魔法使いの少年が異世界に迷い込む、そんな話3
今日から二人のお家となったこの家、時刻は午後8時を指していた。
「渚、ご飯できたよ」
そう言って馨は食卓に食べ物を並べる。
デミグラスソースがかかったハンバーグにつやつやと色をまとったグラッセされた人参にコーン達。
肉肉しい香りからスパイスの香りまで渚の鼻腔をくすぐる。
「これ、馨が作ったの?」
渚は目を輝かせながら聞く。
「そうだよ、こんなものしか作れないけど……」
「こんなものなんてそんなことないよ、僕、見たことないけどすごく美味しそうな香りがする」
渚は目を輝かせている。
「ハンバーグって君の世界にはないの?」
馨は問いかける。
「ハンバーグ? この名前はハンバーグっていうの?」
「そうだよ試しにこの肉の塊、割ってみてよ」
そう言われ渚は馨の言うとおりにハンバーグという食べ物に箸を入れる。
じゅわっと溢れだす肉汁。それはあったかな光をまといキラキラと輝いている。
止まることのないその流れに渚は見とれ箸を動かすことができなかった。
「渚、手が止まってるけどどうしたの?」
馨は問いかける。
「いや、こんなにもきれいな流れがあるんだって思って」
渚はキラキラとした目で馨に答える。
「ほら、早くご飯食べよ?」
馨が言う。
「「いただきます!」」
真っ先に口に入れたハンバーグ。
ほろっとひき肉が解け瞬間肉汁が口内を占拠する。
噛めば噛むほど肉の旨味が広がり、中には行っている玉ねぎの甘さがそれを助長させる。
「おいしい……」
渚はそう言って箸を止めない。
その姿に馨は嬉しそうににこにこと笑みをこぼす。
「口にあってよかった。」
馨も夕食を食べ進める。
「ご飯はおかわりあるからね」
そう言うと渚は目を輝かせてすぐに答える。
「おかわりもらってもいいですか!」
ふふっと笑いいいよと馨はご飯を盛りに行く。
「はい」
渚はハンバーグとご飯を頬張る。
口の中を一杯にしてもぐもぐと動くそのほっぺたは今にも落ちてしまいそうなほどだった。
「こんなに喜んでくれるなんてほんとに嬉しい」
馨は言葉をこぼす。
「今まで一人で食べてたの?」
「そうだよ。だから嬉しいんだ。誰かとご飯を食べるだけじゃない。僕の作ったご飯をこんなにも美味しそうに食べてくれる」
渚は何度かまばたきをして微笑みながら答える。
「この世界に来て不安だったけど出会ったのが馨でよかった。こんな見ず知らずの人間をとめてくれるなんて、しかもこんなにも美味しいものを食べさせてくれるなんて、不安がどっか行っちゃったよ」
笑いながら話す。
「こんなに幸せで笑ったの久しぶりかも」
馨はふふふっと笑いながら体を揺らした。
久しぶりという感覚が静かに胸の奥へと沈んでいく。
食卓には柔らかな湯気が立ち上っていた。
ほかほかのご飯。それを囲む二人の少年。まるで別世界のような、そんな暖かく柔らかな空気が二人を包んでいた。




