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転生図書館その3

種族を決めよう

 転生の書の序文を読み終えた俺は、次のページをめくった。


『種族について』


最初の項目は種族の選択らしい。

一番上に  □ 人族 (0) 任意の能力値に+1、任意のスキル2つに+1 の表示がある。

その後も、ファンタジーでお馴染みのドワーフやエルフなどの項目に続き、獣人、竜人、魚人、鳥人と、多彩な選択肢が並んでいた。


 人族以外は基本的に(5)~(50)のポイントが必要で、デメリットのチェック欄が付いている。

 能力値修整はプラスとマイナスがあり、トータルで+1になるようにバランスがとられている。

 スキルは千差万別で、合計で15以上のプラスがある種族もあるが、その分必要なポイントが高くデメリットも厳しい。

 職業や社会的地位、装備などはデメリット欄以外では表記が無く、自由に選択できるようだ。


「この感じだと、縛りが嫌なら人族を選び、スキルが欲しいなら亜人か獣人を選ぶのがよさそうだな」


たとえばドワーフを例にとると。


 □ ドワーフ (20) 筋力+1 体力+2 敏捷力-1 知力-1 精神力+1 魅力-1

 斧術又は鎚術+1 火魔法+1 鉱物知識+2 ダンジョン知識+1 鍛冶+2 掘削+1

 暗視+1 毒耐性+1

 ■酒好き (△5) □頑固 (△5) ■ゴブリン嫌い(△5) □金属武器のみ(5)

 □悪酒癖 (△10) □偏屈 (△10) □ゴブリン憎悪(△10) □金属防具のみ(10)

 □酒中毒 (△15) □妄執 (△15) □殺ゴブリン鬼(△15) □金属武具のみ(15)


 となっている。


 デメリット欄は、酒好き、ゴブリン嫌いの各欄に既にチェックが入っている。どうやらドワーフの評価は元は(30)で、現状で△10のデメリットを含めての(20)なようだ。

 デメリット欄は、類似した項目は重複して選択はできず、必要ポイントを(0)より下げる選択もできなかった。


 「まあ、単純計算でもスキルボーナス+10もらえてコストが(20)なら十分か」


 人族でも+2ボーナスがあって、ドワーフはボーナススキルが固定である事を考慮しても、かなりコストパフォーマンスが良さそうである。

 デメリットは、RPGのフレーバーと違って現実のデメリットだろうから、なんらかの強制力は働くと思える。


 「あまり過激なデメリットを選ぶと、まともな生活が送れなくなる可能性もあるな」


酒中毒とか殺ゴブリン鬼とか、地雷臭がプンプンする。


 「けど、能力値の修整といっても初期値がわからないと判断しづらいな…」


そう思ったとき、転生の書がひとりでにパラパラとめくれ始めて、あるページを開いた。


 『初期ステータス』


森本幹夫の初期ステータス

筋力12 耐久力12 敏捷力13 知力15 精神力12 魅力13

HP17 MP21 攻撃力12 防御力12 魔法攻撃力15 魔法防御力12

動物知識3 植物知識3 鉱物知識3 

算術4 教育4 錬金術3


「おお、これはありがたい。というか前世のスキルが持ち越せるのか」


能力値を見ると、平均値が13ぐらいで、筋力、耐久力、が少し低い(筋トレとかしなかったから)。

敏捷力と魅力が普通で、知力は高く(これは知能と教養が同じ扱いなのでこうなっていると思う)、逆に精神力は少し低い(メンタルの弱さの表れかな?)


 HPとMPの計算方式は不明。攻撃力は筋力、防御力は耐久力、魔法攻撃力が知力で、魔法防御力が精神力に対応しているのだと思われる。


 初期スキルは、俺の経歴に基づいているらしく、学習塾で高校生に生物と化学を教えていた関係で、動植物と鉱物の知識がついている。

 つまりこのランクあたりの知識までは異世界でも通用するというわけだ。


 算術はまあ、大卒なら誰でもこのランクなのだろうし、教育は教養学部卒で、教員免許を持っているからだろう。教育実習での、ある出来事で心折れて、教師への道は断念したが、教員免許だけは取得しておいた。

 免許があったことで学習塾の臨時講師募集の面接にも通ったし、こうやって転生時のスキルにも反映されているのだから、あの時、教育課程をリタイアしようとした俺を熱心に引き止めてくれた教授には感謝している。


 謎なのは錬金術のスキルがついていることだ。

 俺の錬金術についての知識は、賢者の石とかホムンクルスとか、パラケルススの自動人形とか止まりで、スキルに関与しそうもない。鉛を金に換えることは出来ないし、練成には代償が必要である。

