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10話


「へぇ〜、アンタも遂に引退か...」


スコッチを片手に

日差しのさす窓際光の混じったグラスを手に、奴は言う


「にしても、あの騎士団長様がこうも柔和になるとは

 歳はとりたくねぇもんだな」


「はっはっは

 何言ってんだ、お前だって冒険者の括りじゃ

 老兵の類だろうに」


「フッ、俺はこの通りまだまだ現役よ!」

バサッ!


奴は不敵な笑みを浮かべ

太陽に逆光背を向け代々受け継がれる白銀の羽織を広げる

まったく、こいつはどこまで、化け物なんだ...


「世代交代をふみ損ねれば、組織は

 老害の溜まり場と化すぜ?」


「抜かせ、

 ここのじゃじゃ馬共をまだ野に放つ訳にはいかねぇよ

 アイツらすぐ、問題起こしやがる、、、この前だって...」


コン、コン・・・


と、やつのメンタルが

ネガティブに傾き始めた頃、来客中にも関わらず

マスター室の戸を叩く音がする


「ジャジャ馬ってのは

 世間知らずの事を指して言ったのか?」


「ん?、ああ、違う 違う

 あれは俺が呼んだんだ、

 俺だって、わざわざアンタとの旧交を温めるだけに

 勤務中の時間を割くわけがないだろ?」


まるで自分が労働者の象徴であるかのような

言い方をする


コイツ、俺が来るまであの怪しい門番達やり続けてたんだよな?


「失礼します、、ってなんであんたがここに居るのよ!?」


げ!?

なんでこんな所にシェリアが、


、、ったく毎度毎度、面倒なタイミングで出てきやがって

とりあえずここは冷静に...


「いちゃ悪いのか?」


「あんた。。街で何した訳?」


ん?、なんの話だ?



「ゆ、ユラさん、、やったのか?」


後ろには若干引き気味のゼノの姿もある


ふと、後ろの壁を見るとマスター室呼び出し条件

という名のふざけた紙が貼られているのを見つける


ええぇ、、と、何?


・痴漢・及びわいせつ犯罪人


「って違うわ!!」



何考えてんだコイツ!!!


「ハッハッハッハ!!!ヨォ、ジャジャ馬代表!

 座れ座れ、ケンカの件はそれで目を瞑ってやるから」


「ああ!、マスターその事は!!」

初日盛大にフォローしてもらっておいて、喧嘩起こしたのかよ


ゼノは俺が呆れたような顔を気まずそうに眺めている

俺とシェリアとゼノが横一列に

座ると、ラグナは突然、強張(こわば)った表情し、

話を始めた


「オルクス島ってのを知ってるか?」


「オルクス島・・・なんだそりゃ?」


「詳しくはわかりませんけど、

 ”青龍”が昔から住んでいる事くらいなら...」


シェリアは噂程度に、ゼノはちんぷんかんぷんか...


オルクス島ー


俺がそのワードを耳にする時

それは大概、ある師団からの申請だった


毎回毎回、師団長会議の度に

()()()が口酸っぱく言ってたなぁ

何度か調査団を派遣したが

あそこの水質問題は一流魔術師を送ろうが

回復したことがない。          


「水質関連か?」


「いや、その問題は近年の研究でどうでも良くなった」


なんだ、、、


っていうか、

研究一つでどうでも良くなる水質ってなんだよ!?




「今回問題として挙がったのが

 青龍の”暴走”だ」


「暴走?」


青龍


白虎、玄武、朱雀、に並ぶ世界創生の時代から

存在すると言われる神獣の一角


ある研究によれば神獣たちが各々役割を果たすことで

陸海空の安定は保たれている


そして、俗にその役割とは


朱雀:変革


玄武:創造


白虎:継承


そして青龍:”太平”であるはずなのだが・・・


「無病息災と家内安全の神様が

 どうしたって、暴走なんか?」


「それが、いくら調べてもわからねぇんだ

 過去100年分の資料をひっくり返してみたが、

 青龍の暴走なんて記述を一つだってありはしない


 俺たち老人の大っ嫌いな、前例が効かないパターンだな」


怪訝な顔を浮かべる、

笑ってて分かりにくいが目のクマが相当深いあたり

かなり時間を使ったのだろう


「しかし、そんなもんは普通

 Aランク以上の冒険者に、任せるもんだろ?


 俺は100歩譲ってわかるにしても

 こいつら二人は...」


「なんだよユラさん!

 俺たちを信用してねぇってのか?

 やっちまおうぜ!!青龍の1匹や2匹」



ああ、一回こう言うのは痛い目を見てきた方が良いのかも知れない(棒)


「ねぇ、あんた、、、何考えてるの?」


痛い!痛い痛いです

止めてください心に刺さる視線の暴力!!


「せ、世界平和とかじゃねぇの?」



「はぁ、、、」


「・・・ああ、だが事態は緊急を要している」




「これが、俺の耳に届く範囲でも被害報告だ


 今、高ランク冒険者がクエストで出払っちまってる

 SとはいかずともAランクに連絡をと思ったんだが

 どうにも連絡がつかねぇ。」



って、おいおい、お前の所のAランクっつったら

師団中隊長クラスだろ?それと連絡がつかないって、、、


「妙な気配もするし、きな臭い所だらけだが

 Bランク冒険者の中でマシなのはゼノくらいでね


 ただ下手に新人送って、殺されました

 なんつっても笑えないんで、アンタもセットで呼んだって訳だ」


なるほど、もし死んでもガウル騎士団元総団長ついて

行った事実があれば

新人に一応の配慮をしたことにはなる


しょうがないって定例会で報告できる訳だ


「とどのつまり...」


「あー、アンタの言いたい事はわかってる

 ただ、こっちとしても新人をボロ雑巾だとは思っちゃいない

 これでも一応ギルド最大手なんでね、信用は大事だ


 それにアンタにとっちゃ、”入国手続きに嘘混ぜて”

 入れるくらい、大事なヤツらの援護だぜ?」


ッチ、、すました顔して俺がここにいる事を事前に知り

弱みを握った上で交渉を詰めてくる


さすが、伊達にマスター何十年もやってる訳では無さそうだ


「わかった、俺が出よう

 ただし、準備期間をくれ


 なんせこれだけ情報の少ない中で

 あの青龍の見舞いに向かわなくちゃなんねぇんだ


 それなりの準備がいるってもんだろ?」


「構わない、道具の費用については

 全額こっちで負担する。なんでも好きに買ってくれ」


こうして俺たちは国内最大手ギルドの

全面協力のもと、青龍の調査に向かう訳なんだが、、、


「青龍、、、なんかワクワクすんなぁ!」


「あんた、、、ちょっとは危機感持ちなさいよね?

 マスター直々のクエストなんて

 前代未聞だわ」


あぁ、理想の老後がどんどん離れていく。



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