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ロジハラ幼馴染がクンカーの変態で俺の衣類をオカズにしてるってマ?  作者: ミソネタ・ドザえもん


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手を繋ぐ

 電車が隣県のターミナル駅に到着したのは予定より十五分遅れてのことだった。大きな白いビルを覗きながらホームへ降りた。どうやら同じ車両に乗っていた人は、大体この駅で降車することになるようだ。


「久しぶりに来た」


 開口一番俺の口から出た言葉は、随分と久しく寄っていなかった駅に対する所感。


「そうだね、あたしも」


 どうやらそれは、結衣も同様なようだ。


 最後にこの駅にやって来たのは、いつのことだったか。

 インドア派であまり外で遊ぶことがないばかりに、どうしても随分と昔の記憶を蘇らせないと答えに行き着きそうもない。つまり、わからないってことだ。


「気晴らしをするなら、どうせなら隣県。遠くの方が良いかなって」


「そうだなあ」


 結衣の言葉に、曖昧に同意した。腑に落ちなかったわけでは決してない。


「近場にしたら、変に噂されそうだしなあ」


 むしろ、結構その言い分には同意していた。

 元天才少年だなんだ言われる俺は、テニス界隈ではそれなりの有名人だし、その隣を歩くこの幼馴染も、性癖を知らない界隈からはストーキングされるくらいには有名人。

 近場で一緒に遊んでいるところを目撃されたら……こいつの熱心な追っかけに刃物で刺されそうだ。


「それはちょっと自意識過剰じゃない?」


 ただ、自分もろくでなしにストーキングされていることを知らない結衣は、困ったように苦笑しながら否定の言葉を口にした。

 結衣に、お前も変なのに追っかけられているぞ、とは言えなかった。そんなことを言って、こいつがどんな反応をするかは気にはなるが……変に怯えさせるのは可哀想だと思ったのだ。


 黙って、結衣の後に続いた。

 改札を出た後、駅構内を二人で歩いたが……休日ということも相まって、駅構内はかなりの混み具合になっていた。

 インドア派で外で遊ばない俺は、既に人波に酔っていた。出来ることなら、今すぐにでも休みたいとさえ思っていた。


「大丈夫?」


 そんな俺を甲斐甲斐しく心配していたのは、前方を歩く幼馴染。

 駄目、と言いたくなったが、言い出せなかった。あまりにも男らしくないし、何より色々プランを考えてもらっていることを教えてもらった手前、それを無下にすることは出来なかった。


「……っぷお」


 と、思ったが。

 あまりにもうだつが上がらないばかりに、俺は前から襲って来た人波に飲み込まれてしまうのだった。

 有無を言わさない迫力と吸引力は、さながら本物の津波。成す術もなく、堪えるのに必死だった。


 そんな中伸ばしていた右手が、何者かによって掴まれた。


「もうっ」


 そんな怒り交じりの口調と共に、人波から引っ張り出された。どうやら本物の津波と人波は、随分とパワーが異なっていたらしい。そして、それを同じと思うくらい、俺は今弱っていたようだ。


 非常に情けない。


 そしてそれと同じくらい、今俺を人波から引き抜いてくれた手には感謝しかなかった。


 これで、結衣を追える。


「大丈夫?」


 と、思ったら。

 どうやら俺を人波から引き抜いてくれたのは、結衣らしかった。


 柔らかい彼女の手。

 そして温もり。


 少しだけ、気持ちが震えた。


 顔が、熱かった。


「おーい。返事しろー?」


 俺の顔の前で左手を振った呆れ顔の結衣に、俺は正気に戻った。


「だ、大丈夫……」


「……あ、そう」


 結衣は、気を取り直したようだった。


「じゃ、行こうか」


「……あの」


 命の恩人相手だが、一つだけ言いたいことがあった。


「何?」


「手、離して良いんじゃない?」


「いや、駄目でしょ」


「なんで」


「だって、また今みたいな無様な姿を拝みたくないし」


 確かに。

 一理あると思ってしまった。人波に呑まれた女の子を助けるならまだしも、助けられるのは男としてどうなのか。


「ほら、行くよ」


 返す言葉も無くなって、俺は結衣に手を引かれて駅構内を歩いた。

 半地下の構内。有名シューマイ店の売店に一瞬目を奪われた後、俺の手を引く結衣の顔を覗いた。

 微かに、結衣は口角を吊り上げていた。


 理由は、俺にはどうやらまだ、わかりそうもなかった。


「昔はさ、こうやってよく手を繋いで歩いたよね」


 そう言って過去を懐かしんだのは、結衣だった。


「……お前がまだ変態に染まる前か」


 話の腰を折るように、俺は茶化した。


「そうそう。今も頼りないけど、今よりもっとあんたが頼りなかった頃」


 ……それはまた、本当に随分と昔だね。


「あたしが遊ぼうって言ってさ。あんたは良いよって言うのにさ。あんた、全然あたしと遊ぶために動き出そうとしないのよね。漫画がキリが良いところになるか、もしくはテレビがキリが良いところまで進むか。酷い時には、ただただ億劫そうに生返事をしただけ、みたいな」


