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ロジハラ幼馴染がクンカーの変態で俺の衣類をオカズにしてるってマ?  作者: ミソネタ・ドザえもん


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塩田順平の思い出

 こうして決勝戦をギャラリーに交じって見守っているのは、いつ振りだろうか。

 外から見る他人のプレイは、いつもはあまり興味はなかった。だから僕にとって、試合を観戦していることは相手の研究でしかなく、それ以上の想いを持ってそれに魅入ることなんてなかった。


 でも今日は、珍しくその例外の日にぶち当たった。


 奥村アキラ。

 僕の一番の宿敵にして、好敵手。


 彼のプレイを見ていると、いつもこうだった。試合の時、強くラケットを握る時より強い力で握りこぶしを作って、その手のひらにはたくさんの汗。

 いつも、彼の試合を見ていると手に汗を握る。


 試合の白熱具合など関係なく、好敵手である彼の姿に、僕はまるで試合中のような興奮と、敗北した時のような悲壮感を味わう。


 それくらい、僕は彼に執着をしていた。

 だが彼は、そんな僕を煙たく思っている。


 そのことにヤキモキした回数は、最早片手では数えられなかった。


 こんなにも、僕は彼のことを好敵手だと思っているのに、彼は未だそれを認めてくれたことは一度もない。


 彼は言う。

 僕達の対戦成績は、僕の圧勝。だから、僕達が好敵手だなんて、甚だおかしいと。


 僕達はこれまで、何度も何度も試合をしてきた。

 大会。野良試合。それらを数えだしたら最早キリがないくらいだ。


 僕達の勝敗数は、彼の三勝三十四敗。……さっきの勝敗を入れれば、四勝三十四敗。




 彼は知らない。

 



 実は僕達の勝敗数が……今日の試合を入れて彼の五勝三十四敗であることを。




 彼は、僕達の最初の試合の勝者が僕であると思っている。

 でも、実はそうじゃない。


 僕が初めてアキラ君を倒すよりも少し前……実は僕達は、一度だけ試合をしていた。




 それは、僕の名前がまだ三原順平だった頃の話。


 父と母が離婚をした、ほんの少し前の頃……僕はアキラ君と試合をし、敗北を喫していたのだ。


 子供ながらに、あの頃の僕の生活は荒んでいたと思う。

 生まれた頃から、僕は父と母が仲睦まじそうにしている姿を一度も見たことがなかった。父と母は、互いに名家の生まれだったそうだ。政略結婚にも近い契りを交わし結ばれた二人は、互いに対して好意はそこまで持っていなかった。

 そうして生まれたのが僕。


 そして、愛の結晶であるはずの僕が生まれたことが二人の関係に大きな溝を作るきっかけとなったそうだ。


 母は、昔から仕事が好きな人だった。たくさんの人と汗を流し、苦楽を共にし突き進むそれが快感だったのだと言う。

 ただ、名家という立場。女に生まれた運命により、母は子供を作るように強要された。


 子供が出来れば、旧文化の名残とばかりに仕事は辞めさせられ……専業主婦となった。


 それが二人の関係に溝を生んだ理由だったそうだ。

 母が嫁いできた都合上、嫁姑問題も輪をかけて二人の不仲を悪化させた。




 母が父に離婚届を突きつけたのは、僕の四歳の誕生日だった。

 



 そうして二人の別居が始まり、離婚調停に時間を要してグダグダしていた時期に、僕は初めて、アキラ君と試合をした。


 あの頃の僕は、ただ父に振り向いて欲しい一心でテニスをしていた。

 片親になったとはいえ、名家のバックアップもあり財産的な不自由は何一つとなかった。でも、父は母が出て行ってから、時々とても寂しそうな顔を見せるのだ。


 そんな父に、少しでも笑顔になって欲しくて。


 僕はそんな理由はテニスを頑張っていた。


 そうして、初めて全国大会に出て……僕に土を付けた男が、あのアキラ君だった。




 あの頃は僕の身長がまだ小さくて、アキラ君は同い年ながら僕より一つ頭大きくて、子供ながらに大人びていて格好良いと思った印象を持っていた。

 でも、そんな彼に憧れから負けようと思う程、小さい頃の僕は余裕はなかった。


 僕は必死にプレイをした。

 今に比べれば随分と拙いながら、それでも同学年相手には負ける要素も一切なかった。


 でも、そんな僕の自惚れた鼻っ柱を折ったのが、アキラ君だった。




 彼のテニスは、華麗で、鮮やかで、猛々しかった。そのプレイに魅了された心が一切なかったと言えば嘘になる。




 でも僕が一番彼に惹かれたのは……彼の微笑みだった。




 彼の微笑みは、とても素敵だった。

 試合中、劣勢になればなるほど、誰もが諦めてしまうようなそんな時、当時の彼は一切そんな一般論で語れない微笑みを見せるのだ。


 あの微笑みは、語っていた。


 どうやって相手をアッと驚かしてやろうか、と。




 彼のテニスは、華麗で、鮮やかで、猛々しかった。




 でもそれよりも、ただ楽しいテニスだった。




 そんな楽しそうにプレイをする彼に敗北し……僕は、テニスをただ父を喜ばすための道具としか思っていなかったことを恥じた。




 そして同時に、あのアキラ君の微笑みをもう一度見たいと、そう思うようになったのだ。




 いつしか僕のテニスの目的は変貌を遂げていた。


 父を喜ばすため、から。


 アキラ君を微笑ませるために。




 ……ただ。




 次にアキラ君と戦った時には、彼のテニスは一変していた。




 同学年では頭一つ……いやむしろそれ以上抜きんでた存在。小学生に交じっても遜色ないテニスをする彼は……いつしか、王者となっていた。




 天才少年と呼ばれるようになった彼は……いつしか、勝ちに固執するようになっていたのだ。






 彼に勝ちを固執させるまでに、周囲は彼を持て囃し……そして、追い込んだのだ。






 小さい頃の彼は、リスク度外視で自分のしたいことをただしていた。

 でも、次に戦ったアキラ君は……もう、最近のようなローリスクで型に嵌った楽しくないテニスを展開するようになっていたのだ。




 ……だから僕は、まだ彼に勝ったことが一度もない。




 本気の彼に。


 テニスを楽しむ彼に。




 ……僕はただの一度も、勝ったことがなかったのだ。

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