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路地裏で揺らぐ--内在性解離作家の10人シェアライフ  作者: 久慈柚奈
第一章

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5/7

初めて自分以外の声を聞いた日

文責:亜麻

うきうきするお出かけの予定があったから、かわいい服を選ぼうと思っていた。

クローゼットを開けると、私が思っていたよりたくさんの服がかかっている。ボーイッシュな服も……。私ズボンなんて履かないのになあ。今度断捨離しちゃってもいいかも。これとか、これとか。


考えながらハンガーをかき分けかき分け。あんまり袖を通していない、ノースリーブのワンピースを見つけた。(袖ないけど)


あ、これ。と思い至る。

確か「もっと女の子っぽくかわいくできる服が欲しいな」と思って、買ったんだった。確か……。その記憶には半分だけ実感があるようで、半分はちょっと他人のことみたいだ。

店頭ではあんなに白くてかわいく見えたのに、自然光の中でみるとちょっとピンクがかった白に青い小花が散ったデザインで、思っていたのとちょっと違う。これが照明の魔力というやつだろうか。


ともあれ、手持ちの服の中で一番かわいくて、私の気分に合うやつはこれしかない。もうちょっとスカートの裾が長ければ良かったなと思うけど、まあこれから着慣れていけばいいや、今日はこれに着替えて……。

って、服を脱ぎかけたときだった。


どこかから声。

「そんな女っぽいもの着やがって!」


確かに、はっきりと、男の人の声だった。思わずびくりとして部屋を見まわした。

四畳半の自室。人が隠れる場所なんてないことは私が一番よく分かってる。だって私の部屋だもの。

ドアも窓も閉めてあって、ここには私しかいないんだもの。

それなのに、今の声ははっきり聞こえた。今までにないくらいはっきりと。


瞑想の中でチャネリングを試みたことがある。守護霊さんの声はもっとふわっとしていて、優しい響き方をする。こんなに厳しい言い方をするなんて、次元の低い存在からの交信なんだろうか?


……分からない。


でも、なんだか怖くなって、その声がとても不機嫌そうだったから、私は不承そのワンピースをしまって、もうちょっと肌の露出が少ない、「女っぽい」と「男っぽい」の真ん中みたいな服を着ていくことに変えた。


あれが賢也の声だったんだなって分かったのは、この出来事からゆうに1、2年くらい経ってからだった。

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