期待の圧がすごすぎます
ふと思いついて、オピスに声をかけた。
「オピス、私が残した朝ごはんって片付けちゃった?もしまだあるなら、持ってきてくれない?」
「途中でほっぽり出してこちらへ来てしまったので、まだありますよ!この扉、わたくしも何度も解呪を試みましたが開かずの扉でしたのに…開いた興奮でつい…」
うっとりと答える。なんかごめんね、楽しみにしてた扉の先が一般的な1LDKの自宅で…。
「2人とも朝ごはん食べる?」
私だけ用意してもらったのが申し訳なかったんだよね。あとそれを残しちゃったのも。残り物処理だし、大したものも作れないけど、このキッチンなら何とかなりそうだ。
「食べますっ!」
「食べる!」
綺麗に揃えた2人の声とほぼ同時に、オピスがパチンと指を鳴らすと、目の前におイモとパンの2枚の皿が出現した。魔法って便利すぎない?
「えーと、では、刃物も火も使うので、お2人はあっちのソファに…」
「いや見たい」
「見たいです!!」
君たち本当仲良しだよね。とりあえず邪魔にならなさそうな場所に2人を押しやって、フライパンを火にかける。じゃがいもはもう火が通ってるから、冷蔵庫からベーコンを取り出して短冊切りにしておこう。フライパンが温まったのを確認して、オリーブオイルをひと回しする。おお、これ普段買わないエクストラでバージンのちょっとお高いやつだ!
ベーコンを投入すると、パチパチという音と共に香ばしい香りが立ち上る。
寒いから温かいものも作ろう。簡単なものでいいや。野菜室にはぴかぴかのキャベツがあったので、取り出して葉を2、3枚剥がしてざく切りにする。鍋にお水を入れて、キャベツと共に余ったベーコンと、調味料棚から出したコンソメをぽいっと入れる。
にんじんや玉ねぎ、きのこなんかを入れても美味しいけど、今回は時間がないので省略!コンソメとベーコンは全てを補完してくれるから大丈夫!
あとは、オピスが卵大好きっ子のようなので、シンプルイズベストで目玉焼きにしよう。
冷蔵庫から2つ取り出して、もう1つの温めたフライパンに割入れる。料理好きだし、三口コンロのある1LDK探すの苦労したんだよなぁ…まさかこんな形で必要になるとは思わなかったけど、良かった。
「卵は割って加熱するのですね?」
「うーん、ゆで卵じゃないからねぇ」
卵かけご飯とか、加熱しない場合もあるけど、それは日本だから出来るって話も聞くし、こっちの世界ではどうなのかなぁ。
目玉焼きは半熟が好き。塩か醤油か、はたまたソースかなどの【目玉焼きに何を掛けるか論争】は、問答無用で塩です。ウチは塩。
となりのフライパンを見ると、ベーコンの周りには焦げ目がついて、じゅわじゅわと泡立っている。食べやすい大きさに切ったおイモを追加して、軽く温めるようにかき混ぜ、塩とあらびきの胡椒、これまた顆粒のコンソメで味を整えたら完成。
スライスしてあるパンはトースターで軽く焼き目をつけ、バターをたっぷり乗せる。うちにはマーガリンしか無かったはずだけど、まぁいいや、気にしたら負けだ。
鍋の中のキャベツがくったりしたら、お塩で味付けしてこちらも完成。お手軽朝食セットだ。
一人暮らしだったので、お揃いの食器がなかったが、どうにか2人分は確保できた。どうせならそれも揃えてくれればいいのに、そこは不思議パワーで対応してくれない部分らしい。ケチ。
「できたよー」
食器を持って振り向くと、めちゃくちゃ近くにいた2人に思わず仰け反る。ダイニングテーブルに2人を座らせて、私はソファに腰掛ける。
料理は好きだけど、人に食べさせるために作ったことはないし、腕だって中の中のど真ん中って感じだ。初めて他人に食べさせるのが、食文化がかなり異なりそうな魔族って、ハードル高すぎやしませんか…!
興味深げに器の中を見つめる2人を、緊張しながら見つめる。魔王はスープを、オピスは目玉焼きをそれぞれ口に運んだ。
「「!!!」」
その瞬間、2人の体が固まる。
信じろ!日本の優秀な食品メーカーの力…!
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