転生図書館その6
いつもより長めです。途中から主人公のつぶやき以外の「 」がでてきますが、フレーバーテキストだと思ってください。
さて次は社会的地位の項目だ。
普通、クラス無しのスキル選択制のRPGなら、キャラクタークリエイトは、種族、能力値、スキルの流れだが、転生の書はかなり違う。
これは職業や社会的地位で、スキルと能力値に大幅な修正が入るので、それらを決めておいた方が問題が少ないからだと思う。
少ないだけで、やはり難点はあるわけで、種族を決めようとしたら許諾認証が出てきた。
『この種族には知識系のスキルボーナスが含まれます。選択すると取り消しは出来ませんが、よろしいですか?』
同じく職業でも。
『この職業には知識系のスキルボーナスが含まれて…』
なので一旦、いいえを選択して考慮中・・・
「まあ、後から齟齬が出てこない限り、この種族と職業で行くとして、スキルまでは素案を作っておかないと決まらない感じだな、これは」
絶対、ポイントは足りなくなる。
これは確定で、あとはどれだけ削ぎ落せるかだ。
種族と職業のコストは、デメリットをめいっぱい取れば(0)には出来る。それでもそこまでしても、200ポイントの壁は越えられないのだ。
「なにせ5ポイントあれば、スキルが一つ覚えられるわけだから」
最低のランク1だとしても、能動系のスキルなら自己鍛錬でランクアップが見込める。
あちらにも、料金を払えばスキルを訓練してくれる施設はあるらしい。特に魔法や生産技能は、0を1にするより、1を2にする方が、ずっと簡単なようだ。
スキルを選択し終わった時に、装備と能力値に割り振るポイントが、果たして残っているのか……
まあ、今悩んでも仕方ない。まずは社会的地位の項目を見ていこう。
『社会的地位』
読んで字の如く、社会(主に人族)の中での立ち位置である。
職業と混同し易いし、実際に呼び名が重複しているものもある。なのでざっと上から下まで目を通してみる。
そして驚く
「壁、越えられるんだ……」
□ 邪神教徒(△50) 魅力-3 扇動+1、洗脳+1
悪魔の類を信仰する犯罪集団。ほぼ誘拐、放火、殺人の前科持ちらしい。見つかると問答無用で火炙りの刑に処せられる。
こんなの選ぶ奴がいるのか?と思うが、魅力が3下がるだけで50ポイントのボーナスがもらえるのだ。
もちろん身バレしたらそこで終了だけれども。
まあ、社会の最底辺が奴隷ではないという示唆なのだろう。
□ 犯罪者(△40) 魅力-2 潜伏+1、逃亡+1
重犯罪を犯してなお、罪を償っていない者。いわゆる指名手配犯だが、諸国を繋ぐ防犯ネットワークがないので、国境を越えられると捕縛が難しい。
国内で発見されれば、即、逮捕である。懸賞金が掛かっている。
山賊や海賊もこの範疇に入る。義賊は別扱いらしい(民衆からみて)。
「山賊王に俺はなる!」
と、どこぞの麦藁帽子を真似ても、さくっと上級冒険者の賞金稼ぎが現れて捕縛されるのが運命。
ちなみに懸賞金は 『デッド オア アライブ(生死不問)』 である。
□ 逃亡奴隷(△30) 魅力-2 苦痛耐性+1、逃亡+1
奴隷契約で縛られたまま、所有者から逃げ出した存在。見つかると捕縛されて連れ戻される。捕まえた者には謝礼金が出る。
善意の村人から積極的に通報又は狩られない存在としては30ポイントは美味しい。ただし庇ってくれる人もいない。謝礼金が高額なら、密告する者も出てくる。
「あなた誰?すぐにこの家から出ていかないと人を呼ぶわよ」
「待ってくれ、俺は怪しい者じゃない。少しだけ話を聞いてくれ!」
「足首に鉄の輪と鎖を引きずった泥まみれの男が怪しくなかったら、この世に怪しい者なんていないわよね?」
みたいな展開が希望ならありかもしれない。俺は御免だけど。
□ 流民(△20) 魅力-1 世界知識+1、楽器演奏+1
放浪の民。定住せず(できなくて)馬車や徒歩で世界中を移動する集団。
犯罪を犯していなければ無視されるだけだが、街の施設などは利用できない。こちらで言うとジプシーやロアの民に近いが、それよりも禁忌に近い者達として扱われている。
「お母さん、あの人たちだあれ?」
