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25 多視点

「陛下・・・やりすぎでは?」

「エリ様が白目剥いてますよ」

「まさか、気を失うとは・・・」

レインベリィは腕の中で白目を剥き、お世辞にも可愛らしいと言えない顔でぐったりしている江里を、愛しそうに見つめる。

「陛下、エリ様をこちらへ。お部屋にお連れします」

スイがレインベリィから江里を受け取ろうとすると、それを拒否するようにぎゅっと抱きしめる。

「陛下・・・・」

呆れを含むルリの言葉に、まるで子供の様にムッとし「目覚めるまで、このままでもいいではないか」と駄々をこねはじめた。

「はぁ・・・エリ様に、嫌われますよ・・・」

ピクリと身体が揺れ、しばし考え込むように、その温もりを名残惜しむようにギュッと抱きしめ、悲しそうにその縛めを緩めた。

かなり呆れた表情のスイは江里を抱き上げると、そのまま彼女の部屋へと向かった。

「・・・・スイは力持ちなんだね・・・」

自分より大きな江里を軽々と持ち上げ、しっかりとした足取りで歩くその後ろ姿は、流石セルティス神に認められただけあると感心してしまう。

「だてにセルティス様たちに鍛えられていませんから」


・・・・セルティス様たち(・・)・・・という事は、エリを加護しているのはセルティス神だけではないという事か・・・


エリの素性は探らないと、ルリ達と約束している。

無理に聞き出そうとは思わない。彼女が『愛し子』だとわかっただけでも十分だから。

でも今はそんな事など関係なく、日を追うごとに彼女に惹かれていく。

始めは、ただ心地よかった。彼女の言葉が、態度がとても好ましかった。

それが『番』からくるものではないことに、どれだけ安堵したか。

その所為か、触れられる度、言葉を交わす度、抱きしめられる度、どうしようもなく心が騒めいていた。

この心地よい騒めきが何なのかは、すぐに分かった。


そこからは自分でも止める事ができないくらい、エリに惹かれていった。


そして、彼女に心を奪われるごとに、傍に居なくては不安で落ち着かない。

これが竜人の性質なのかと、いざ自分がその立場になって初めて理解できた気がした。

どんなものからも彼女を守りたい。

例え彼女の後ろに、神がついているのだとしても。

どうしても、自分が傍で守りたいと思ってしまうのだ。


いつも傍にいるルリ達から言わせれば、エリはとても強いのだと言っていた。

直接、セルティス神から指導を受け、ルリ達同様お墨付きを貰っているようだから。

彼女が生み出す魔道具を見れば、エリが直接手を下さなくても容易に敵を倒せそうだとは思うが。


そして、その魔道具でエリ自身だけではなくルリ達をも守ろうとしている。

自分の腕の中で大人しくしていてくれれば、安心するのに・・・


そこまで考えて、レインベリィは本当に?と、自問自答する。

江里が大人しく傍にいてくれるだけで、満足するのか?

きっと安心はするだろう。でも、彼女が大人しくしているのを想像できない。

十日にも満たない日々ではあるが、精力的に動き回っている彼女しか見ていないから。

レインベリィがいるので結界外には行かないが、結界内に自生している果物を採りに行ったり、耕した畑の世話をしたり。

手が空けばすぐに魔道具を作り始める。

それなのに、いつもレインベリィを気遣ってくれるのだ。

可愛らしくも美しく、優しくて温かくて、好きにならないわけがない。

江里の容姿も、本人は取り立てて良いわけではないと言っているが、神の愛し子なだけあり、美しかった。

日本にいた時も、美しかったことに変わりはない。

ただ、あちらの世界での縁が薄かったため江里自体の存在感も薄く、彼女の本質に気付く人がいなかったのだ。

まれに気付き恋人になった者もいたが、やはり縁を結びきれなかったのだろう。自然と別れる事となる。

だが、本来の世界に途中からとはいえ戻ったという事は、本来あるべき姿の江里になるという事。

神が創った魂だけあり、存在感も人並み以上に発揮される。本人は全く気付いていないが。


彼女を知れば知るほど、触れ合えば触れ合うほど惹かれ、焦るレインベリィ。

その所為からか、レインベリィの過保護が日に日に加速していき、一体どうしたいのかとルリに苦言を呈される事もあった。

―――やりすぎだ、と。

まぁ、当人である江里は全く気付いておらず、ただ甘えられていると思っているようだが。


そして今も、スイが戻ってくるとルリは呆れたように問いかける。


「陛下、何をそんなに焦っているのですか」


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