魔法使いの少年が異世界に迷い込む、そんな話6
渚は夢を見ていた。
声がする。
「……さ」
「ぇ……ぎさ」
「ねぇ渚? どこ行ってたの?」
ハッと目を覚ます。
目に映るのは見慣れない白い天井と丸い照明。
「ゆうと……」
夢で聞こえたゆうとの声。渚は少し寂しくなった。
「おはよう渚、ぐっすりだったね」
部屋に入ってくる馨の声。
渚は体を起こしリビングに向かう。
リビングに入ると馨は朝食の準備をしていた。
机に並べられるトーストと目玉焼きとソーセージ。
焼けたトーストの香ばしい香りとサイドの柔らかい香りが鼻腔をくすぐる。
「おはよう馨、朝食ありがとね」
「簡単なもので申し訳ないけどね」
そう言いながらコーヒーを注ぐ。
「お砂糖はいくついれる?」
「2つがいいな」
ぽとんぽとんとコーヒーに落ちる2つの砂糖。しゅわっと砂糖が溶け出している。
まどろんでるこの体も同時に溶けてしまいそうだった。
「食べよっか」
馨は席に着く。
「「いただきます」」
カリッとしたトーストからバターの香りが溢れだす。パリッとしたソーセージも、とろっとした黄身がとろけだす目玉焼きも、全てが溶けてしまいそうなこの空間をコーヒーの仄かな苦味が現実に戻してくれる。
「「ごちそうさまでした」」
朝食をすませ二人でゆったりとする。
何をするわけでもなく、流れているテレビをぼーっと眺める。
ふと馨が口を開いた。
「渚、昨日どんな夢見てたの?」
夢の話だった。
「夢?」
「うん、なんかいっぱい寝言言ってたからさ、ちょっと気になって」
渚は考える。
「あまり覚えてないけど、僕の世界で仲良くしてた友達に名前を呼ばれたのは覚えてる」
馨は少し寂しそうな顔をした。
「まぁそうだよね、こんなところに来たら寂しくなっちゃうよね」
馨の表情を汲み取った渚の心は複雑な感情に支配されていた。
「僕、ここで楽しんでていいのかな」
「というと?」
馨は聞き返す。
「また、昨日と同じところに行ったら帰れないかなって」
「今から行ってみる?」
まさかの反応に渚は驚く。
「いいの?」
「いいよ、確認して帰れなさそうだったら帰れるまでここにいたらいい。ただそれだけだからね」
馨は笑いながら話し、姿勢を変える。
「てっきり止められるかと思った」
なぜなら馨の目は寂しさを宿していたから。
「僕優しいんだから、ほら、準備しよ?」
「ありがとう」
そう言って二人は外に出る準備をした。




