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ロジハラ幼馴染がクンカーの変態で俺の衣類をオカズにしてるってマ?  作者: ミソネタ・ドザえもん


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勝ちたかった

 試合終わり、歓声が上がるギャラリーの方へと歩いた。

 ギャラリー達の興味を、さっきまで平塚と二分して受けてきた。しかし金網を超えたその先で試合の健闘を称えられたのは、勿論勝者である平塚だった。


 まだ痺れて上手く歩けない右足を引きずりながら、試合前にもいた用具入れの倉庫の前に向かおうと思ったが……まもなく会場にアナウンスで連絡が入った、表彰式前にコート整備をしてくれ、とのアナウンスに、俺は仕方なく我が校の縄張りへと向かった。


 用具入れの倉庫の前は、これから皆がトンボを取りに集ってくる。

 だから、そんな人でごった返す場所で休みなんて取れるはずもなかったから、仕方なかった。


「あいたたた……」


 楽しい試合の余韻から覚ましたのは、痙攣した足の痛みだった。

 まったく、さっきまでは人生でも類を見ないくらい楽しかったと言うのに、これでは台無しだ。


 縄張りにいるはずの皆は、コート整備に向かっていて誰もいなかった。

 こんな調子では手伝いにも行けず、俺は一人顔をしかめながら足を擦っていた。


 コートの方が騒がしい。

 長い、長い大会の全てのプログラムを終えて……皆、気持ちが緩んでいるのだろう。

 そんな気の緩んだ楽しそうな連中に交じれず、一人足を揉んでいる自分。少しだけ情けなく思った。


「……アハハ」


 しかし、この無様さがなんとも俺らしい気もするのだから悲しい限りだ。

 このまま、誰も戻ってこなければよいのに。


 勝利して即囲まれた平塚。

 見放された俺。


 試合では負けてもいい、なんて思ったのに、今残っている感情は不思議と惨めさだけだった。


 そして、惨めな気分の今、誰かと敢えて顔を合わしたいと思うことはなかった。このまま、表彰式をすっぽかして逃亡したい気分だった。


「なーに一人で項垂れてるの」


 しかし、そんな俺の感情を宥めたのは……俺の制御が上手い、幼馴染だった。


 ……そうか。マネージャーは選手じゃないから、コート整備に交じる必要もないのか。


 項垂れていない。

 そんな文句にも似た言葉が結衣に向けて放たれることはなかった。


 間違いなく、今の俺は項垂れている。

 さっきまでは試合に負けたもいいと思ったのに、最後の最後、どっかの誰かに謝罪の言葉を脳内で述べてしまったものだから。

 だから、土壇場で悔いを感じたのだ。




 悔いを感じてしまえば……もう、後はそれが溢れるだけだった。




 だから俺は、今間違いなく項垂れている。

 だから俺は、結衣に文句の一つも満足に吐けなかった。


 右足を揉みながら、頭から被っていたタオルで目尻を拭った。

 今俺は、それはもう多量の汗を掻いている。髪が汗で濡れ、水滴となって滴り落ちるくらい……それくらい、汗を掻いている。




 どっかの匂いフェチが襲いかかりそうなくらい、汗を掻いている。




 でも俺がタオルで拭ったのは、汗ではなかった。


 俯き、顔を上げることが出来なかった。

 本当に、情けない。

 さっきまでは。試合中では、ここまで女々しい部分を出さずにいれたのに。


 試合が終われば、いつもこう。


 本当に、情けなくて弱っちい男だ。 




 結衣は、俺の隣に黙って腰を下ろした。


 いつもなら嫌味の一つくらい言いそうなのに、こいつはただ黙って、隣に座っているだけだった。



「……なんか、言えばいいじゃないか」



 そんなこいつを不気味に思って、気付けばしゃくりあげながら苦言を呈していた。本当に、黙っているこいつは不気味だ。


 もっと、いつもみたいに……。くんかくんか、だとか。スーーーーーハーーーーー、だとか。

 

 今はそれくらいいつも通りの方が、こっちとしても助かるのに。


 

「……結局さ」


 そして、そんな俺の苦言を聞き入れたのか、結衣は何かを喋る気になったらしかった。




「いつも通り、準優勝だね」




「はうっ」


 いつも通りにしろ、と言ったけど、傷口に塩を塗れとは言ってないんだよなあ。


 ……まあ、事実だし。

 涙の量が増えるだけで。

 しゃくり方が激しくなるだけで……。



 ……何も、言い返せないんだけどさ。




「でも、いつもと少し違ったんじゃない?」


 ……何が?


「景色が、違ったんじゃない?」


 ……結衣にそう言われて、思うところがあった。

 これまでずっと、勝てない男がいた。

 挑めば挑む度に打倒されて、無残な敗北を喫してきて……そうしていつしか、やる気も根性も俺は失くしていた。


 でも、今日。


 俺は久々に……あの難敵に勝てたのだ。




 塩田順平に勝てたのだ。




 いつも通りの準優勝。

 いつも通りの決勝敗戦。




 でも、相手はいつもと別の人。


 そして、宿敵は俺の手で打ち破ってみせたのだ。




「……うん」




 確かに、そうだ。




 あの時の決勝の舞台、いつもと違う景色に……だからこそ俺も、いつも以上の力を発揮出来たのだろう。




 ……でも。



「だからこそ勝ちだがった……!」




 ……だからこそ。

 だからこそ……!

 

 遂にうわんうわんと泣き始めた俺の頭を、結衣は優しく撫でてくれた。


 本当に、この幼馴染は……。




 ……ありがとう。

タイトル、変えました

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