4話
「静かに、物音を立てないようにね?」
「は、はい!」
暗闇の雑木林の中
いい年をしたジジイが少女を口説く
イラつくから
週刊誌にタレ込もうかな
「、、、ちょ、何ぼさっとしてるんですか!
一応違法行為ですからね?」
「え!?、私とグラス様の秘密の駆け落ち?
ロマンチックねぇ〜!!
あ、あんたはノーカンだから」
付き添いを幇助した側ではあるが
大丈夫なのかこの腹黒娘は
「人聞きの悪い事言うな
一応、パスポートやら身分証はあるんだが
色々、事情が複雑なんだよ」
「そ、それって、、、」
「説明の時間はないよ
でもそうだな...
何も知らないって言うのもフェアじゃないし
魔法で脳に情報を直接送るね」
まあ、ぶっちゃけそんな大した話でもない
入国管理を担当する
伯爵家が、元々ロザンとガロウ(今こっち)
の協定に反対してて
協定が成立してしまった嫌がらせとして
いらないはずの国境警備隊を配置したり
不当な取り調べや検査をして
入国者を出国させなかったりと
未だ根本的解決はしていない
うちでも一度、業を煮やして調査団を送ったが
相手は貴族、証拠隠滅のプロフェッショナルだ
と言うわけで、現在
この国境をくぐるには
実質的に違法入国をするしかないのだが
そこは
お役所もお役所、
なぜか違法入国した後に
役所に行くと普通に入国手続きが受けられ
犯罪者やテロリストでもない限り全て
’特例’の名の下に
滞在許可証がおりてしまう。
まあ、警備隊に見つかると面倒だが
そうなりさえしなければ基本問題なし
実のところ
国境警備隊もやる気はあまりない
この前なんて、入国幇助をして捕まった
バカがいたらしいが
検察も起訴せず
不起訴処分にてあっさり話は流れた
制度というのは往々にして
こういうものばかりだと知った時は
度肝を抜かれたが
まあ、今では慣れたもんだ
「というわけで、サクッと
俺の魔法で超えたいので、、
広いところまで移動します
後、飛行中
先輩余計な事しないで下さいよ?」
「っち、バレたか」
ガサガサガサ
俺は渋々隠し持っていた
道具を捨てる
「フッ、隠居しても抜かりないな」
「先輩が隠居後も油断ならないんですよ」
元帥の時といい
昔から、コイツにはいつも
助けられてばかりだ
酒の一杯でも奢ってやろう
「うわぁ!!」
何だ何だ!!?
(即バレだけは嫌だ!!)
「ご、ごめんなさい
自分が踏んだ小枝に驚いって、って
虫!!いや!!!」
「グラス、サイレント張れ!」
「は、はい!!」
「おい、誰かいるのか!?」
やばい1番やっちゃいけない
ことやってしまった!!
「うわっ、!キャァ!
もう嫌!! 」
カチン、、、
「え……?」
おい、ちょっと待てまさか!!
ドカァン!!
っくソ!!!
違法入国者相手に手榴弾?
あと数秒遅れてたら
シェリアがどうなってたか
俺の"空間掌握"は
文字通りその場に起こるすべての魔力が起こす事象に
俺が関与することができる
シェリアのダメージを俺に
移すくらいは・・・
「あんた、何やったの?」
痛みが顔に出ているか
魔鉱石が原材料だったのが
不幸中の幸いだった
それに、
流石にこの程度でくたばるほどヤワじゃない!
「ダメだ、隠密は諦めるぞ!」
「わかりました」
なんて爆弾抱えちまったんだ
しかもコイツ、
物乞いがジョブじゃなかったのか?
何だってこんなに虫に弱い?
「なぁ、さっきの爆弾って」
「え?、覚えてないんですか?
爆弾使用の許可したの、先輩ですよ?」
「え?、、、」
「覚えてないんですか!?
ほら、軍事費用削減の件・・」
「あ!!!」
そうだ
確かあれは半年前!!〜
『また、予算減額審議か?
無理に決まってんだろ今でさえジリ貧なんだぜ?』
『しかし、第三師団を抱える公爵様が直々に
王に申立てをしたって事は
なまじか王国政府も無碍にはできませんよ?』
『ああ〜、、なるほど、仕方ないか
今、削る、もしくは費用の代用が効く
予算を見積もってくれ
もちろん、即ハンコだけは押す』
〜
あの兵器持たせたの俺だわ!!!
うっわマジかよ!!
「それで先輩、中身も確認せず
元帥殿が持ってきた資料ならって、
ハンコ押したんですかって、、おわっ!!」
やばいどうする
辞めた後のことまで考えてなかった
ドガァン!、、ダァン!!、ドドォン!!!
「キャアぁ!!」
あっぶねぇ!!!
野郎、しょっぴく気ねぇだろ!?
絶対事故案件で処理だよ
死体も事実も闇に葬られる奴じゃんこれ!!
「ぐ、グラス様、、もう私
走れ、、な、、」
シェリアが膝をついた
隠密どころか
作戦すら潰さなきゃダメか
「グラス!乱暴だが飛ぶぞ!!」
「で、でも先輩。
俺の飛行するための魔法は・・・」
「いい!!
周囲への被害はその一切
を俺が引き受ける」
俺がそういうと渋々グラスは
魔法陣を展開し始めた
周辺一帯がグラスの魔力で揺れる
「早くグラスに掴まれ、俺もやるから
あ、変なとこ掴むんじゃないぞ?」
「掴まねぇよ」
「よしよし、
コイツには俺のせいもあってか
この魔法で人を運ぶことに
トラウマがある」
「絶対9割がたアンタのせいよ!!」
そんなことは。。。ありそうだ(笑)
「ヒヒッ!」
不意に茂みの影から
おかしな笑い声を聞こえてくる
「出ます!」
その時だった
「ていやぁ!!」
「ああァ!!!??」
深夜の森林に男の悶絶する声が
響き渡る
謎の黒い影、それしがみついたのは、
あろうことかグラスの息子であった
(ちなみに彼は未婚者だ)
「何してんのこいつ、はな
離れなさい!!」
「だ、、、、め、、今、
剥が、、したら、、体勢が・・・!!」
必死に声を押し殺すグラス
その様子がなんとも滑稽で
非常に痛ましいと思ったのは
恐らく、俺だけではないはずだ
かくして俺たちは国境を越える
ことに成功するのだが
グラスの記憶に
新たなトラウマが形成されたのだった。