人妻と寝たらカルトだった【1000文字未満】
「ねぇ知ってる? 世界には善なる神様と悪魔がいて、お互いに電磁波で攻撃しあっているんですって。悪魔の電磁波に当たらないよう、善なるアルミホイルをターバンにするべきよ」
この女は何を言っているんだ。マッチングアプリでセフレ探しをした結果人妻と会うことになって驚いたが、そいつが変なの信仰しているんだからより驚いた。ここまでひどいピロートークも珍しいのではないか。
正直もう関わりになりたくないのでさっさと着替えて帰らせていただきたい。だが彼女の足がオレの足を巧妙に絡みとって話さない。
「ねぇ、電磁波教に入信しない? 夫は信じてくれないの。きっと悪魔電磁波攻撃に屈してしまったのね。かわいそうに」
確かに夫さんはかわいそうだ。妻がこんなんじゃあね。
「まぁそうだね。ともかくオレは帰らせてもらうよ。その件については家に帰って慎重に検討するよ」
「駄目よ、この話は悪魔に聞かれているわ。電磁波が来るのよ」
聞いていられないので足を振り払い着替えて家を出る。老朽化したマンションの階段を降りようとして、丸メガネのハゲ男とばったり出会った。部屋から出たのも見られているだろう。
「キミ、どうして私の家から出てきたんだい?」
しまった、夫だ。
「……あぁそうか。なるほど彼女はキミを選んだのだね!」
「はぁ。いや、その」
「いやー参ったなー最近夫婦仲が冷えてしまっていたがこういうことだったかウンウン」
「待ってください、勘違いで」
「いや勘違いではない!」ハゲ男は嬉々として語りだす。「不倫とはいえ真実の愛なんだろうキミ? そうなんだろうしそれ以外にありえない。彼女と駆け落ちされるのかいや仕方ない」
こいつ、オレにあの女を押し付けようとしている。カルトっぷりが手に負えなくなったのだ。
「いやオレは畜生ですよ」卑下を初めて評価を下げる。「これはひと時でして」
「ムハハしまったなぁ私は争いが苦手なんだ。これは泣き寝入りするしかないぞこれは。ちょうど別に部屋を借りていたんだそっちに行くよワハハ」
「あ、待てこら!」
ハゲ男はそのまま駆けだした。追ってやろうとすると、
「あの人はもう駄目よ」
カルト女の手が肩に乗る。
「さぁ、アルミホイル、巻こ?」
オレが仕事から帰ってくると、部屋から男が出てきた。妻と寝ていたに違いない。
これであのカルト女を押し付けられるぞ。




