転生図書館その5
種族はハイエルフに決めた。次は職業選択だ。
次は職業選択かな?
ただしここでいう職業は、RPGのクラス(いわゆる戦士や盗賊)ではなく、本当の職業の事だ。
まあ、剣士とか僧侶とか紛らわしい項目もあるが、基本は日々の収入を何から得ているかを決める事になる。
もちろん職業を選べば定期的に収入が発生するわけではなく、その職業に従事して仕事をしなければ、お金は入らない。
働かざるもの食うべからず
逆を言えば、お金が必要なければ働かなくても良いわけだ!
生活費はどうするのか、って?
もちろん魔法で全部解決する。
魔法で食料出して、魔法で家を建てて、魔法で洗濯・掃除する。
「まさに完璧な自宅警備員だ」
家を辺境の森の中にでも建てれば、誰にも迷惑かからないし、立ち退きの催促もない。
魔物は寄ってくるかも知れないが、そこは結界とか亜空間に期待しよう。
まあ、日用品や嗜好品は、商人から買う必要があるだろうから、それなりの資産か収入源は必要かもな。
錬金術師に期待しよう。
「そう思っていた時期もありました」
つらつらと職業の項目を読み込んでいたら、見つけてしまったのだ。
□ 魔導師 (35) 筋力-1、耐久力-1、知力+1 精神力+1 魅力+1
元素魔法4種類の中から2つ選んで各+1、高位精霊魔法から2つ選んで各+1、古代魔法から1つ選んで+1
魔法知識+1、古代知識+1、その他の知識から1つ選んで+1、魔力増強+1、魔力制御+1、詠唱短縮+1
■鉄の武器は不可(△5) ■鉄部品の鎧不可(△5) □弟子は一人のみ(10)
□金属武器不可(△10) □金属防具不可(△10) □従魔は1体のみ(15)
□武器は杖のみ(△15) □防具はローブのみ(△15) □使い魔は1匹のみ(20)
ハイエルフにぴったりの物件です。
ボーナススキルが、ほぼ重なっているので、合わせれば魔法系が+2ランクできるという優れモノ。
デメリットも、引き篭る分には問題無い…はず。
まあ、魔導師の収入は、弟子の月謝か所属する教育機関の給与なので、そちら方面は期待できないが。
「デメリットに弟子の人数制限があるのは、そういう事なんだろうなぁ」
一人だと食っていけないから覚悟しろと。
しかし他の職業を見ても、魔導師からは1枚も2枚も落ちる。
例えば正統な魔術系の職業は、見習い魔術師(10)から始まって、魔術師(20)、魔道士(25)、魔導師(35)ときて、宮廷魔導師(45)、大魔導師(50)が最大だ。
もちろんコストが高いほうが、スキルボーナスの数は多い。
しかし大魔導師は条件に達していないのか、選択できなかった(□が灰色で反応しない)。
逆に宮廷魔導師は、礼儀作法+1とか権謀術数+1など必要ないスキルがコストを増加させている。
さらにデメリットには、『部下が使えない(10)』だの『同僚が逆恨みしてくる(20)』などの項目が並んでいたので、できれば遠慮したい。
「何が悲しくて、転生してまで出世競争をしなければならないのか」
エリート官僚への道は、どの世界でも厳しいってことだ。
魔道士以下の職業は、魔導師の劣化版なのでポイントがあるなら選ぶ必要はない。
というかデメリットを甘受すれば、ポイントさえ必要ない。
それ以外の傍系魔術職だと、
普通に冒険者(15)、ちょっと変わって占星術師(20)、あると思った錬金術師(25)、これは予想外な退魔師(30)、地味に強い祈祷師(35)などがあった。
心惹かれる職業もあったが、使いそうにないスキルボーナスがあったり、デメリットが厳しすぎるだったりして、選ぶのは躊躇する。
ちなみに気になったのはこれ。
□ 占星術師(20) 筋力-1、体力-1、知力+1、精神力+1、魅力+1
光魔法+1、闇魔法+1、魔法知識+1、世界知識+1、古代知識+1、宗教知識+1
占星術+1、読心術+1
■戦闘は避ける(△5) ■水晶球は必需(△5) □素顔は秘密(△5)
□流血沙汰は禁止(△10) □可動式天幕を常備(△10)□名前も秘匿(△10)
□無抵抗主義(△15) □財産は必携(△15) □住所不定(△15)
スキルボーナスは中々だが、数が物足りない。
あと営業用なのか読心術があるのもどうか…まあ、占いの精度が収入に直結するから、保険としては必要なんだろうけど…
「街の裏通りで、酔客に声を掛けている光景が目に浮かぶようだ」
『そこの貴方、何か悩み事がありそうですね。お時間があるのなら、少し話していかれませんか?』
初回限定サービスとか友人紹介キャンペーンとかやったら顧客が増えそうな気もする。
さらにこれ。
□ 錬金術師(25) 筋力-1、知力+1、精神力+1
火魔法+1、土魔法+1、氷魔法+1、雷魔法+1、魔法知識+1、鉱物知識+1、世界知識+1、
錬金術+1、調薬+1、医術+1
■防具は使わない(△5) ■住居は地下室(△5) □ポーションは試験管入り(△5)
□武器は使わない(△10) □ベッドはソファか床に毛布(△10)□そして食器はビーカー(△10)
□武具は使わない(△15) □使用人はホムンクルスのみ(△15) □さらにカップはフラスコ(△15)
スキルボーナスは優秀で、内職のネタには困らなさそう。
高位精霊魔法である氷と雷にボーナスがあるのが良い。
錬金術師というと、魔法は使わないイメージ(又は錬金魔法の使い手)があったが、あちらでは普通に使う(もしくは錬金に役立てる)タイプのようだ。
薬師や医者としても営業できそうなのも魅力的だ。
「でもデメリットがなぁ」
武具の制限は問題ない。
どうせ種族でも制限があるわけで、いっそ魔法のみと割り切ってしまえば、ボーナスみたいなものだ。
しかし他はどうだろうか。
「まるで理系の学院生か、ブラックな企業戦士だな」
そんなに錬金の作業が過酷なんだろうか。
それとも変人か怠惰な生活者しか錬金術には手を出さないのか。
机の上には、袋麺の茹でられたビーカーとティーパッグの入ったフラスコ。2徹明けで床に寝ていたら、ルンバに小突かれて起き出す情景が目に浮かぶようである。
「健康的で文化的な引き篭もりを目指すなら、錬金術師はやめておこう」
そう心に誓った。