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1 始まりはここから

君は僕にとって、闇の中の光なんだよ。


僕は君がいなければ、ずっと暗闇の中で一人だったと思うんだ。


ただ君がいるだけで、僕の世界は輝いている。








































中学卒業した日、私如月(きさらぎ)愛花あいかは幼馴染の牧瀬まきせけい告白された。


彼は、すごく優しくてみんなから尊敬される存在だ。

私は、ただ内気で誰かと接するのが苦だった。

だから私にとって、彼はとても眩しかったのだ。


「僕は、ずっと君が好きだった」


そんな彼に好きだと言われ、私はただ戸惑うばかりだった。

この"好き"が、恋愛的な好きだという事は分かった。

すぐに返事できずに、視線を泳がせていると彼は私を抱きしめた。


「僕にこんな事されるの、嫌だ?」


「…っ」


私は耳元で呟かれて身を固めた。

嫌だ? 

まさか、そんなことがあるわけがない。

私も京のことは大好きだ。

ただ、この好きが恋愛感情なのかということだ。


「嫌いじゃないわ…」


何だか素直じゃない物言いに自分でも変な事を言ってしまったと思った。


「じゃあ、それは好きだってことだね?」


「そう、なのかな」


「そうなんだよ、きっと」


「…っふ、無理やりね」


私の好きがどっちなのかなんて、彼にとってはどうでもいいのかもしれない。

何だか、私もそう思えてきて笑えてしまった。

これが俗で言う、"男と女の関係で友情はない"という奴なのだろうか。

ただ私は受け入れようと思った。



そして、ここから私たちの歯車は狂い始めた。














ここ榛葉しんば学園は初等部から大学まである。

いわゆる財閥やグループの子孫や、親が相当な金持ちじゃないと入れないお坊ちゃま学校というやつらしい。


学校は、エスカレーターだったので、特に何かが変わったということはない。


しかし、少し変化したことといえば、女子から毛嫌いされることが多くなった。

京が周りを気にせずベタベタするせいだろう、と理由ははっきりしているのだが。


京はとにかくモテる。

まぁ、容姿も良いし性格も良いし成績優秀だし親は牧瀬グループの会長だし。

良い所を出すとキリがない。


ベタベタしてくれるのは嬉しいというか、良いのだが少し周りの目が辛い。

でも、何ともいえない自分がもどかしかったり。


2学期に入って少し肌寒くなってきた頃

休憩時間に外を見てボーッとしていると京がいつの間にか私の机の前に立っていた。


「けけっけ京!?」


「ははっ、何でそんなに驚いてるの?」


「え、あいや…」


私が戸惑っていると、急に京の目が曇る。


「誰かを見てたの?」


「…え」


何だか少し京の目が怖いのは気のせいだろうか。


「いや、ちょっと今日は寒いなって思ってただけよ?」


「ははっ、そっか。そうだね~今日は冷えてきたよね」


京の顔はいつも通り。

やっぱり気のせいじゃない。

京が怖いだなんて…私馬鹿みたい。


「今日の帰りはどっかカフェでも寄って、温かい物飲もうか?」


ほら、いつも通りの優しい京だわ。


「それ良いわね!何を飲もうかしら…」


「コーヒーでも飲もうかな」


「京って、よくあんな苦い飲み物飲めるわよね…」


「愛花も、飲めそうなのに飲めないってところ可愛いよね」


「なっ…か、か可愛いとか軽々しく言わないでよ」


京はいたずらっぽく笑う。

そして、私の髪をすくって唇を寄せる。


「本当に可愛いんだよ?」


全身が熱くなるのが分かる。

何でも直球で言うのだ、京は。

私と正反対だと改めて感じる。


「京も…かっこいい……わよ?」


自分で言いながら、どこか穴にもぐりたいような気分になる。

周りの人いるのに…。

でも言わないと私だけ照れさせられて、損するような気がして。


「愛花が…愛花が…」


京は目を見開いて私を見る。

そこまで驚く事なの…?

私が首を傾げると、京は教室の中にも関わらず私を抱き寄せた。


「ちょ、ちょ、ちょっと!!京!?ここ教室よ!?」


「今、すごく僕嬉しいよ」


「…聞いてる?」


「聞いてるよ」


この馬鹿っぷるみたいな会話に、さすがに呆れてくる。

京も相当度胸があるわ。


私は無理矢理、京の腕を払って言った。


「授業始まるわよ」


「まったく…恥ずかしがりやだなぁ」


「早く座らないと遅れるわよ?」


「はいはい」


私も分かっている素直じゃないことぐらい。

でも、どうしようもない性分なのだ。


























幸せというのは雪のようで、


すぐ溶けてしまう。



そうだ。

私と京の”幸せな時間”もいつの間にか変化していくのだった。










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