魔法使いの少年が異世界に迷い込む、そんな話2
そう言って後ろを振り向く。
とそこに広がっていたのは苔むした石畳。
緑がキラキラと反射している。
「ここ……来た道じゃない」
そう思ったが帰る道はそこしかなかった。
「とりあえず歩かなきゃ」
そう思い歩みを進める。
ふわっとした苔の感触が全身を包む。
サクッサクッと音を立てて歩いていく。
少しすると道に出た。
そこはコンクリートの道路。道を挟んだ先には数個の古民家。
ここはその道路の脇だった。
「ここ……どこ?」
来た道を戻ると田んぼに出るはずだった。
なのに見たことのない道に出た。
渚は顔色を変えた。
冷や汗が止まらない。目が揺らぎ始める。
「僕……どこに来ちゃったの……」
すくっと下に座り込む。
そのまま時間が過ぎた。
気づけばカラスが鳴いている。
顔を上げると夕焼けが広がっていた。
果てしなく続く空。
赤と青のグラデーションが目に染みる。
ぼーっと空を眺めていると右側から足音が聞こえてきた。
恐怖が交じる中渚は右に振り向く。
そこには少年が立っていた。
「君……ここの人じゃないでしょ」
渚は顔を上げる。
少年は、青みがかった黒色の髪。片目が隠れるほど長い前髪。ビードロのような黒色の目に肌は白く透き通っている。
身長は渚と同じくらいで、少し痩せており、
黒いコートに青色のマフラーを巻いていた。
「君、ここで何してるの?」
少年は渚の前に座り込む。
少し警戒しながらも渚は一つづつ話していく。
「気になる祠に行ったら祠が光って、目を開けたらここに来てて……来た道じゃない道が開けてて……」
ふーんと少年は頷く。
「じゃあトリップしてきちゃったんだ」
ぽかんと渚はする。
「もしそうだとしたらここ、どこかわかる? 多分国も違うんじゃないかな? 君のいたところはなんていうところ?」
渚は答える
「アイソティアっていう名前のところ」
少年は首を傾げる。
「アイソティア……? 聞いたことないな」
「逆にここはどこなの?」
「ここ?」
少年はあたりを見渡して言う。
「日本っていう国の小さな田舎かな」
同じく渚も周りを見渡す。
草木が生い茂り、冷たい風がぴゅうと吹く。
草かげからは生き物の走る音。道路は基本1本しかなく、車通りも少ない。のどかという言葉がぴったりな場所だった。
「日本……」
渚は繰り返す。
少年は渚を見つめて言う。
「僕の名前行ってなかったね。馨。神崎馨だよ」
慌てて渚も名前を言う。
「ぼっ僕の名前は渚だよ」
「渚か、いい名前だね」
少し緊張が和らぐ。
彼の横顔はどこか消えてしまいそうなほどに美しかった。
「渚、これからどうするの?」
「どうしよう……」
二人は歩きながら会話をする。
「きっと帰る場所ないんだよね、だったらさ、僕の家こない?」
「え?」
「僕の親、今仕事で海外に行ってて長らく帰ってこないからさ」
そう淡々と馨は話す。
「寂しくないの?」
ふと出た言葉にあっという顔をする。
「寂しくないよ。けど君が来てくれたらもっと寂しくない……かな」
笑いながら馨は話す。
「僕の国に帰りたいけど道は封鎖されちゃったしな……」
「よし決まり!」
そうして二人は馨の家へと帰路についた。




