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仮設風向計/詩集その3

穀雨の海

作者: 浅黄悠
掲載日:2024/04/11

海を霧雨が包む領域

波は濁った鏡


黄昏迫る刻だろうか

落枝を踏み潮の引いた磯を渡る

私は歌声が響き渡る岸へ歩いて行って

老木の下に座りこみ素足を投げ出す


花の香も新芽と岩の匂いもしない

潮の匂いでさえ雨の幕に溶ける


この場所での霧と曇天は長く続くと

羽繕いするカモメが教えてくれた

それなら、一緒に歌を聞いていく?

いや、遠慮するね

やっと昼寝にいい天気になったってもんだ

仲間もいるし、少しここらの様子を見に来ただけさ

それじゃまた会おう


やがて雨は温かい霙へと変わり

水平線が掻き消されていく

瞼の裏が白く染まり

カモメが去った岸辺には歌声以外何の気配もなく

霧に守られて緑が生まれる


誰の歌声かずっと考えていた

既に出会った人かこれから出会う存在か

私自身か私以外の全員か貴方一人だけのものか

誰のためのものでもないということだけが分かる

灯台の代わりの燈火を私はずっと注視している


温かい


平穏が束の間だと思っていたのも遥か遠い昔

全て忘れていく

ユーザーページリニューアル後初めての投稿なので仕組みがまだよく分かっていません。上手くいっていればいいのですが。

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