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魔法使いの少年が異世界に迷い込む、そんな話4

二人で片付けをしていると馨がふと口を開く。

「渚はさ、怖くないの?」

渚は手を止める。同時に少しドキリとした。

「怖いって?」

恐る恐る聞き返す。

「いや、さっきは僕と出会えてよかったって言ってくれたけど、こんな急に別世界に来ちゃって、しかも何もないこんなところにきちゃって、帰りたいってならないのかなって」

馨は出会ったときの話を掘り返しているようだ。

「君、魔法使って帰ろうとかしなかったの?」

渚は考える。

「馨が言うとおり、怖いところはあるよ。知らない世界でただ一人、正直不安しかない」

渚は淡々と話す。

「でも、さっき言ったことは本当だよ。はじめに出会えたのが馨でよかった。帰ろうとは試みたけど何もできなかった。何も起きなかった。だから、帰れる確証はないけど、それまでは、馨となら楽しんでもいいかなって」

渚は少し寂しそうに話す。

心が自然と重たくなるのを感じる。

「そっか……」

少しの沈黙が流れる。

空気を切るように馨が話し始める。

「じゃあ、こっちに来てから魔法を使おうとはしたってこと?」

「そうだね、でも帰れるかを試しただけだから他の魔法は使ってないな。だからこの世界で魔法が出せるのかすら実はまだあまりわかってない」

むずむずとした表情で微笑みながら渚は話す。

「じゃあさ、簡単な魔法……今できそうな魔法とかある?」

馨は少し興味深そうに渚に問いかける。

「ん〜そうだなぁ、ねぇ馨? 何か果物とかある?」

そう聞かれた馨は手を拭き冷蔵庫を開く。

「りんご……ならあるけど」

「充分!」

そう言って渚はりんごを手に取る。

手のひらに載せたりんご。

渚は目をつむり思いを込める。

するとどうだろう! さっきまで真っ赤だったりんごがスルスルと皮という糸を引き次第にみずみずしい果実が現れるではありませんか!

馨は目を丸くしてその情景を眺めていた。

息をのんだ。

気がつけば8つに切れたりんごがお皿の上に並べられる。

りんごが宙を浮きふわふわとお皿の上に着地したのだ。

「すごい……」

馨は言葉が出てこなかった。

「んへへ、簡単な魔法だけどね」

渚は少し誇らしげに話す。

「すごい…… すごいよ渚!! 君、本当に魔法使いだったんだね!」

馨は星を手に入れたかのように目を輝かせる。

「他にもできるよ。いろんなこと。リクエストがあれば」

そう言って渚は会釈をする。

(僕の人生、楽しくなりそうだ)

馨の心は静かに叫んでいた。

「僕にもできるかな」

「試してみないとわからないね」

そう言って二人は笑いあった。

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