ファンタジーといえばギルドです
トラちゃんの屋台から歩いて少し行ったところで、マオが立ち止まった。
「ハナちゃん、着いたよ」
「わー、でっかいお店…!」
「正確には店じゃなくてギルドなんだけど、この中に解体屋が入ってるんだよね」
この通りを歩いていて1番大きな建物かもしれない。
防具や武器を装備した人々が、ひっきりなしに出入りしている。
「ここは狩猟ギルドって言って、狩りした魔獣をおれたちみたいに解体してもらったり、素材を売ったりするんだよ」
「へー、めちゃくちゃファンタジーぽい…」
「商工組合みたいなもんだよ?」
そ、そう言われるとぐっと身近になっちゃうな…?
気を取り直して、マオに促されて扉を押し開ける。
中はログハウスのような木を基調とした室内で、カウンターがいくつかあり、どうやら部署ごとに別れて仕事をしているようだ。
「マオ、あれなに?」
歩きながら目に入った、壁一面にメモが貼られた場所を指さす。
「あれは討伐とか採取の依頼書だね。例えば薬草ギルドからは薬の元になる植物や素材とか、織物ギルドなら毛皮とか、そういうのを集めてここに持ち込むと、報酬が貰えるわけ」
「1番簡単なのってなに?」
私がそう言うと、マオは壁に近寄って、無数に貼られた紙をしげしげと眺めた。
「やっぱり城下町出てすぐ採取できる、このあたりの薬草採取じゃない?ムラサキソウ30束で小銅貨10枚、マドイバナ10束で小銅貨10枚」
「そのへんなら私でもできるかなぁ」
そう呟くと、マオが弾かれたようにこちらを振り向く。
「や、やっぱりお金稼がなきゃなぁと思って…そんでマオからもらったお金、やっぱ貰いすぎでしょ!?」
ムラサキソウとマドイバナとやらが、どれくらい採取が難しいかは分からない。
でもやっぱり、それだけ集めて小銅貨ってとこは、身内にごはん作って大金貨3枚はおかしいのでは…!?
「ハナちゃん、お金好きなの…?」
「言い方に語弊があるな…!そうじゃないけど、暮らしていく上ではなんかこう…役割っていうか、そういうのが必要だと思わない?」
そりゃ、中には宝くじで働かずして豪遊できちゃう人もいるんだろうけど。
ちなみに私はもし宝くじ当たっても、仕事は止めずちょっとずつ使うタイプかな…額にもよるけど。
「真面目だねぇ」
呆れたようにマオが言う。
「でもギルドでお金稼ごうとするのはダメ。税金も納めなきゃだし、受注した依頼失敗したら違約金もあるし、定期的に受けないとギルド参加資格は剥奪されるし!それに薬草採取なんかじゃ一生草むしりだよ?」
「マオ!これから新規受付っぽい人の顔がどんどん死んでくから!わかったから!」
まぁ確かに私がギルド参加ってのも、我ながら想像つかないわ。
あの辺の防具とか付けてるだけで筋トレになる自信あるし。
「とにかくダーメ。さ、ほら行くよ。買取してもらってハナちゃんの服も買うんでしょ?」
「はーい」
半ば引きずられるような形で、掲示板から引き剥がされる。
お金をどうやって稼ぐかは、これから追追考えていけばいいか…。
マオは受付のお姉さんに何か話し、2人とも奥の部屋に通された。
広い部屋には中央にこれまた広い作業台があり、天井からは様々な器具がぶら下がっている。
作業台に染み付いているのは血だろうか…。
「やぁ旦那、直々に買取依頼とは珍しいじゃねぇですか!」
奥から出てきたのはスキンヘッドのムキムキおじさんでした。
つやつやの額の中央から、真っ直ぐな角が1本生えている。
「エヌさん、指名しちゃって悪かったですね」
「なんのなんの、久々の高ランクの魔獣なら腕も鳴りますわ」
そういうってエヌさんは豪快に笑い、頭をベチベチと叩いた。
「お、こりゃ珍しい、人間のお嬢さんだ」
「やっぱり分かりますか」
「これでも引退する前はそこそこの冒険者だったんでね。魔力の匂いがこれっぽっちもしないのも珍しい」
そう言ってエヌさんは私を覗き込む。
すみません…世にも珍しい魔力ゼロの人間なんです…。
「今日は高ランクは1匹だけで、あとはブラッドブルが大量にあるんだ」
そう言いながら、マオは部屋の中央に置かれた作業台にケツァルコアトルを取り出す。
「おや、頭の飾り羽がねぇ」
「あーそれはちょっとかくかくしかじか」
「勿体ねぇ、アレが有るのと無いのじゃ買取金額がだいぶ違いますよ」
「いいんです。とりあえずケツァルコアトルは今買取してもらって、できるだけ小銭で換金してほしい。あとブラッドブルは100頭ほどいるから、それは肉だけ後で引取りに来ます。食べきれないから、半分くらいはこのギルドから食料ギルドへ卸してください」
私を置いてけぼりにして、淡々と話が進んでいく。
まあ間に入ったところで全く分からないんですが。
書類で見た水運ギルドといい、さっきの依頼の掲示板といい、いろんなギルドがあるのねー。
1つの街っていってもかなり広いし、まだまだ知らないことだらけだ。
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