「見ちゃダメよ。目があったら遠いどこかへ連れ去られてしまうからね」
親は子供には流民と関わる事を厳しく禁じている。それは彼らの生活が、村から出たことのない子供には魅力的に映るからである。
しかし現実は甘くない…
□ 奴隷(△15) 魅力-1 苦痛耐性+1、毒耐性+1
奴隷契約に縛られて労働している者。所有者の財産扱いなので、無闇に傷つけられることはない。
ただし、街の施設の使用には制限がかかる。
所有者の社会的地位で変動するが、およそこのランクである。
所有者が同行しているか、依頼書を持参しないと、ほとんどの施設には入れない。
15ポイントは魅力的だが、所有者ガチャに外れると酷い目にあう。
ツンデレ魔女の壁役で活躍できる可能性もあるが…
「アタシが許可するまで、死んだら許さないんだからね!」
□ スラム民(△10) 魅力-1 毒耐性+1、病気耐性+1
スラムに不法滞在している者。人頭税を納めていないので、領主からの保護を受けられない。街の施設も使えない。
魅力が下がるだけで、10ポイントボーナスと有益な耐性が2つもらえる。ここら辺から選択肢に入れても良いかもしれない。
毒耐性があるのは、腐りかけのものを食べて、何度も腹を壊したから。
病気耐性があるのは、何度も感染したから。
耐性を得られなかった者は、もういない…
□ 異邦人(△5) 能力修整なし 外国語会話+1
言語が違う大陸からの訪問者。対応に困るので、扱いがぞんざい。
外国語会話スキルは、あちらの世界で、共通語が使われていない文化圏を一つ選択する。どこがあるのかは、世界知識が足りなくて今はわからない。
「オー、ワタシ アナタノ コトバ ワカリマセン。」
□ 村人(0) 能力値修整なし スキルボーナスなし
ここが基準点。始まりの村の村人である
村長の許可を得て村に居住している。村毎に定められた税を払うか(主に収穫物で)、労働力を提供しないと村から追い出される。
「自立して働け!さもないと犬小屋で飼うぞ!!」
□ 市民(5) 能力値修整なし スキルボーナスなし
街に戸籍がある。人頭税を払っていれば領主からの保護が受けられる。街の施設が使える。
戸籍は教会が管理している。それは赤ん坊が誕生したときに、神から祝福を授かるためである。
多神教の場合でも、それを担当する神(運命神か大地母神)の神殿に登録する。
なお、加護やスキル、魔法属性を水晶でチェックする様な儀式は行われない。
「加護は月と魔法の女神、スキルは魔法全属性の才能です!」
「よっしゃあ!チートボーナスきたーーー」
「よし、転生者確定だ、魔封じの首輪をかけて王城の牢に入れておけ」
「おいおい、なにすんだよ、オレはこれから無双してハーレムなんだぞ、邪魔するな!!」
「はいはい、これで今月5人目だよ。地道に暮らしている人々の迷惑になるから、大人しくしててね」
「おい!よせ!この首輪外れないぞ!!」
「はいはい」
□ 商人・兵士・職人(10) 関連する能力値に+1(ただし上限は14) 関連するスキルに+1(上限ランク3)
市民の中でも技能職についている者。
ちなみに冒険者は職業であって、社会的地位ではない。村人の冒険者もいれば貴族の冒険者もいる。
関連する能力値とは、商人なら知力・精神力・魅力のどれか。兵士なら筋力・体力・敏捷力のどれか。職人なら敏捷力・知力・精神力のどれかである。
関連するスキルとは、商売・戦闘・生産にそれぞれ関わるスキルを指す。
上限があるのは、このランクで身につけられる能力や技能に限界があるからである。
□ 役人・交易商・両替商・(15) 知力+1 魅力+1 交渉+1 紋章知識+1
中級市民。市民より優遇され、上級市民よりは冷遇される存在。
□ 職人親方(15) 敏捷性+1 魅力+1 交渉+1、好きなスキルに+1(上限ランク4)
多数の弟子を抱えている職人の親方。そこいらの役人よりも人望が高い。
「大変だ、大変だ!」
「落ち着け、ジャック。いったい何があった?」
「あ、親方!聞いてくださいよ。うちに居候してる貧乏貴族の三男坊が、やらかしちまったんで!」
「なんだと、シンさんがか?」
「へい、男爵の代官野郎に連れてかれたんで」