「そんなことあったか?」


「あったよ」


 結衣は、こちらを振り返り無邪気に微笑んだ。


「した方って言うのは、そういうの忘れるんだよねー? 酷いもんだ」


 アハハ、と声を出して少女は笑う。


「いつからだろう。あんたが、あたしを振り回さなくなったのは」


「……自立したってことだろう」


 それは、良い事のはず。人として。


 多分昔……テニスを始めるより更に昔は、何をやっても俺はこいつに負けまくっていたから、だからこいつの遊びの誘いに応じるのが嫌だったのだろう。今と変わらない。他人に好き好んで負かされたい奴が、どこにいる。


 それにしても、寂しそうに俯くこいつを見ていると、常識が乖離しそうになる。


「それに、最近では立場が逆転しているぞ。俺を振り回すのは、最近ではいつもお前だ」


 否定する言葉は出てこない。

 ただ、こいつに対する文句は漏れ出た。本当に、こいつの性癖を知ってからと言うもの、どれだけこいつに俺は振り回されていることだろうか。


「仕方ないよ。好きなんだから」


「振り回されるこっちの身にもなってくれ」


「でも、少しは役に立っているでしょ?」


 ……確かに。


 少しどころか、かなり役に立っている。


 ただ、謙遜しながら言われるのが少し癪だった。変態な一面を知っているばかりに、もっと自分の手柄だと崇めろだなんだとこの女に言われると思っていたからだ。


 ……しかし、まもなく気付く。


 思えばこいつは、いつかの試合の時もそうだったが……いつも最後には、試合の成果を自分の手柄だと言うことは一切なかった。


 あの難敵を打倒した時だって。


 最後には、練習を頑張った俺の成果。諦めなかった俺の成果。

 そう言ってくれたのだ。


 不思議に思った。


 遅い時間まで練習に付き添ってくれて、一定の成果を得られてもそれは自分の手柄ではないと言うこいつは一体、どうしてそんなやりがいのないことをやっているのだろうか、と。


 テニスウェアのため……?


 本当に、それだけなのだろうか。

 こいつのテニスウェアにかける異常な執着は知っている。


 でも……本当に、たったそれだけのために、こいつは俺の練習に付き添ってくれているのだろうか?


 テニスウェアだけのために、俺のテニスノートを取り、練習に付き添って、半身浴をすればその間の話相手になって。

 そこまでする必要、あるのだろうか?




 ……あるって言いそう。

 



 少なくともこれまでこいつにされた説明では、それがテニスウェアのためだけであることはあまりに明白で……こいつは異常者だった。


 でも、なんだか勘ぐってしまう。


 もしかしたら、裏があるのではないか、と。

 

 でも、じゃあテニスウェア以外の裏と言えそうな話が何があるのか。

 それを考えると、まもなく思い当たる答えに行き着く。


 もしかしたらこいつ、俺のことを……。




 ……振られてんだよなあぁぁぁ。




 いつもと違い思慮深いこいつの一面を見て、どうやら俺は変な気分になっていたようだ。少なくともこれまで、俺との過去を懐かしみ微笑むあいつを見たことはなかった。

 だから、思わず思考が明後日の方向に進んでしまったのだ。


 反省しなければ。


 最近の俺、随分とこいつに絆されてきていないだろうか。行く末が心配である。


「お前の性癖には、困ったもんだ」


 色々と呆れてしまい、心から思っている言葉を発した。


「……あたしは、不変的なものしかもう愛せないの」


 そんな呆れる俺に反して……結衣は、苦笑していた。




「変わるものは、いつ裏切るかわからないじゃない?」




 哲学チックな結衣の言葉に、笑っていいのか、何なのか。とにかく心が乱された。

ヒロインの異常性癖に重きを置きすぎたと思ったから恋愛話っぽい話を書こうと思った。でも結局匂いの話に帰結してしまう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 全てがテニスウェアに繋がるとかガチおもろい。恋愛か??
[一言] まぁ「裏切った」のは結局主人公やろなぁ… 格好良かった昔の姿は何処へやら、今じゃ腑抜けのヘタレで他人を僻む情け無い男に成り下がっているわけで
[良い点] ここのところヒロインがずっと可愛い [一言] やっぱり昔の主人公の事がずっと好きなのかな。 今の主人公かなりふぬけてるぽいし。
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