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第1話


”ガロウ王国騎士団”


それは誰もが恐れ敬う、

国の象徴たる国家機関を指す


団員数、実に300万


1000年に渡り、国を支え

その絶大な権力の元

長らく国の治安を維持している


ある軍事評論家によれば

この騎士団の崩壊は世界の軍事バランスに

直接ヒビを入れることになるという


そんな騎士団に今、不穏な風が流れていた...




「おい、聞いたか、ドレイク卿の事」


「ああ、知ってる

 俺もあれには腰を抜かしたぜ」


「こうなってくると俺たちも

 明日にゃ敵同士かもな・・・」


「おい、やめろよ。縁起でもない」


彼らの口調は深刻だった


「だって、本当にこのままじゃ」


「真偽がどちらにあるにせよ

 残った俺たちの考えなくちゃいけないのは

 これからのことだ」


「「違いない」」


第三師団筆頭槍:オルバ=ウィルソン


第五師団副団長:ルドルフ=クリーク


第一師団特殊作戦部隊隊長:アルベルト=バンデル


いずれも騎士団のなかで大佐以上の地位を持つ

単品でも国内最高クラスの兵士達だ


そんな千の軍勢にも怯まぬ彼らが

今、死活問題として取り上げるのは...


"王国騎士団:総団長の引退"だった。


「しかし、あれに気づかなかったって

 総団長殿も、衰えたってことか?」


「いやドレイク卿の前々から計画だったんだろ?」


「にしたって...」


ことの発端は50年以上前。



ドレイク=ヒルトマン


かつてカバル魔獣戦線の最前線にて

1000の有象無象を一瞬の内に葬った

伝説の剣士


家柄、財、名声

全てにおいて完璧を見せる彼の英雄譚は

一人の剣士によって

跡形もなく打ち壊された。



ユラ=レパード


カラスも避ける極貧街に生を受けながら

己の鍛練と地域の協力により

数多の戦果を挙げ、


ついには騎士団のトップ、

総団長に登り詰めた


しかし、そこまでやれば

当然、軋轢も生めば摩擦も起こる

多くの権力者の恨みを買い

彼の在任中、


刺客を送られた回数、実に30回

国家反逆罪及びその幇助で立件されること70回

謹慎回数歴代No. 1

数百に及ぶ不倫疑惑


されど

そのいずれも、彼を

物理的、あるいは社会的に

殺すには至らなかった


ドレイク卿はそんな

対立勢力をいち早くまとめ上げ

見事、今日のクーデターを成功させたのだ



「しかし、いまだに信じられねぇ...」


「そら、騎士団全員が思ってることさ」


「こうなりゃどの道、師団長クラスの抗争は避けられない」


「冗談じゃない!!仲間内で

 足の引っ張り合いかよ」


「実際、利権が絡めば

 おのずと動き出すのは貴族のお偉方だ


 各師団のバックに公爵家の財がある以上

 俺たちにはい以外の選択肢なんてない」


ルドルフは

苦虫を噛み潰したような顔をする

昔から総団長にかかる圧力は、貴族による

ものがほとんどだ。


それは騎士団に所属していれば

誰もが否が応でも知らざるを負えない

事実だった


『”果たしてそうだろうか”』


誰もいない筈の廊下から

片眼鏡に白髪の頭をした男が1人、口を挟む


3人はその気配に戦慄した



「!!!、げ、元帥殿!?」


「これは大変な失礼を!」


この男、ロイド=グラスロードとは

王国騎士団:元帥

その肩書きは、騎士団の中でも異質のものである


総団長の相談役でありながら

それは地位や功績によって決まるものではなく

ひとえに、魔術の最高峰を極めた

いわば、魔法戦争のスペシャリスト


当然ながら、騎士団でも

強い発言権と影響力を持っている


カチャ、カチャカチャカチャ//

瞬時に3人は床に片膝をついた


「ああ、跪かなくていい、

 公式な場じゃあるまいしね」


「は、はい、では失礼して...」


「それで、一体どういうことです?」

恐る恐る訪ねる


「ああ、たまたま君たちの話を盗み聞きしてね

 団長はその判断を望まないと思ったのだよ


 最も、この助言も団長は老害の

 戯言だと先輩は一蹴するだろうがw」


元帥は少し遠い目をして言う

まるで、何かを懐かしむ老人のように


「ど、どういうことですか?」


3人の騎士たちはその意図をいまだ

掴めずにいる。


「団立訓練学校で、

 初めに言われることをは?」


「はい、”常に心身を鍛え上げ

 自己の欲求を捨て、国の為、民の為

 思索し続けること”」


アルベルトは真っ先に答えた


「そう、先輩が総団長になってから

 ”思索”という文言が加わったんだ


 そして代謝を重ね続ける。

 変化を捨てない。


 これは君たちのような新進気鋭の

 若手を多く育成した

 総団長の信念だ


 今年の団の予算をどれだけ新人教育に

 回したか、君たちも

 知らない訳ではあるまい」


「組織の代謝、若手教育・・・って!!


 まさか、引退は陰謀などではなく

 初めから総団長の意思だったって

 ことですか?」


「さぁ、私にはそこまでは計りかねる


 だが、今私たちが立っている場所は

 間違いなく時代の転換点だ」


騎士団元帥、総団長の右腕と呼ばれる男の言葉には、

相応の説得力があった


「でも、一兵士の俺たちには

 どうすることも・・・」


男たちは

柄にもなく初めて理不尽を見る

子供のような目をする。



「よく勘違いされがちだがな


 私は年配は若者より

 後ろを歩いていると思っているんだ」


3人は目を丸くした。



「ご、ご謙遜を・・私たちは

 まだまだ諸先輩がたの足元にも・・」

慌てて言葉を返す


「謙遜なんかじゃないさ

 いつだってそうだ


 思索し、行い、答えを出す

 いくら、私たちに知見があっても

 若者はそれを易々と超えていく


 それも私達よりはるかに早いスピードでね。



 私たちは、時代に縛り付けられた

 偶像でしかない。」


「は、はぁ...」


「最後に、若い人たちと話ができて

 よかった。この数分だけでも私の30年にわたる激務が

 報われたと言うものだ」


「ちょ、ちょっと待ってください!!

 それはどういう...」


「言葉通りさ。それじゃあね」


そういうと、3人の静止を

絹を撫でるようにあっさりかわし切ると

元帥はその場から消えてしまう




後日、元帥は失踪。

なんの手続きも踏まなかった事から

騎士団側からは死人扱いを受けるが


騎士団の捜査班によれば

彼の机は、新品のように綺麗だったそうだ


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