転生図書館その9
館内はお静かに。
「さもないと存在を消滅する」
by 司書
さて気を取り直して…
魔法スキルは、無理をすれば全属性も夢じゃない事がわかった。
もちろんあちこち足りない事だらけで、幾つかは諦める選択もありだろう。
「最高ランクが3なのもちょっとな」
ランク3の魔法が使えれば、あちらではベテラン魔道士と認識されるらしい。
言い換えれば、ベテラン止まりでもある。
ランク4が使えて凄腕、ランク5が使えるなら二つ名持ちである。
ランク6以上は宮廷魔導師か魔導ギルドの幹部ぐらいしか使い手が居ないと認識されている。
「せめてランク5は使えないと、魔導師は名乗り辛いのか…」
自分は凄腕止まりなのに、弟子が二つ名持ちとか、肩身が狭い気がする。
これが自分も二つ名持ちで、その弟子が天才で、ランク6まで習得したなら、出藍の誉れということで師匠の威厳も保たれるというもの。
冒険者で言えば、ランクCの面倒見の良いおっさんが基本を仕込んだ新人が、ランクBになるのと、ランクAが見出した新人がランクSになるぐらいの違いがある。
「へへっ、この短期間でランクを抜かされるとは思わなかったぜ」 と言うおっさんになるか。
「お前の才能は俺が見出したんだ。胸を張ってSランクを名乗れ」 という渋おじになるかの違いがある。
とは言え、師匠役が引き籠もりなので、
「俺がお前に教えられることはもう無い。王城に出向いて、その力を見せてこい」
(いやまったく、教えてもいないランク6魔法が使えるようになるとか、こいつ勇者か賢者かもな)
「だが忘れるな。お前は俺の唯ひとりの弟子だということを。」
(一人なのは俺の転生デメリットのせいだけどな)
「迷ったり、悩んだり、見失ったときには、ここへ戻ってこい!」
(都会に疲れたら骨休めに帰省しても良いぞ。お土産も忘れずにな)
的な、「建前」と(本音)を使い分けた贈る言葉になる予感がする。
まあ、才能のある弟子がとれると決まっているわけでもなし、杞憂に終わるならそれで良い。
話を元に戻すと、やはり幾つかの魔法はランク5が欲しいということだ。
『ニートマジシャン』でボーナスが多いのは、元素魔法と高位精霊魔法だ。そのままでランク5に届く。
逆に古代魔法と神霊魔法は、ポイントを25以上注ぎ込まないとランク5に届かない。
ハイエルフとしては光魔法と樹魔法は欲しい。
ニートとしては闇魔法と空間魔法が欲しい。
その上で、水魔法と土魔法と神聖魔法が高いと嬉しい。
水魔法は、飲料水の確保から始まって、水中呼吸、そして山火事対策と幅広く活躍してくれそうである。
土魔法は元素魔法最強の物理攻撃力と防御力が魅力的だ。
さらに居住環境を整えるのに役立ってくれそうである。(これは樹と空間が高ければ代用できることが後に判明する)
どちらにしろ、樹魔法を習得するのに、水と土はランク3まで上げる必要がある。
元素魔法から2つ選ぶとしたなら、この2つであろう。
全部じゃんと言うなかれ。これでも半分に絞っているのだ。
「本心を言えば、氷と雷と召喚も覚えておきたいんだが」
氷魔法は、火炎系の魔物に対する特攻である。それ以外にも、生肉の貯蔵や夏場の室温低下に役立つこと間違いない。
ただし後半は空間魔法がランク3あれば解決しそうなので、よしとする。
雷魔法は、耐性を持っている魔物が少ないので、安定したダメージソースとして活用できる。さらに追加で「麻痺」の効果や、感電による範囲拡大も見込める優秀な攻撃系魔法だ。
問題は前提条件に火魔法と風魔法ともにランク3以上必要なことで、そんなに攻撃魔法の種類はいらないということだ。
ダンジョンに潜って、多種多様な敵と戦うならいざ知らず、森からでないのが前提なら、土魔法(物理)と光魔法(浄化)でなんとかなる気がする。
「森の中で火や雷は使いづらいだろうしな」
火の用心、アロー1本、火事の元。
ポイントはあるのだから、全部取得すれば良いじゃないかという意見もあるだろうが、スキルは魔法を選んで終わりではない。
まずは 『知識系』
代表的なものでも
動物、植物、鉱物、魔法、古代、宗教、世界、紋章、ダンジョンなどがある。
さらに特殊な分類として、
法律、医学、薬学、建築、軍事、図書などがある。
(地理知識は世界に、魔物知識はダンジョンに含まれる)
この中で『ニートハイエルフ』に必要な知識は、
魔法、古代、宗教が必須で、植物、世界が選択教科、もといスキルである。
そのどれもが対応する魔法ランクの上限となるため、高いに越したことは無い。
それでも優先度はあって、魔法知識は可能ならランク7を、古代と宗教はランク6を目指したい。
「無理なんだけどね」
植物と世界はランク5あれば良い。
本当なら引き篭もりに世界知識なんて、猫に小判なのだけれど、召喚魔法に必要だから仕方ない。
これでも紋章とダンジョンは泣く泣く切り捨てたのだ。
「契約魔法と魔物の知識は捨てるには惜しいんだが…」
さらに悩ましいのが、『魔法補助スキル』の存在である。
魔法スキルを効率的に扱うために必要なこれらのスキルは、使用可能な魔法全てに影響を及ぼせるために、習得して損はない。
「損は無い所か、無いと魔導師として詰むんですけど…」
無くても魔法は使える。でもあったら魔法を使いこなせる。
それが『魔法補助スキル』である。
『魔力増強』
一見すると、魔力が増えるのか、魔法を強化するのかわからないスキルだ。
答えは「両方」である。
ランク1で20%、ランク2で50%、ランク3で100%相当のMPが増加する。
さらに魔力増強ランク以下の魔法を、コストを2倍にすることで威力を1・5倍にできる。
ランクが2つ以上低い魔法なら、コストを3倍にして威力を2倍にできる。
「ぶっ壊れスキルだな…」
これがカードなら発売即禁止である。
『魔力操作』
こちらは、スキルの効果は明白である。
しかし出来ることは、『魔力増強』と同じくらいエグい。
魔力操作ランク以下の魔法を、コストを変えずに形状変化・範囲拡大縮小できる。
さらにランクが2つ以上低ければ、コストを変えずに効果時間又は効果対象を2倍にできる。
これも殿堂入り決定カードである。
『詠唱短縮』
これは一見すると、あれば便利程度のスキルに思える。
その実態は、上二つと同じぐらいの強スキルであるが。
詠唱短縮ランク以下の魔法を、短縮詠唱で唱えることができる。
さらにランクが2つ以上低ければ、無詠唱で発動できる。
「ここまでは、まだ良い」
付け加えてランクが4つ以上低ければ、瞬間発動できる。
「いやいや、壊れ過ぎだろう…」
この意味は、詠唱短縮がランク5あれば、全てのランク1魔法を速攻又は差込で発動できるということである。
この効果は対人戦闘で最も発揮されると考えられ、敵の出鼻を挫く事から始まって、奇襲に対する差込攻撃や、ミリ残ったHPへの止めの一撃など、獅子奮迅の活躍をするに違いない。
「ランク5以上は確定だな」
ランク4とランク5で、出来ることが違い過ぎる。
「4凸と5凸で能力が違い過ぎるサーヴァントみたいなものか…」
だとしたら、ポイントを払うだけで5凸が確定できるだけマシである。
いや本当に。