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8話


よ、ようやく一息できる


そう、ゼノやシェリアもそうだが

俺たちは国境を超えてから

まだ一睡もしてなかったんだ


・・・ッテテテ、

緊張が解けて頭痛、俺も大概引退して正解だった


帰ってゆっくり寝よう



俺は数日の疲れを体現しながら

家の扉を安堵の念とともに開く


「e?」


!!!???


「い、、」


・わいせつ行為

・窃盗

・建造物侵入


よし、通報案件だ。


「、、、プルルル、、カチャ

 あ、当局ですか?、変質者でして・・

 はい、そうです。成人女性、30後半ぐらいの」


「って、ちょ、待って!!」


全裸の成人女性はその素足で

思い切り俺の頭蓋骨を強打する


ドシャン!


壁に貼り付けられる俺の生身


俺が伸びている間

虚な目には彼女はどこから取り出してか

タオルを巻く光景が広がる




「イッテェなぁ〜。通報に決まってるだろ?」


「だ・か・ら

 なんでこんな美人が部屋に上がり込んでるのに

 そんな平然と通報できるわけ?」


「いや、実際物取りとかだったら怖いし」


「やらないわよバカじゃない!!?

 しかも私、まだ人間換算でも28なんですけど!」



俺の適切かつ迅速な対応に

その女は図々しくも不服そうに構えていた


「で?あんた誰、なんでここにいるの?」


〈〈〈〈ガーン!!〉〉〉

崩れ落ちる裸体、


ねぇ、俺さっきから当たり前のことしか言ってなよね?

至って真面目に話してるよね?

顎外すよ?


「ここの家、昔は廃墟みたいな見た目で


 爺さんとおっさんしかいなかったじゃん?

 私も必死だったし

 正直この家の住人も気に食わなかったんだ」


急に何話し始めたコイツ?


「だけど、久しぶりに

 布を剥ぐ奴が現れたと思ったら」


「おい、ちょっと待て

 布の件をもっと詳しく語れよ?」


「あの猫耳の獣人、めちゃめちゃ

 かわいいじゃない!」


は?


「何あの可愛さ反則級よ!?猫耳といい!尻尾といい!

 もう愛くるしくてしょうがないわ!!!」


ーーーーー




「痛い痛い痛い!!

 わ、わかったわごめんなさい!ごめんなさいってば!

 だから、髪を引っ張らないで!!

 引きずらないで!!」


「じゃあお前、

 ここにいる正当な理由を言ってみろ」


「わ。私は三十年も前からこの家に...」


”不法滞在”三十年な!!


ダメだ、話の通じない系統はトラブル前に

さっさと追い出そう


ドタン!


「わ、私は、、、、この地の精霊だ!


 そ、それで、、この家から離れられない!!!」






グイッ...


「あ゛あぁぁぁ!!!、痛い痛い

 だから、髪を、髪を引っ張らないで!!」


「冗談じゃない!!!

 敷地面積40坪に収まる精霊ってのは

 総じて座敷童子って分類される


 太古の昔からのお約束だろうが

 今更何を・・・!!!」


「お〜ね〜が〜い!なんでもするから!

 ね?、ねぇなんでダメなの?なんで!!!??」


コイツ逆上しやがった!

図々しいとかの域じゃねぇ!!



ガチャ、、、


不意に扉のほうが開いたと思い

そちらに目をやる


そこにいたのは、

今し方再会を喜び合った旧友ロブの姿があった


「わ。悪い、酒を持ってきたんだが,,,

 邪魔だったな!悪い、あはははは!!」


ちょ、待ってくれ違うんだこれは!


「ねぇ、なんでぇダメなの!! 説明はぁ゛!?」


って、うっわぁ!汚ねぇ!!!

鼻水、鼻水付いてるって!


「わ、わかった!

 いい、この家に居ろ、

 部屋はあの汚い部屋そのまま使って良いから!!」


そうして

俺は渋々、座敷童子の在宅許可を渡した



その日の夜



「一体、どこから説明してくれる?」




はい。





わかります、お気持ち十分お察し致します

本当にすいませんでした


首を45度程度上にあげると

そこには鬼を下すかの如き目が

厳然とその小さな顔に鎮座している


まるで不動明王だ。


俺は閻魔様に言い訳をするなどという考えを持つほど

無謀かつ愚かな人間ではない

なんせ

既に閻魔帳は彼女の手に握られてしまっているのだから・・・


「はい、連れ込んではいないんです

 強いて言えば、元からいたと言いますか

 原住民と言いますか...」


初手発言に反論はない(フゥ...)


今ここで言葉を重ねれば

言い訳がましくなる。ここは冷静に


もう一度頭を下げてから、相手の反応を

伺ってから・・・


「しょうがないわよね、

 あんただって男だし、まだ現役でも可笑しくないわ

 それに、彼女だって可愛いし

 もしそういうことがあっても仕方ない...」


彼女の声から否定的ニュアンスはない

声色も落ち着いている。

俺の言い分に理解を示し、適度な同情すらしてくれる



これイったのでは?

イったのでは!!?


勝ったか遂に!?

俺の対女性コニュニケーションのデータが

こんな老ぼれてから功を奏したか!?


よかった、嗚呼!ありがとう俺の八十年に渡る

女性トラブル!!


不倫、結婚詐欺、愛人疑惑


俺の足を引っ張り続けた問題が今!

巡り巡って、俺の身を助けたんだ!!バンザイ!!!


さあこれでこのバカも...

って、おかしい


よく考えてもみろ

俺との一悶着であれだけ食い下がった

コイツが、今になって粛然な様相を見せている


なんだ?

よほどシェリアの気迫に・・・




って違う!!!


もはや言い訳すら諦めているんだ

全開の瞳孔に、抜けた顎関節

しかし、どうしたってこんな、、


次の瞬間、俺は背後から針のように鋭利な殺気に

全身の神経を串刺しにされた



わ、訳がわからない


俺はこの状況を、未だ飲み込めずにいた


修羅場など幾つ潜ったかなど、今更思い出す意味すらない

異様な空気感には慣れているはずだった

そのつもりだった


逆だ



死線を潜ったからこそ今の状況が、

このどこから迫り来るかしれぬ

得体の知れない空気の正体が、わからないのだ



”!”


ここが、俺の記憶が辿れる最後の瞬間だ


私の理論は結局、最初の段階で破綻していたらしい


一つ、ここまでの事を鑑みて

諸君に伝えなければいけないことがあるとするならば

それはただ一つ、









女性がキレ始めたら謝りましょう

なんとしても(!!!!!汗)



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