小腹が空いたので食べちゃいます
「マオ、お腹空かない?って言っても私の世界のだから、魔力回復しないけど…」
「よくわかんないけど食べたーい」
いい歳したおじさんが語尾を伸ばすな!
それはそうと、確かここに買い置きが…。
「じゃーん!カップ麺!」
「それ食べ物…?」
超絶手抜きだけど、良しとしとこう!
今からお昼作ってしっかり食べたら、夜食べれなさそうだし、寝ちゃいそう…!
「これはこの容器の中に、麺とかやくとスープが入ってるんだよ〜。お湯を注いで3分待てば出来上がり!」
「…マジ?」
大マジですよ!
これって本っ当大発明だよねぇ…これで何回修羅場をくぐり抜けたか分からないよ…!
「ハナちゃんの世界って、すごい手間かけてグルメを楽しむのかと思ってたけど、こーゆーお手軽なのもあるんだねぇ」
「うーん、かなり幅広いかもね。何万もする料理のコースもあれば、こういう安価で簡単なのもたくさんあるし…」
どちらにせよ選択肢が広いのはいい事だと思う。
やかんでお湯を沸かして、蓋を外す。
線まできっちりお湯を注いで、しばし待つ…。
「はいっ!完成〜!」
「早!」
だからお湯入れて3分って言ったじゃん!
「暑いから気をつけてね〜」
私はお箸、マオにはフォークを渡す。
なんとなく小さいプラスチックのフォークで食べると、一際美味しい気がするよね…。
蓋を剥がすと、なんだか懐かしい匂いがする。
世の中にたくさん美味しいものはあって、そのどれもが比較的簡単に手に入るけど、このカップ麺っていうのはまた別格なのよね…。
「はーー!うまっ!」
低価格、短時間、材料お湯だけ、洗い物無しでこの満足感…!
久しぶりに食べたけどやっぱり美味しい…!!
マオを見れば、はふはふ言いながらフォークで麺を啜っている。
無言は美味しいの現れなのでほっとする。
マオって嫌いなものあるのかな…?
「…これすごいね。おれ毎日これでもいい」
「えっそれはちょっと複雑なんですが!」
食べ終えたマオが、口の端を拭いながら言う。
ちょっとお高いやつは絶対食べさせないようにしよう…あれ本当お店で出せるくらい美味しいもんな…。
「じゃあハナちゃんに3食作ってもらって、おやつにこれ毎日食べる」
「か、体に悪いよ!塩分とか!」
「…?」
魔王の健康状態とか脅してもダメですよねー!
まさかこんなにお気に召すとは…。
「お湯だけでいいなら、今度の遠征に持っていけないかな…」
「この部屋の事だから、何回かに分けて棚開けたら、何個でも出てくると思うけど…遠征?」
マオは頭をぼさぼさと掻きながら答える。
「そう。北の海に面した街ので、ちょっとトラブルがあるんだよね」
北の海…ということは魚介類が手に入るところか。
「おれが直接行く程じゃないと思うけど、如何せん遠いからね。途中で食料調達しなきゃいけなくなると思うんだけど、この時期は向こうの方、なかなか動植物もいないからなぁ」
「なるほど」
そういうことなら、うちの食品を持ってくのは問題ないけど、これじゃ魔力回復できないしなぁ。
「マオが行けばいいじゃん」
「そりゃあおれ1人でなら食料もいらないけど…詳細が分からないトラブルに魔王が行くのもねぇ」
「マオとして行ったら?」
「…城のこともあるし…ていうか…」
この引きこもり魔王め…。
「ハナちゃん、着いてこようとしてるでしょ」
「えっまさかそんなことは」
やべぇ、ばれた!
「絶対ダメだからね。今日の狩りだってもうホント…ギリギリ許可って感じだよ」
「だってー!だってー!毎日お肉ばっかりなんだもん!海のお魚食べたいもん!」
「もん!じゃないよ全く…」
あと城内に引きこもってるのも飽きたんだよね…。
確かにいきなり遠征はダメなのかもしれないけど、城下町楽しかったし、せっかく異世界に来たんだから、他の街とか外の世界も見てみたいもん…!!
「とりあえずこの話は保留中だから」
「はぁーい…」
強制的に話を打ち切られる。
それ以上聞くなオーラがすごいから、とりあえず今は追求しないようにしよう…。
「話は変わるけど、明日のお昼も厨房行った方がいいのかなぁ」
「ハナちゃんの無理のないようにしなよ。明日はおれも仕事があるから、ついていけないけど」
「キリ1人でお昼出来るようになればねぇ…」
今日のメニューはもう作れそうだけど、一品じゃ飽きるだろうし…。
「ハナちゃんはキリくんと随分仲良しだねぇ」
「あー、歳も近いからかな?ああいう遠慮なくズバズバ言ってくるタイプなら、私も楽だし」
キッチンで残りのスープを捨てていると、いつの間にかマオが近くまで来ていた。
「おれにはプレゼント無かったのにね?」
「プレゼント…?」
じとっとこちらを見て言う。
「キリには洋服あげてた」
「えっ、あれはプレゼントと言うか仕事着っていうか…」
「おれには無かった」
おじさん魔王の嫉妬とか誰得…??
お読みいただきありがとうございます。
誤字脱字、ご感想などありましたら、教えていただけると嬉しいです!
お気に入りに登録してくださった方々、本当にありがとうございます(;▽;)
もしよろしければ☆での評価も頂ければ励みになります!( ˶˙ᵕ˙˶ )