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14話

目の前で起こったことの意味がわからなすぎて、挨拶にいまいち反応できてない。


「フォルトさんは疲労除去魔法を見るのが始めてですよね」


「え、あ、はい」


雑な会話の進め方だな。

私が反応できなかったのが悪いんだけども。

それはそれとして、疲労除去魔法は存在するものなら知りたかった。


「説明できますか?」


「まぁ、一応秘術なんですけれども、隠してることでも無いから説明しますね」


「え?あ、あぁ、はい」


さっきとはうってかわって、早口で喋るログトさんに、ぎりぎり反応する。

展開が急だ。

ヴィルヘルムさんは話の進め方が速すぎて、私のキャパシティを超えている


「まぁ〜、まず根本ではなく大雑把な話をするのですがぁ、あれはあの時点で完成する魔法ではなくて、今私の中でも継続しているのですよ。まぁ、どういうことかと言うと、あれは使用した後からの身体機能を魔力が補助することによって、まぁ魔力を経由して酸素を体内に送り、血液が酸素を運ぶ手伝いをし――


という調子で、相槌を打つ暇もない速度で魔法の解説をしてくれた。

正直、仕組みはわからなかった。

だが、使い方はわかった。


――で、まぁ、光属性だけではなく風属性も利用することで効率よく発動できるのですよ。ここからは、応用なのですが」


「ログトさん、グリゲルさんが起きる前に治療をお願いしても?応用編はまた今度お願いします。私も気になるので」


「え、あぁそうでしたね。まぁ、何があったかは知らないですが、グリゲルさんに治療が必要なら、重症なんでしょう。急いで治すほうが良いですね」


急に喋る速度が遅くなった。

好きなことは早口になっちゃうのかな。


「では、こちらです。フォルトさんも」


「はい」


「そういえば、俺はどのあたりを治せば?」


この人、一人称俺なんだ。ちょっと意外だな。

とか思ってる間に、ヴィルヘルムさんが説明し始める。


「軽い治療の練習のために、私が内蔵を治したあと――」


と、おおまかな説明をしている。

なんか、私たちが悪いみたいだ。

実際そうか。中途半端にしか治してないわけだし。

というか、三人で歩いているとき一番嫌な陣形になってる。

私だけ隣に誰もいない。


「なるほど、神経のみですか……まぁ〜、起きていたら気持ち悪いし痛いしで最悪なやつですね」


「えぇ、一応睡眠魔法をお願いしていいですか?」


「腹の穴のサイズにもよりますが、どのくらいですか?」


「大体縦が12cmで横が5cmくらいで――」


プロの会話には割り込めない。

多少の無駄がある感じが、特に。

なんでかはわかんないけど、必要最低限のことしか言わない信頼とは違う、確かな信頼がある感じ?


「グリゲル君は変な強さがあるから、睡眠魔法をかけても結構起きちゃうのが難しいんですよねぇ」


「そういえば、治療中に起きて、そのまま治療拒否することが多いですね」


「治しきらないとまずい怪我しかしない人なんですけどね……」


いつの間にか状況のすり合わせは終わったらしく、愚痴に移行している。


「グリゲルさんってそんなボロボロな人なんですか?」


勇気を出して、真ん中に入って話しかけてみる。

ログトさんとヴィルヘルムさんに見下されて、ちょっと怖い。

が、大常備そうだ。ヴィルヘルムさんが頷いてから、口を開く。


「え、えぇ。彼は貴女の前……5年ほどでしたかね」


「多分そんなもんですね」


「そのあたりで部署に入ってきた、かなり新顔の人なんですよ」


「ほうほう」


若いと思ったが、そんなに最近だったか。

と、思ったが、5年前?


「なんか、人ぜんぜん増えてなくないですか?」


「えぇ、少数精鋭でやっていますからね。うちの部署と拷問部は」


「えーっと、まぁ尋問官が30人くらいで、拷問官が10人くらいでしたっけ?」


「32人と11人ですね」


「惜しい……!」


なんか、ログトさんはフランクな人だな。

というか、人数がかなり少ない。

重要な部署だと思うのだが。

……いや、だからこその少数精鋭なのか?


「母数を減らすことで、部署にとってマイナスな人間をできるだけ特定しやすくしているんですよ」


「まぁ、人の口に戸は立てられぬ。とは言うけど、自らの意思で立てる人だけに絞ってしまえば、情報流出を避けられるんだよ」


「それ、私が聞いてもいいやつなんですか?」


「裏切る度胸が無いでしょう」


ひ、ひどい!


「話がだいぶ逸れましたね、グリゲルの話でした」


「そうだったそうだった。で、ボロボロな理由だよね」


「は、はい」


「彼はさぁ……負傷に無頓着なんだよね。痛みを恐れないから、傷も恐れない」


「なるほど……」


「まぁ、負傷から学ばないから大きな怪我を繰り返すんだよ」


「なるほど…………」


たしかに、勉強はできるけどバカな私とは違って、勉強もできないだろう。


「あれ、首席じゃなかった?」


「いえ、首席じゃないです。準々首席くらいです。なんでかって、勉強はできるんですよ。そのせいで試験で点を取りすぎたんです」


「わかんねぇ……バカなの?それ」


「プラマイで、勉強以外の要素でマイナスに行き過ぎた感じですかね」


「大変だねぇ……」


腕を組み、俯きながらそう言うログトさん。

大変ではないけど、訂正するほどのことでもないか。


「さ、もうそろそろお願いします」


「あーそうでした、パパっと入れちゃいましょうか、神経」


会話が切れたタイミングを狙い、ヴィルヘルムさんが治療を勧める。


「さてさて、負傷は……あぁーなるほど、なかなかですね」


グリゲルさんの身体を舐め回すように見るログトさん。

あまり、ガチ負傷を見たことは無かったのだけれど、やはりこれは酷いらしい。

いや、負傷した状態は見ていないよね?

