、右下のOKボタンを押すと中央に確認のメッセージが出てくる
これでOKをクリックすれば、ついにプレイの準備が整いゲームが本格的に開始される。
リベロファンタジア、昨今様々なジャンルが出ているオンラインゲーム。その中でも今
1番流行っていると評判のRPGだ。
大抵の例に漏れず、このゲームも基本プレイは無料であり
個々の判断で電子マネーや振込み、カード払いなどで課金しポイントを買うことで様々なレアアイテムの取得やシステム拡張ができるというよくあるシステムとなっている。
プレイヤーはこの世界で生きる様々な種族の内の1人となり、この仮想世界を生きていくことになる。
自由度が高いことが話題となっており、戦いに明け暮れることも農作業や店で働くなどのクエストをこなしスローライフをおくることも、はたまた仲間で集まりただ雑談にふけ続けることもできる。特定のストーリーはなく、各々が自分自身のプレイスタイルを持って
自由に架空の世界を生きることが可能なのである。
そして今また
「スタートっと」
OKボタンをクリックし、ここリベロファンタジアの世界にまた1人の若者が―
予期せぬエラーが発生しました。プログラムを強制終了します
「……………、ここでかよぉ!?」
舞い降りるのには、まだいくばくかの時間が必要であった。