「よしわかった。お前は若い連中に声かけて集めろ」
「へい!それで親方は?」
「俺か?俺はお城に行ってくる」
「へっ?」
代官と男爵のその後を知っている者はいない。
□ 村長(15) 精神力+1 魅力+1 交渉+1 統率+1
村の代表であり、徴税権(といっても収穫物の物納)、司法権、行政権を握っている。
領主から任命されているので、中級市民扱いでもある。
「万能農具と健康な肉体がもらえるなら、ありだな」
□ 貿易商・司祭長・ギルド長(20) 知力+1、精神力+1、魅力+1 交渉+1、紋章知識+1、世界知識+1
上級市民。貴族を除けば社会のトップ。市長を代行することもある。
□ 騎士爵(25) 筋力+1、精神力+1、魅力+1 礼儀作法+1、 紋章知識+1、好きなスキル+1(上限ランク4)
最下級貴族。平民から叙爵されることも多い。領地はなく、国から俸給を貰える。 地方の小都市の市長に任命されることも多い。
□ 男爵(30) 知力+1、精神力+1、魅力+1 礼儀作法+1、紋章知識+1、権謀術数+1、ごますり+1
下級貴族。継承貴族位であるが、些細な失敗で剥奪されることも多い。地方の都市とその周辺の村落を領地として治めている事が多い。中都市の市長に任命されることもある。
「わっはっはっは、見ろ、民衆が蟻の様だ!」
「ほい、成敗!」
「ぎゃーーーー」
「これで3人目か、次の悪徳男爵はっと…」
□ 子爵(35) 知力+1、精神力+1、魅力+2 礼儀作法+1、紋章知識+1、権謀術数+1、ごますり+2
中級貴族。それなりの血脈を繋げている。地方の都市を3つとその周辺の村落、砦を領地として治めている事が多い。王都で官僚のトップに就任している事もある。
伯爵や侯爵の取り巻きをしている事が多い。
「モルガン子爵よ、伯爵の言っている事は間違いないのかね?」
「はっは、それはその、(やべ、伯爵様睨んでるよ)、ええ、そ、そうです。間違い、あり、あり、ありません!」
「「「 いやいや、どう見ても嘘だろう 」」」
□ 伯爵(40) 知力+2、精神力+1、魅力+2 礼儀作法+1、紋章知識+2、権謀術数+1、威圧+1、説得+1
中級貴族。良血を繋いでいる。中都市1つ、衛星都市3つ、周辺全域を治めている事が多い。
王都で副大臣クラスの職務についている事もある。
悪役令嬢になって王子から婚約破棄されるなら、ここ。
「伯爵令嬢エリザベス、私は本日をもって貴様との婚約を破棄する!」
ざわざわ ざわざわ
「ふっw、フィリップ王子様、理由をお聞きしてもよろしいですか?」
「それはお前が、転生者だとかいう妄想を垂れ流しにするからだ!」
「「「 それな!」」」
後日、婚約は無事に破棄された。
□ 侯爵(45) 知力+2、精神力+2、魅力+2 礼儀作法+2、紋章知識+2、権謀術数+2、威圧+2
上級貴族。薄まってはいるが、王家の血を繋げている。国の一部を治めている。大抵は、大臣の職務についている。
王家の血が途絶えかけたとき、政争の主役に躍り出る。
「我がアン侯爵家は、祖母が先代の国王の従姉妹で」
「それなら我がドゥ侯爵家は、祖父が先々代の甥にあたり」
「なにお言うか、我がトロア侯爵家こそ3人もの第一王妃を輩出した」
「あのーー、うちは直系の公爵家なんですけど……」
「「「 お飾りは黙っていろ!! 」」」
□ 公爵(50) 知力+2、精神力+2、魅力+3 礼儀作法+2、紋章知識+2、権謀術数+2、威圧+2、統治+1、
最上級貴族。王家の血筋であり、いざという時の継承要員。
「公爵令嬢ヘカテリーナ、私は本日をもって貴様との婚約を破棄する!」
ざわざわ ざわざわ
「レオン王子様、それは何のお戯れでしょうか?」
「戯れではない!貴様は私の最愛のミーシャを、嫉妬から嫌がらせをして泣かせていただろう!そんな陰険な女と結婚する気はない!!」
ざわざわざわ ざわざわざわ
「それはそうでしょう、ミーシャは男性。王妃になることなどできないのですから」
「「「 なんだってーー 」」」
「男の娘だっていいじゃないかーーー」
「「「 いや、ダメだろう 」」」
なお、王族は□が灰色で選ぶ事が出来なかった。