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ロジハラ幼馴染がクンカーの変態で俺の衣類をオカズにしてるってマ?  作者: ミソネタ・ドザえもん


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一筋縄ではいかぬ試合

 初っ端の平塚のサービスゲームをブレイクし、今日はずっと好調なサーブを引っ提げ、俺有利の展開で試合は進んだ。

 準決勝。

 トラウマを刻まれた塩田君相手に自分でもうんざりするくらいの死闘を繰り広げた。倉庫の前で体育座りしていた頃は、今日もう一試合する状況に一瞬辟易としかけたが……意外にも、体はまだ動く。重くないと言ったらウソになるが、それでもこの試合を闘い抜くだけの余力は残っていると、長年の勘は言っていた。


「ゲーム奥村、4-2」


 ただサービスゲームをキープしながら、俺は僅かに苛立ちにも似た感情を覚えていた。


 出鼻をくじく。

 その思いで第1ゲームでリスク承知の攻めを敢行し、サービスブレイクを奪った。意図は、勿論1セット目を自分優勢な展開に進めることもあったが……一番は、平塚の調子をかき乱すことだった。


 常人。

 それこそ、場慣れしていないような人間であれば思わず震え上がるような決勝の舞台。


 対する相手は、何故かは知らないが嫌っている俺。


 あいつの時折見せる顔は……虚勢を張っているが、俺のことを恐れているのが見て取れる。


 そんな、恐れ嫌う俺との決勝の舞台での試合。

 歯車が一つでも外れれば、まるで精巧で簡単に狂う時計のように落ちぶれていきそうなのに。


 あいつは、最初のサービスゲーム以外は、俺が当初思い描いたような空回りをまるで見せてくれなかった。


 リスク承知の攻めで得た対価が1ゲームのみ。

 少し、リターンが少なすぎる気になってくる。


 だから少し焦る内心もあったが……それで崩れる方が、元も子もないって話だ。


 ゲームが進むにつれて重みが増す重圧に耐えながら、俺は平常心を心がけてプレイした。


「ゲーム平塚、3-4」


 そして迎えた第8ゲーム。


 俺のサービスゲーム。


 デュースサイドで俺が選択したのは、スライスのワイドサーブ。


 平塚をコート外に追い出して……オープンコートにショートクロス。


「15-0」


 アドサイド。

 キックサーブで……再びコート外へ。


 オープンコートへの返球は……。


「はあっ」


 パッシングでストレートに返された。

 反応出来なかった。ストレートに打つと、俺は考えていなかったから。


 リスクを抑えるなら、ここはネットの低いクロス一択。しかし、平塚が打ち抜いたのはネットの高いストレート。


「15オール」


 ……なるほど。


 平塚は、このゲームを勝負所と考えている、と俺は悟った。




 ……ならば。




 いつかの練習試合。

 俺はその試合で、平塚の明確な弱点を見つけていた。


 それは、高いバウンドのムーンボール。

 そして、ボディを狙った高いバウンドのスピンサーブ。


 背が高い平塚は、高い打点のショットが得意ではない……!

 今日はまだ、あの時の対策を温存していた。早くから出してさっさと慣れられるより、勝負所で目線を変えるためだった。


 そして、このサービスブレイクを許せない現状はその勝負所……!


 だから俺は、当時の対策そのままに……平塚のボディを狙ったスピンサーブを放った。


 ……が。

 

 ボールの跳ね際を叩く、ライジング。


 それもリスクのあるストレートに。


「15-30」


 ……まさか。


 そう思いつつ、俺は再びボディへのスピンサーブ。


「15-40」


 再び、ライジング。


 ……高精度のライジングショットだった。

 この前までの練習試合、これほどの武器をあいつは隠していたのか……?


 いや。


 このたった数週間で、身に付けたと言うのか?


『テニスがもっとうまくなりたい。そう思うなら、一分一秒が惜しいと思うのは当然だ』


 ……息苦しくなるくらいのテニスへの向上欲。

 いつかの朝練前、少しあいつと話しただけで思った、あいつのトップになりうる思想。

 その一端を今、俺は鑑みている。


 もうボディのスピンサーブは打てない。

 あいつはもう……それを対策している。


 ……ただ、だったらこっちはどうだ。


 ワイドサーブを放つも、動揺からかコースが甘くなった。

 平塚はストロークも強烈。ならば、こっちから一転攻勢を仕掛けるのは得策ではない。


 攻めて、オープンコートでも作れば一気にカウンターを食らうだろう。


 だから俺は、センターにスライスで返球。


 平塚は深いボールを放つ。


 それに再び、センターにスライス。


 ……この場面、平塚がこの状況を打破するには。


 俺がミスするか。

 あいつが強引に前に出るか。

 もしくは……。


 俺がミスをすることは考慮外。

 あいつが強引に前に出る隙など与えない。ベースラインより前で返球すれば、前に出る猶予はない。


 であれば、残りのあいつの突破策。


 それは、コーナー際を狙うことくらい。


 やはり来た。


 そして俺を左右に振った拍子に、あいつは前に出ようと画策する。


 そこで俺が放つのは、早いタイミングでのストレートへのムーンボール。


 前には絶対に……っ。



 そこまで考えていたのに。


 俺の予想の範疇を超す速さで。高さで。




 平塚は、ムーンボールをスマッシュで俺のコートに叩き込んだ。




「ゲーム平塚。4オール」




 絶対にダメだと思ったのに……追いつかれた。ブレイクされてしまった。


 ……落ち着け。焦るな。


 あいつの適応力の高さには舌を巻く。

 でも、それがイコール俺の敗因になるかと言えばそうではない。だってまだ、この試合は終わっていないのだから。


 まだまだ……これからだ。




 だから諦めるな。




 試合に勝つんだ。

 



 だから、思考を止めるな。

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