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魔法体験はあっという間でした

しばらく宙を漂っているうちに、動き方のコツが掴めてきた…気がする。


要は無重力だけど、力は作用する、水中のようなものだ。

宙を蹴る方向によって進行方向が決まる。


…と、頭では分かっているんだけど!


「戻れないよぉぉ!」


勢いをつけて地面まで行きたいのだけど、その勢いの調整が難しい…!

角度が悪くて宙返りしたり、地面近くまで行ったけど今度は距離が近すぎて、上昇しようと思ったら高く飛びすぎたり…。


「ハナちゃーん!そろそろ降りてこないとー!」


遥か下の地面でマオが叫んでいる。


「いくら初めてだってアイツ運動神経無さすぎねぇ?」

「キリ!聞こえてんぞー!!」


いやこれはもう運動神経の問題じゃなくて、度胸な気がする。

行くのよハナ!女は度胸!

マオのところに向かって降りれば、最悪地面に衝突する前にクッションになってくれそうだ。


「マオ!受け止めてー!」


ぐっと足に力を入れた瞬間、ずっと手に握りしめていたケツァルコアトルの魔石が、砂を握っていたかのように指の隙間から零れ落ちた。


「えっ?」


その瞬間、体が突然重くなったかのような感覚とともに、垂直に落下し始める。


「わーーー!?」


地面に激突する!と思った瞬間、マオに空中で抱きとめられる。


「あらら、やっぱり保たなかったかー」

「こ、怖かった…!!」


そのままゆっくりと地面に降り立つ。


「お前、鈍すぎねぇ?」

「うるさーい!」


けらけら笑って言うキリに怒鳴り返す。

こいつ下で見てただけのくせに…!


「やっぱりハナちゃんが使うと魔石も保たないねえ」


私が使うとってどういうことだろう?

握っていたはずの魔石は、もうどこにも無くなっていた。


「魔石っつーのは、本人の魔力を増幅させるためのモンなんだよ。だからお前みたいな魔力ゼロの奴が使うと、魔石に負荷がかかってすぐ壊れちまうんだよな」

「キリくんも前に適性無い魔法の魔石壊したでしょ」

「お揃いだね!キリ!」


なんだよ私だけじゃないんじゃん!

しかし魔石っていうのはある意味消耗品なのか…。

そうとは知らずもったいないことしちゃったかも。


「このケツァルコアトルの魔石はちょっと小さ目だったから、消耗するのも早かったんだと思うよ」

「…てことはマオにもらった、このお守りの魔石もいつか無くなっちゃうの?」


ポケットに入れたままの魔石を取り出す。


「オッサンの魔石なんかそうそう壊れねーだろ!」

「そうだねぇ、ドラゴンブレス100連発とかなら危ないかもだけど…」


あっそんな状況には絶対ならないから大丈夫だな!


「ハナちゃん、それ貸して」

「?はい」


そう言われてマオにもらった魔石を手渡す。

マオの手のひらで、魔石が一瞬モヤに包まれて、すぐに晴れる。


「確かこのへんに…」


何回目かだけど、突然何もない空間に腕を突っ込んで、何かを探す光景はどうも慣れないな…。


「えーと、えーと」

「ねぇマオ、そのアイテムボックスの中片付けなよ…」


ぽいぽいと放り出されるのは、くしゃくしゃになった紙や、金属片や、折れたペンや割れたカップやら…。


「いやこれもう3000年は整理してないから今更無理」

「そんな断言されましても」

「あっ、あったあった。こういう小さいのはすぐどっか行っちゃうんだよね」


そう言ってマオは取り出した細い鎖を、魔石に通す。

さっきのモヤは魔石に穴をあけるために加工してくれたもののようだ。


「これでなくさないでしょ」


ネックレスのようになったそれを、首から掛けてもらう。

これなら飛んでも跳ねてもなくすことはなさそうだ。


「うん!ありがとう!」


チェーンが長いので、服の下にしまい込む。

そういえばアイテムボックス開けているついでに、朝ごはんにしようかな。



「マオー、朝ごはん食べようよ」

「ああ、そうだったね」

「メシ!?」


キリが目を輝かせて言う。


「キリ、めっちゃ汚れてるじゃん…」

「うーん、そうだねぇ…。キリくん、ちょっと離れたところに立ってみて」


不思議そうな顔をしたキリが、マオに言われた通り私たちから少し離れたところに移動した。


「えい」

「おぶぁ!!」


なんとなく嫌な予感がして、私がマオの後ろに隠れた瞬間、ものすごい水音とともに、キリが頭から水をかぶる。

シャワーなんて生易しいものではなく、ほぼ滝行に近い。


「はい、飛ばされないように踏ん張ってー」

「お、おおお!」


水が消えたと思ったら、今度はつむじ風。

これもうほぼ台風だね…天災じゃん。


「乾いた?」

「殺すぞオッサン!!」


ようやく風が止んで視界が晴れると、すっかりきれいになったキリが拳を握って叫んでいた。

ちゃっかり自分の所には結界を張っていたのか、私たちの周りは土が舞うこともなくキレイなままだ。


「さて、きれいになったところで朝ご飯にしよう」


ブチ切れたキリなど意に介さないように、マオが再びアイテムボックスをまさぐる。

無くなってないかな…?




お読みいただきありがとうございます。

誤字脱字、ご感想などありましたら、教えていただけると嬉しいです!

お気に入りに登録してくださった方々、本当にありがとうございます(;▽;)

もしよろしければ☆での評価も頂ければ励みになります!( ˶˙ᵕ˙˶ )


熱も下がりひと段落ですが、まだまだ小説ストックが作れる体力と時間がなく…( ˊᵕˋ ;)

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