 ただし、気体も液化する事は可能で、ダイヤモンドも人工的に精製できる事は知ってる。それも錬金術であるというなら納得できる。


 「さて、初期ステータスも判ったし、自分の能力値が術者系か生産系に向いているのも理解した。そろそろ種族を選んでみるかな」


 と、その前にやっておくことがあったな。


俺は転生の書に向かって呟いた。


 「スキルの項目を開け」



 すると思った通りに、パラパラとめくれ、あるページを開いて止まった。


 『スキルについて』


そこには、もの凄い数のスキルが羅列されていた。


 「うーーん、端から読んでいきたいが、流石に数が多すぎる」


ざっとページをめくってみるが、千や2千ではきかない量だ。


 「まずは必要なスキルだけ取得しておくかな…」


俺は知識系のスキルのページを呼び出すと、そこからあるスキルを選び出した。


世界知識 □ランク1(5) □ランク2(10) □ランク3(15)□ランク4(25) 

     □ランク5(35) □ランク6(50) □ランク7(70)


予想通り、スキルランク1にするのに5ポイント必要で、ランク3までは5ポイントずつ上昇、ランク4と5は10ポイントずつで、ランク6には15ポイント、ランク7には20ポイント必要となっていた。


 「つまりランク3までが初級、4・5が中級、6が上級、7が最上級ってことか」


他のスキルを見ても、スキルランクは7が最高のようだ。


俺のカルマポイントは200。

ロマンを求めて人族で極振りしたら、ランク7のスキルが3つ取れる。


剣術7 火魔法7 直感7 で最強魔法剣士とか…


「いやいや、無しだろう」


尖り過ぎていて、生き延びられる気がしない。


「たとえ海を断つ剣技と山を穿つ魔法を知っていたとしても、このHPとMPと装備じゃなぁ」


 それでも英雄や勇者なら、最初に遭遇した山賊を木の枝で倒し、何故か不相応な頭目の装備を回収して強化、アジトに囚われていた公爵令嬢を救出して後ろ盾を得て、異世界転生無双をしていくのだろう。


 だが現実は、原生林で道に迷い、湧き水を飲んでお腹を壊し、肉だけの食事で栄養失調になって遭難するのが落ちである。

 いくら人類最強の直感があっても、体力の限界まで歩いても辿り着けない場所には行けないし、喉が渇ききっていたら悠長に水を沸かしてなどいられない。野生動物を狩ることはできても、塩も果物も都合良くは転がっていないのである。


 「ポイントで上げるならランク3まで、それ以上は種族や職業のボーナスで上げるのが現実的かな…」


そこで、まず世界知識をランク1にしてみた。すると…


『このスキルは取得すると取り消しが出来ません。よろしいですか?』


と表示された。


「なるほど、許諾システムがあるのか」


うっかりミスが発生しなくて助かるな。


□はい  □いいえ


の、はいにチェックを入れると表示がこう変わった。


世界知識 ■ランク1    □ランク2(5) □ランク3(10) □ランク4(20)

     □ランク5(30) □ランク6(45) □ランク(65)


それと同時に、転生先の異世界の情報が頭の中に浮かび上がってきた。


 「ふむふむ、ワールド名は『ミスルガルド』 文明度は中世よりやや低く、封建社会で開拓が盛んか…」


大陸の広さに比べて、人類の生存圏が狭く、未開の辺境を積極的に開拓している最中らしい。

その所為で、国家間の紛争は少ない(国境が接していない)が、魔物による脅威度が高いと。


 人口分布は主要な都市で、人族6割、亜人(エルフ、ドワーフ、ハーフリング)2割、獣人2割ほど。

種族的な差別は少ない(無いとはいえない)が、地位的格差は大きい。貴族の力は強大で、奴隷も認められている。

 冒険者ギルドは存在するが、主に開拓村の守備や周囲の魔物の駆逐が仕事である。

 ダンジョンはあるらしいが、人跡未踏の場所が多く、都市の側にあって魔石や素材の供給地になっているようなことはない。


「ざっと、こんな感じか」


亜人や獣人を選んでも、大丈夫そうだな。ただし社会的地位は慎重に選ばないと、苦労しそうだ。


 「人族で下級貴族出身で、学院の教師にでもなって錬金術で内職するのが楽っていえば楽なんだが」


初期ステータスを十全に生かすなら、それがベストだろう。


「けどなぁ」


せっかくの転生なのに、また前世と同じことするのもなあ…


それと魔法に興味がある。

そして魔法と言えばエルフ。


「エルフで魔法を極めてみるか…」







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