神経が抜けている部分だけでわかるものなのか。


「体内から固形化無属性魔力の残滓の反応があるんだけど、さっきの耳栓やった?」


固形化した魔力は、それだとわかるようなものなのか?

あと、反応って何?探知機でも付けているのか?


「彼女、あれを大きくして止血していたんですよ」


「天才じゃないですか」


「え、そうなんですか?」


「天才は正直盛ったけと、凄くはあるよ。維持が出来ないんだわ」


「出して終わりってわけにはいかないんですか?」


「いくもんなの?」


いくもんだと思っていた。

多分……やり方が違うんだろうな。

どうやら一家直伝らしいし。


「できるんなら楽なんだけど、いまいち形状の固定と長時間の維持ができないんだよね。」


「今度私のやり方を教えますよ。そのときに疲労回復魔法を教えてください」


「じゃ、今度よろしく。今は治療しちゃうわ」


そういってグリゲルさんに向かうログトさん。

またブツブツ言ってる。


急にブツブツが止まる。

何かと思ったら、右手でグリゲルさんの顔を、左手でグリゲルさんの頭を鷲掴みにした。


「あれは?」


小声で、ヴィルヘルムさんに聞いてみる。


「睡眠魔法ですよ。いや、正直彼のは昏睡魔法ですね、本人は認めませんが」


「ちなみにどういった……」


「対象者を気絶させます」


「おぉ…………」


恐怖で声が漏れた瞬間、ログトさんの両手が黒く発光した。


「黒魔術では?」


「一家直伝の改造魔法です。代々治療術師を生み出しているんですよ」


「へぇ〜」


あ、発光が終わった。

なんか、グリゲルさんの表情が無くなった。怖い。


「じゃ、治療に移ります。」


右手で腹を、左手で心臓のあたりに手のひらを当てる。

そして、ブツブツ言い始める。

この人の使う魔法はブツブツ言うやつが多いな。


「本当は無詠唱でもできるんですが、唱えたほうが分かりやすいそうで。だから、口の中で反芻するレベルに留めるらしいんですが、声が大きいですからね。聞こえちゃうんですよ」


「お茶目ですね」


「まぁ……そうなんですかね……」


言っておいてなんだが、お茶目っていうのは違うか?


とかふざけてたら、両手が金色に光る。

さっきは感じなかったけど、大きい魔力の流れを感じる。

左手から右手へ、ログトさんの全身を通過して魔力が流れる。


なんか……すごいものを見ている気がする。

多分、私程度が見ていいものじゃないよ。


「ま、同僚ですからね。あと、ログトのこれは平常運転ですよ」


「……良いとこ来ちゃいましたね」


「確かに、メンバーの質は王族の護衛部レベルですね」


ヴィルヘルムさんは聖騎士から降りてきたって書類で見たし、ログトさんは凄い療者だ。フィオナさんは、凄い簡単に無詠唱を使うし、グリゲルさんは……異常に脚が速い、いやかなり強いと思う。魔力の感じが同年代の皆とは格が違う。


ヴォルフガングは私が絶対になんとかしたいから、多分この部署を抜けることにはなると思う。それでも、今はまだ抜けるべき時じゃない。

多分、尋問部に入らなかったらここまで良い経験を積めはしないと思う。まだ2日目だけどね

いや、ヴォルフガングに会ってなかったか。

ともかく、幸運だった。

聖騎士にならず、逆張りで尋問部を選んでよかった。


「色んなことを学んでいきますね」


ヴィルヘルムさんは、優しい笑顔で頷き、私の目を見る。


「えぇ、貴女もいつかは旅立って行くのだと思います。ですがそれまで、色々なことを学び、色々なことを吸収して、部署で一番強くなってください」


「まぁ……どこでヴォルフガング関連のことを知られたのかわかりませんが、強くなりますよ」


「やはりヴォルフガングでしたか。いや、若者の進歩というのは目を見ればわかるものなんですよ。」


いつか参考にしてください。と続けるヴィルヘルムさん。

信頼できる人だと思う。

彼が私を信用しているから、そう思わされる。

不思議な人だ。


良い上司を持ったなぁ……


「あ、水差すようで悪いんですが、治療終わりました」


「あ、そうでしたか。ありがとうございます」


「いえいえ」


当然だ。とばかりに首を振り、そう答えるログトさん。


「では……私はフィオナさんを呼んできますよ。貴方達は……あ、フォルトさんは無属性魔力について教えてみては?」


「10分はかかりますよ。ログトさんと他のこと話して待ってますね」


「あぁ、よかった。私も無属性魔力のこと、知りたかったんですよ」


微笑んだヴィルヘルムさんが、尋問室側に向かっていく。


「良い人ですよね」


私が、ログトさんにそう言ってみる。


「ねー。上司のときと、幼学校の教頭先生みたいなときがある」


「あ、もしかしてシルヴァ先生ですか?」


「同じとこだったかぁ」


存外、話題はあるものだと思う。

幼学校時代の話をして、ヴィルヘルムさんと、他の方を待った。

明日から一ヶ月くらい結構予定が詰まってて忙しいので、一時的に不定期投稿とさせていただきます。

一応、七割以上書き上がってきたら活動報告を書きますね

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