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買い食い楽しいです


「すみません!これください!」


品書きと思われる文字は読めないので、商品を指さして言う。

見た目は牛肉の串焼きっぽい…いい感じにサシが入ってて美味しそう…。


簡単な屋台の裏から、思いのほか小柄な男性がひょこりと出てきた。

ていうか私の周りの魔族ってみんなデカいんだよ!


「いらっしゃいませ!おや、魔王様…のお友達と、カワイイお嬢さんッスね~」


見た目は私と同じ年くらい。

今更驚かないが、虎柄の獣耳が黄金色の髪に埋もれて、ぴこぴこと動いている。


「お嬢さんカワイイから、こっちの大きいのあげちゃうッス!魔王様のお友達はどうします?」


そう言いながらお肉を網に置く。

塩胡椒と、なにかスパイスだろうか?

煙と一緒にいい香りがこちらまで漂ってくる。


「マオも食べようよ~」

「さっき朝ごはん食べたばっかりじゃん。…食べるけど」


思わず飛び跳ねて、わくわくしながらお肉が焼けるのを待つ。

こういうところの屋台って、私の世界ではあらかじめ焼いてあるお肉をあっため直してるのが多いけど、こっちは最初から焼くんだね~。


待つ時間は長いかもだけど、この匂いを嗅ぎながら待つのも、なんとも楽しい。


「そんな見られると緊張するッスね~。お肉焼くところがそんなに珍しいッスか?」


肉汁が落ちて煙が上がるのをじっと見ていたら、虎耳の店員さんが苦笑しながら言った。

や、やばい、よだれとか垂らしてなかったよね…!?


「や、すっごく美味しそうでつい…」

「嬉しいこと言ってくれるッスね~!はい!トラちゃんスペシャル、一丁上がり!」


あつあつの湯気が立ったまま、串ごとお肉を手渡される。


「うわー、美味しそう~…!あっ、先にお金お金!」


受け取る前にお金渡さなくちゃ!

ファストフードっぱいから、このキラキラの金貨で足りないってことはないだろう。

ポケットから、マオにもらった金貨をとりあえず一枚取り出して渡す。


「うわっ、お嬢さん、こんな大金…お釣り無いッスよ!」

「えっそうなの!?」


思わずマオを振り返る。

きょとんとした顔で見返すんじゃない!


「マオ、もうちょっとなんか小銭とかないの?」

「おれが買うからお釣り要らないってことにしない?」

「いやいや!この大金貨じゃウチの屋台3軒は買えちゃいまスよ!?そんなん貰うわけには…!」


これそんな高額な金貨なの…!?


「んー、じゃあこれと交換って言うのは?アクリじゃ物々交換もまだ健在でしょう?」


そう言いながらマオはアイテムボックスの中を探り、さきほど獲ったケツァルコアトルの羽を取り出した。

待って、今その中で毟ったよねそれ…?


「ひぇー!コレだって相当な値打ちッスよ!?いいんスか、ほんとに…」

「いいです!だからお肉ください!」


私からしたら、その飾り羽よりお肉の方が価値があるんです!!


「じゃ、ありがたく頂いて…改めてトラちゃんスペシャルどうぞッス!」

「わーい!念願の!」


こっちの不手際でお預けされたぶん、嬉しさもひとしおだ。

一本をマオに手渡し、お行儀悪くその場で立ったままかぶりつく。


「…うっまぁ~!肉汁すごい!噛めば噛むほど溢れてきて、でも柔らかい…!屋台でこのクォリティ…素晴らしい…!」

「あー、おれも外で初めて食べたけど、美味いね。キリの肉とは大違いだ」

「そんな褒められると照れるっス~。でも、ウチのは屋台にしてはいい肉使ってるし、貴重な調味料もたくさん使ってるッスからね~!まあ、そのおかげで全然儲けが出ないんスけど…」


そう言いながら虎耳くんは照れくさそうに頭を掻く。


「なんでトラちゃんスペシャルなの?」

「そりゃおれの名前がトラだからッス!」


めっちゃ単純だけどスペシャルなのは納得だわ!

キリにもこれくらいの熱意があればいいのに…とか思っちゃいけないな、うん。


「はー、ほんと美味しかった!ごちそうさまでした!」

「こっちこそ、ケツァルコアトルの飾り羽なんて見合わないもの貰っちゃって!」

「いや、トラちゃんのお肉にはそれだけの価値があるよ!」


ケツァルコアトルの羽がどれくらいの価値かは知らないけどな!


トラちゃんは感極まったように屋台越しに私の両手を掴む。


「お嬢さん…ありがとうッス…!この辺じゃ美味しさより安さなんで、本当は飲食店の多い通りに店出して、いい食材使っていろんな料理出したいんスけど、御覧の通り利益が出なくて…」

「お店出したら通うし、屋台のうちでも街に来た時は必ず寄るよー!だから頑張って!お店早く出せるといいね!」


思わず手をぎゅっと握り返す。

まだ若いのに、自分の店を出したいなんてすばらしいよ…!

おばちゃんはその熱意に感動した!!


「ハナちゃん、そろそろ解体屋行かないとー」

「あっ!そうだった!またね、トラちゃん!」

「はーい!ありがとうございまスー!」


トラちゃんがぶんぶん両手を振るのを、名残惜しく振り返った。

け、決してお肉が名残惜しかったんじゃないぞ!!


「マオ、トラちゃんお店出せるといいねぇ」

「うーん、彼は人が良すぎる感じがあるよね…大金貨だって貰っちゃえば、大通りじゃないなら小さい店でも立ちそうだったけど」

「そういうもんなのか…ていうかホイホイ大金渡さないでよ!」


思わず胸ポケットをぎゅっと抑える。

そ、そうだ、結構な大金を持ち歩いてるんだった…!


「まぁまぁ、解体屋で買い取りしてもらえば、端数も手に入るからさ」


マオになだめられて、抗議の表明として繋いだままの手をぶんぶんと振ってやったのだった。


お読みいただきありがとうございます。

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