魔族も人間も大好きおにぎりです
無事アイテムボックスからお弁当入りのタッパーを発掘し、地面に座ってお外モーニングです!
なんか敷くもの持ってきたらよかったかな?
「おー!コレ昨日の夜に食ったやつだ!」
「これはお米だけ握ってあるの?」
海苔の巻かれたおにぎりを手に取って、マオが不思議そうに言う。
「食べてからのお楽しみ!」
むしゃりとかぶりついたキリを横目に、マオもおにぎりを口に運ぶ。
「…ん?酸っぱい!」
「それは梅干しだねー。私のはおかかだった!」
目印をつけていないので、どれがどの具材かは私にもわからない。
ちらりと横目で見ると、キリのはツナマヨのようだ。
「お米っていうのは冷えても美味しいもんなんだね」
「炊き立てももちろん美味しいけどねー」
だし巻き卵に手を伸ばす。
うん、こっちも冷めてるけど、しっとりふわふわで我ながら上手にできている!
「なんだこの赤いの?」
「それはウィンナーっていうお肉!タコさんみたいでしょ?」
「タコ…っていうと、クラーケンみたいなやつかな?」
「お前もっと可愛げのあるモンに似せろよな…」
うん、多分だけど私が思ってるタコと、マオとキリが頭に浮かべてるクラーケンってのは別物だな!
まぁ実際のタコも可愛いかと言われると微妙だけど…。
見た目はともかく味は美味しいので、3人で黙々と食べる。
「そういえば、この辺で海産物は採れるの?お魚とか、貝とか…」
「さっきロック鳥の巣があった森の奥に、大きな湖ならあるから、魚ならそこで採れるんだけどねえ」
「海…ってなるとなぁ」
歯切れの悪い物言いだ。
今日、ブラッドブルのお肉は大量に手に入ったし、ロック鳥のお肉も棚ぼた的にゲットしたけど、ずっと牛肉と鶏肉っていうのもなぁ。
欲を言えばもう少し野菜のバリエーションも欲しいところだけど、それは季節的なものもあるから仕方ない。
「この城下町からずっと西に行ったところに、集落があってね。そこなら色んな種類の海産物もあるかもなんだけど…」
「この城下町まで続く水路がロクなもんねぇからなぁ」
そういえば昨日の夜、こっちの世界の文字が読める眼鏡を試したとき、水運ギルドの報告書があった気がする。
「保存魔法?とかいうの掛ければ、遠くからも新鮮なうちに運べるんじゃないの?」
「うーん、アレもマリーちゃんの清浄魔法と一緒で、使える魔族はそんなに居ないからね~」
なるほど、全員が使える魔法なわけじゃないんだ。
それにキリから保存魔法のかかったお肉をもらった時、一週間くらいは大丈夫って話だったから、それ以上遠いとなるとダメなのかも…。
電気がないから冷蔵庫とかも使えないしねぇ。
「ウチの食糧庫には、壁に保存魔法の魔石が埋め込まれてんだよな」
「うん、あれはおれから出た魔石だから、あと2000年は効果ある思うけど…。あくまで部屋にかけた保存だから、外に出すとそんなに保たないしね」
魔石って一人の体からそんなにボロボロ出るものなの?
ケツァルコアトルからは一つだけだったけど、それもやっぱり魔王のなせる技なんだろうか。
とりあえず海の新鮮なお魚たちを手に入れるのは、今の所難しそうだ。
お肉料理のバリエーションが尽きたら、今度は湖で淡水魚でもいいから採ってきてもらおうかな。
「はー!食った食った!」
「ハナちゃん、ごちそうさま」
「いやー、多めに作ったのに一瞬ですっからかんに」
好評なのはうれしいことだ。
「今までギルドの携帯食といえば日持ちする固いパンばっかりだったけど、お米もいいよねえ」
「生米のままならかなり日持ちするし、水と容器があればいつでも炊き立て食べられるから、そういうのもいいかもね」
指先についたお米粒を食べながら、キリが言う。
「さて、腹ごしらえも済んだとこだし、帰って昼飯の準備だ!とりあえずオッサンはブラッドブルの解体を…」
「おれたちはアクリの街で買い物するから、キリくん後よろしくね」
「は!?オッサンがこの量呼んだんじゃねーか!こんなもん全部持って帰れるかよ!」
まぁ確かにすごい量だよなぁ…。
ごはん中は見ないようにしてたけど、死屍累々って感じ。
「じゃあ数頭はキリくん持って帰って先に解体しておきなよ。残りはめんどくさいけど、おれがアイテムボックスに入れて街の解体屋に頼むから」
「おれが持って帰れんのは5頭までだからな!」
キリと同じかそれより大きい牛を5頭持って帰れるだけで、十分すごいと思いますが…。
「そうと決まったらキリくん、とりあえず一箇所に集めて。解体して持って帰るのは肉だけでいいんだよね?」
「素材は興味ねーからな。後は解体屋にくれてやるよ」
いよいよ初めての城下町デビューだ!
とりあえず解体屋さんとやらでブラッドブルをお肉にしてもらって、お洋服を買って、それから…!!
「昼メシの準備までには帰ってこいよ!いいな!」
ブラッドブルを引きずって集めにかかるキリの声は、なんだか遠く聞こえた。
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